「あなたがしてくれなくても」第5話:一過性の恋(不倫)ともう引き返せない愛(結婚)の天秤
ハルノ晴による同名コミック(双葉社刊)を原作とする本作は、セックスレスをテーマにした大人の恋愛ドラマ。奈緒と永山瑛太、岩田剛典と田中みな実が演じる2組の夫婦の関係が複雑にもつれていく様を描く。
本記事では、第5話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「あなたがしてくれなくても」第5話レビュー
みち(奈緒)と陽一(永山瑛太)、誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)、そして、陽一と三島(さとうほなみ)。それぞれの関係性が静かに、大きく変化しはじめた。みちと陽一の出会いは、陽一が働く喫茶店だった。
お客として足繁く通っていたみちが、どうやら惹かれていたらしい。
今と変わらないアンニュイな雰囲気に、気だるい色気が増す金髪メッシュ。
加えて、お客に対してナチュラルにタメ口で接客するあの感じ、沼でしかない。
あの大人しそうな見た目で、若干オドオドしながらも、陽一に声をかけるみち。
「お仕事終わったあと、時間ありますか?」
「なんで?」
「連絡先とか、そういうの…」
「好きなの?俺のこと」
確信した。陽一は、生粋の人たらしなのだと。
人に興味がなさそうなのに、誰しもがいつのまにか彼のペースに巻き込まれていく。
オーナーの高坂(宇野祥平)や三島だってその一例なのである。
対して、誠は正反対だ。
いつだって自分の感情を押し殺して、楓に尽くしてきた。
仕事に対しても常に誠実、みちに対しても、無理やり一線を越えようとすることはない。
その反動が今、押し寄せてきている。まるで、子どもの反抗期のように。
誠の変化に気付き、これまでしてきたことを挽回しようと動く楓。
誠よりもはやく帰ってくることなんてほとんどなかった楓が、研修旅行帰りの誠を豪華な食事を用意して迎えたり、最低限の仕事を早々に終わらせてリモート勤務に切り替え家事を行ったり。
頭の中に全力で鈴木雅之の「違う、そうじゃない」が流れ出す。違う、そうじゃない。
誠から見ても「なんで今さら」と思うのも無理はない。
楓の好意で誠が忘れたお弁当を会社に届けるも、逆効果。
不倫相手であるみちと鉢合わせてしまったのだから、尚更だ。
妻・楓を目の当たりにしたみちは、これでもかというほどに落ち込む。
自身にパートナーがいても、相手にもパートナーがいるとわかっていても。事実上の本命が存在しているという事実とそれを直接目に入れるのとでは、まったく異なる。
そんなみちと楓の関係に気付いていた後輩の北原(武田玲奈)の観察眼と忠告には、ただただ脱帽した。
「真面目な二人がそっちいっちゃうんだもんなー」
「先輩も新名さんもラブラブ光線出まくりだし」
「気をつけてください。日の当たらない恋は覚悟が必要なんです」
「奥さんに会ったくらいで動揺するならやめたほうがいいですよ」
「私は、先輩に負けた。それだけです」
……あなた、本当に23歳?
学生時代に一体どんな恋愛をしてきたんだ、北原。
心強すぎて、男前すぎて、友だちになりたい。
一見大胆に見えるが実は繊細な三島にも、このくらいの気概を持ってもらったほうがいいのかもしれない。
たまにいる、奥さんのいる人しか好きになれないタイプーー三島もその一人なのだろう。
過去にも不倫を経験しており、相手都合で終止符を打たれた経験のある彼女は、今もなお癒えない傷を抱えているように見える。
陽一の心が離れていけば離れていくほど、どんどん好きになる。気持ちはわかる、非常に気持ちはわかるが、あぁ三島、あなたにも幸せになってほしいと心底思う。
そして、なんとも酷だが、三島との出来事をキッカケにみちに向き合いはじめた陽一。
姉・麻美(紺野まひる)の子どもらを預かり、みちともども戯れる姿は、まるで彼らの将来の姿を垣間見た気分にもなった。
「結婚してるからってあんまりあぐらかいてたら、痛い目に遭うよ」
離婚する予定の麻美の言葉は、陽一の胸に深く深く届いていたように思う。
そんな陽一の変化を受け取ったみちは、誠への思いに蓋をする。
砂時計の落ちていく真ん中ーー現在しか見ていないみちと誠の感情は一過性のものだと割り切り、過去と未来がある陽一と現在を乗り越えていくことを決意するみち。
……もう、誠の切なすぎる表情が脳裏に焼き付いて離れない。
ここにきて、今後、誠が暴走しないかどうかが若干不安だ。
誠実ではあるものの、あまりにもみちに執着しすぎているように見受けられる。一歩間違えたらストーカーと化してしまうのでは……まぁ、岩ちゃんにストーカーされるだなんてありがたいことなのだが……(公私混同)
そんなことはさておき、次週の”地獄の焼肉会”が今から楽しみでしょうがない。
みちと陽一と三島の3人で焼肉ーーみちと楓の鉢合わせ以上に最悪な組み合わせである。
「昼顔」よりもほのかに静かに進んでいく不倫物語、一体どうやって終止符が打たれるのだろうか。
(文:桐本 絵梨花)
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