続・朝ドライフ

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2023年05月25日

「らんまん」田邊教授(要潤)の「美しいとは完全なものだけを差す」が不安を掻き立てる<第39回>

「らんまん」田邊教授(要潤)の「美しいとは完全なものだけを差す」が不安を掻き立てる<第39回>

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第39回を紐解いていく。

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藤丸、陥落

万太郎(神木隆之介)がとってきたシロツメクサをうさぎに食べさせた藤丸(前原瑞樹)はすっかりご満悦。

「槙野さんはさ、毎日が植物採集なんだね」

「教授と違うなあ」

とすっかり万太郎への評価が変わってしまいます。あんなに拒絶していたのに。

藤丸は悪意ではなく、差配のりん(安藤玉恵)が言ったように、よそ者に対する警戒心を抱いていただけで、万太郎に悪意がまるでないことがわかったので気を許したのでしょう。

どうやら植物教室は田邊教授(要潤)の強権で支配されているようで、学生たちや関係者たちは田邊のご機嫌を伺って過ごしているようです。それが第38回の画工・野宮(亀田佳明)の「逆らうな」という助言なのでしょう。

理想世界に見えた研究室が、にわかに暗雲がたちこめているように見えてきました。

「美しいとは完全なものだけを差す」と田邊は外国の詩の影響で言っているそうで、確かに端正なもの、調和のとれたものは美しい。

はたして「美しいとは完全なものだけを差す」だけでしょうか。いや、「不完全な美」という概念もあります。例えば、「美はただ乱調にある。諧調は偽りである」と言ったのは社会運動家の大杉栄。万太郎が東京に来た頃はまだ生まれてないくらいの人ですが、やがて大正期に活躍する人物です。また、昭和のイラストレーターの長沢節には「弱いから、好き。」という著作があります。

「完全」にこだわることは、それ以外を認めないことで、ともすれば独裁にもなりかねません。万太郎の花や実がついてなくてもかわいいと、どんな植物も愛で、「どの草花にも必ずそこで生きる理由がある。この世に咲く意味がある」という考えとはまるで違うでしょう。

田邊と万太郎、いつかぶつかり合うときが来るかもしれません。

すっかり万太郎に気を許した藤丸と波多野(前原滉)は、あれこれ研究室の事情を話します。教授は植物学以外にも夢中なものがあり(いまは鹿鳴館)、徳永助教授(田中哲司)はもともと法学を目指していたと。万太郎が求める、植物学を極め、日本の植物学を発展させようという思いを、はたしてこの人たちと共有できるのかわからなくなってきました。

万太郎は寿恵子(浜辺美波)の店を訪れます。店には彼の描いた牡丹の花が額に入れて飾ってあるうえ、その絵を参考にして作ったお菓子を見せられます。

葉っぱを模したお菓子の出来の良さを褒めつつ、万太郎は、ほかにもこんな葉っぱの植物があると、夢中でノートに書き出します。その流れで、一番好きなバイカオウレンの絵を描く。好きなことを語りだしたら止まらない万太郎。それを興味津々で聞く寿恵子。なんだかほっこりします。

バイカオウレンの葉っぱではあんこを包むのは無理そうだし、ドクダミの葉っぱで包んでもニオイがきつくてお菓子には向いていなそうですが。

そのとき、万太郎は何を見つけたのかーー。

第38回「逆らうな」、第39回「見つけた」と毎日、気になる終わり方で、明日が待ち遠しい。

それにしても兎が大きい。どーんと大きいのに可愛い。これもまた、個性は美であることの一例ではないでしょうか。

(文:木俣冬)

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