続・朝ドライフ

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2023年06月13日

「らんまん」徳永助教授(田中哲司)がいい人で、田邊教授(要潤)の株が下がるいっぽう<第52回>

「らんまん」徳永助教授(田中哲司)がいい人で、田邊教授(要潤)の株が下がるいっぽう<第52回>

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第52回を紐解いていく。

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昼と夜の間

最近の「らんまん」、物語好きのツボを抑えまくっています。

アヴァンは万太郎(神木隆之介)が印刷会社を辞める辞めないのドタバタにはじまって、
万太郎は学会誌の印刷を大畑印刷工場に依頼して、いよいよはじまるぞーと思ったあと、

いやなやつとして登場した徳永(田中哲司)が、意外にもいい人であったことがわかります。

未分類の植物標本の検定作業が終わって、ロシアに送るにあたり、万太郎は自分の分も送ってもらいたいと、田邊教授(要潤)に頼みます。

徳永「無礼千万」
田邊「〜〜この部屋で四字熟語はやめたまえ」

などと、愉快なやりとりがあって(田邊は四字熟語より英語が好き)。

「核心はただひとつ」ーー教授にとって利があることなら反対しないと踏んで行動している敏い万太郎。そして、その読みのとおり、田邊は万太郎の願いを聞きます。

でも、この学会誌が失敗したら、万太郎にすべて負担させて、一切、責任をとらないつもりの田邊に、徳永が憤慨します。

あれだけ万太郎を警戒していた徳永が、なぜか万太郎を心配していることに「矛盾の塊だな、君は」と田邊。デレてきた徳永に比べ、妙にドライで冷たく、西洋かぶれできどった田邊は、どんどんいやな人に見えてきます。

徳永が矛盾に悩みながら外に出ると、ひぐらしが鳴いていて、万太郎がユウガオとヒルガオが、昼と夕方の境目に一緒に咲いている姿を腹ばいになって眺めています。

昼と夕方の境目と矛盾の塊の徳永が重なります。
昭和の名曲・ピーターの「夜と朝のあいだに」という歌を思い出しました。

朝顔と昼顔と夕顔の3つは、夕顔だけ、実は科が違う。でもその異端の夕顔が徳永は好き。夕顔は「源氏物語」に出てくるからと。彼は法学部出身ですが文学も愛しているようです。
法学部で植物学をやっている徳永も夕顔のようなものなのでしょう。元武家の出ですし。

万太郎は「万葉集」が好きと言い、徳永が夕顔をうたった万葉集の短歌の上の句を詠むと、万太郎が下の句を続けます。教養人が互いを認め合う瞬間に胸が熱くなりました。

しばらく出番がなく、久しぶりに出てきたら、昨日出てきた声の大きな元老院・白川役三上市朗さんとなんとなく似ているようにすら見えてしまう徳永助教授。唐突に、万太郎の味方になってしまった感じもしますが、エピソードがいいので、あまり気になりません。

万太郎におずおずとクイズを出している、これまでと違う雰囲気の徳永は、「SPEC」の冷泉(田中)のよう。神木さんはスペックホルダー仲間のニノマエを演じていました。彼らスペックホルダーは、いわゆるふつうの人間と少し違った能力が発現してしまった人たちでした。

さて。印刷工場でのやりとりでは、すっかり万太郎が印刷工場の人たちに愛されていて、それを
竹雄(志尊淳)が気づきます。大学でもすっかり馴染んでいます。集団に属していなくても、ちょっと言動が突飛でも、目的さえ同じで、いい働きをすれば、愛されるのです。

万太郎は、余計な私利私欲がなく、ひたすら日本の植物学を発展させたい一心だからです。彼がお金がほしいとか名誉を独り占めしたいとか思ってやっていたら嫌われますが、
お金はいらないし(むしろお金を出している)、名誉がほしいわけでもないので。

ただ唯一、私欲があります。

寿恵子(浜辺美波)を自信を持って迎えにいきたいという欲望です。これは、まあ、誰もが微笑んで応援してくれるに違いありません。寿恵子を想う人でなければ。


(文:木俣冬)

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