福士蒼汰、海外へ。「もっと活躍できるように力を蓄えたい」
期待高まる新作に、今回、福士蒼汰の出演が決定。念願の海外作品への出演に対する想いなど、お話を伺った。
ずっとあった海外への想い「やるしかない」
▶︎本記事の画像を全て見る――待望の海外作品への参加です。出演が決まったときのお気持ちを聞かせてください。
福士蒼汰(以下、福士):すごく嬉しかったですし、自分にとってもやりがいのある刺激的な作品になると確信しました。
20代のうちに海外で挑戦することが夢だったんです。あんまり夢を掲げることはないのですが、これだけは成し遂げたいと思っていました。僕は海外への留学経験もなく、独学で英語の勉強をしてきました。日本生まれ日本育ちでも努力を惜しまなければ挑戦できるというところを示すことができたらうれしいです。僕を見た後輩たちも、自分も挑戦できるかもしれないと思えるんじゃないかな、と。
――以前から海外作品のオーディションを受けていらっしゃった、と拝見しました。いつごろから意識され始めて、どのように準備をされていたのでしょうか?
福士:実は、この仕事を始めて、最初に受けたオーディションが海外作品だったんです。日本のオーディションも受けたことがなかったのに(笑)そんなところから始まって、海外への想いはずっとありましたが、日本のお仕事も忙しく、あまり本気で目を向けることができずにいました。でも、英語の勉強はどんなときでも欠かさず継続してきた結果、昨年自分の中で準備が整ってきたと感じて。そんなときに今回の「THE HEAD」への出演が決まりました。お話をいただいたとき、僕はちょうど舞台公演中。舞台をやりながら英語の台本を覚えて……大変でしたけど、やるしかない、と覚悟して準備しました。
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――演じられたユウトはどういう人物ですか。
福士:コンピューターに精通している男性で、白も黒も、グレーも関係なく、依頼された仕事をこなします。今回の仕事もグレーだな、と感じながらもアーサーに協力するという形で乗船することになりました。大金がもらえる仕事だけは受けて、仕事をしたらそのあと半年間は休む、というようにライトに仕事をしているようなイメージです。性格的にも、物事を真剣に考えるけど、基本的には楽観的な人間かな、と思っています。また、ユウトはミステリー系のゲームが好き。でも、そんな楽観的な人間が、まるでゲームのようにスリリングな極限状態に追い込まれたときにどういう人物になっていくか。想像を膨らませながら演じさせていただきました。
また、演じながら分かったこともあります。状況に怯えている登場人物が多い中で、ユウトは怯えながらも冷静に問題解決に向けてどうすべきかを考える。論理的思考力の持ち主でもあり、目的意識が強いタイプなんだと思います。でも、船に乗っている周りの人を信じたい気持ちもあって。信じたいけど疑ってしまう、そういう部分は人間味が感じられると思います。
実際に海外での撮影だから体感できたことがある
▶︎本記事の画像を全て見る――日本の現場とはやはり違う点も多いかと思いますが、驚かれたことはありますか?
福士:撮影自体は日本とあまり変わらないと感じました。ただ、スタッフさんが全員スペイン人だったので、スペインの方と英語でやりとりをするという部分は、当然ですが大きく違っていました。
興味深かったのは、スタッフの方々がAチームとBチームに分かれた2班体制だったことです。Aチームはメインとなるシーンを撮って、Bチームは食事をしているシーンだとか、他愛もない会話をするシーンだとか、そういうエキストラカットのようなものを撮ったり。お互いのチームがいつ何を撮っているのか知らないくらい、完全に別々の班として動いていたのは、日本にはあまりない体制でおもしろかったです。
――キャストのみなさんとのコミュニケーションは問題なく?
福士:いや、問題はありました(笑)。それぞれ出身国が違うので、英語のレベルもバラバラで。僕もまだ勉強中なので、ネイティブのキャストとコミュニケーションをとるのはやはり難しいと感じるときもありました。ルノー役のティリエ・ゴダールはすごく優しい人で、安心して話すことができたように思います。
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――福士さんと言えば、英語が話せるイメージを持たれている方も多いと思うんですけど、逆に語学面で自信を得た部分はありましたか?
福士:最初の1ヶ月は撮影も多くなかったので、たまにキャストに誘ってもらって、プールに行ったり、街に行ってみたりました。でもやっぱり会話に追いつけないこともあったのですが、誘ってくれることがすごく嬉しかったので、がんばって自分の気持ちを伝えていたんです。短い期間でしたが、緊張や不安に負けずに自分の持っている英語の能力を発揮しきるというメンタリティになったところが一番大きいかな、と思います。それは日本でいくら英語の勉強をしても学べない部分なのでよかったです。
――改めて、世界から日本はこういうふうに見られているんだな、という実感はありましたか。
福士:日本の文化、日本の言語というのは、海外の方から見ると個性的なのかもしれないなと感じた場面はありました。
キャストで集まって食事をしていたときに、「今まで自分が出演した作品について日本語で説明してみて!」と頼まれたんです。日本語を話せるキャストはいなかったし、説明しても伝わらないのにな、と不思議に感じたのですが、言われたとおりに話してみたらすごく盛り上がって。はっきりした理由はわかりませんでしたが、みんな日本に興味を持ってくれていて、普段近くで聞くことのない日本語に魅力を感じてくれたのかなと。個人としてのアイデンティティがなくても、日本人ということだけで関心を持ってもらえるので、コミュニケーションを取る上でもありがたいことだと思います。
俳優の仕事をしていると楽しい
▶︎本記事の画像を全て見る――先日、30歳を迎えられたばかりですが、20代を振り返ってみていかがですか。
福士:10代の後半から20代前半はすごく忙しくさせていただいたこともあって、あまりひとつひとつの記憶が明確ではないんです。前半は仕事の量に自分の能力が追い付いていなかったので、とにかく目の前の仕事を乗り越えるという感覚でした。20代後半になってからは自分と向き合う時間が増え、考えながら夢に向かって踏み込めるようになったと思います。そういう気づきがあったという意味でも、20代は悔いのないものになりました。
――20代で将来について迷う方も多いと思うんですけど、福士さんご自身はあまり?
福士:仕事をやめようかなとか、違う仕事をしてもいいな、と思うこともありました。やっぱりいろんな人生を考えますよね。でも、考えるということが大事なんじゃないかと思います。
――やっぱり役者だ、と思う瞬間があったんですね。
福士:俳優の仕事はやっぱり楽しいんですよね。自分の人生を生きること自体が、役者としての糧になるというか。自分の好きなことを突き詰めていけばいくほど、役者としての経験値にもなる。プライベートと仕事がいい分量で混ざっているような気がします。
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――分岐点になったような作品はありますか?
福士:もちろん、毎回挑戦していくし、毎回自分を確かめたり、信じたり疑ったりしながら取り組んでいます。強いて言うなら、ひとつは成島出監督の『ちょっと今から仕事やめてくる』(17年)という作品です。20代前半で成島監督と出会って、衝撃を受けました。もう一つは、今年11月公開予定の『湖の女たち』です。「THE HEAD」のあとに撮影したのですが、僕はこの作品で大森立嗣監督と出会って、役者として大きく変わったかな、と感じています。
――これから、世界を目指す若い人たちも増えていくかと思います。世界に飛び出すことは勇気が必要かと思いますが、どういうことを準備したらよいと思われますか?
福士:もちろん英語力は必要になりますが、大事なことは自分をきちんと見つめることだと思います。先ほど、日本の文化や個性があるからありがたいというお話をさせていただきましたが、個人としてもやっぱり自分を持っていることは大事だと思います。僕も日本で多くの作品に出演させていただいて、自分というものをだんだん確立してきました。日本での経験があったからこそ、海外でもブレない自分を持っていられたんだと思います。
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――福士さんご自身は海外進出というひとつの大きな目標を達成されたと思うんですが、今後の目標をお聞かせください。
福士:今回ありがたいことに第1歩を踏み出すことができたので、二歩目、三歩目と繋げられるように、努力し続けたいと思います。同時に母国語でのお芝居も大事にしたいので、日本でももっともっと活躍できるように力を蓄えたいなと思います。
(撮影=大塚秀美/取材・文=ふくだりょうこ)
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