「日曜の夜ぐらいは...」第8話:幸せになることが復讐。“何も起こらない”ドラマのメッセージに心打たれる
主演に清野菜名、共演に岸井ゆきのと生見愛瑠が名を連ねる連続ドラマ「日曜の夜ぐらいは...」(ABCテレビ/テレビ朝日系)が2023年4月30日よりスタート。脚本家の岡田惠和が、あるラジオ番組がきっかけで出会った女性3人のハートフルな友情物語を紡ぐ。
本記事では、第8話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「日曜の夜ぐらいは...」第8話レビュー
バイト先が人員不足に陥り、連日シフトに入り働き詰めのサチ(清野菜名)。邦子(和久井映見)はその姿がまるで武士のようと語るが、本当にそう。彼女はとにかく義理と人情に厚い。新人の頃に店長の田所(橋本じゅん)からセクハラを受け、パート仲間ともさして馴染めずにいたが、生活を支えてくれたのは事実だからと義を尽くす。またその一方で、サチは自分の心を支えてくれているみんなのことを考えていた。
ある日、岸田家に招集された翔子(岸井ゆきの)、若葉(生見愛瑠)、みね(岡山天音)、富士子(宮本信子)。しかしながら、そこにみんなを集めた張本人であるはずのサチはいない。実のところ彼女は事前に若葉を呼び出し、全員へのメッセージを託していたのだ。
それはいかにサチが周りを見ているかを示すものだった。兄の敬一郎(時任勇気)に家族との関係修復のきっかけを望むも全力で拒否されてしまった翔子。自分と邦子や、若葉と富士子の楽しげなやりとりを眺める彼女のどこか寂しげな笑顔をサチは見逃さなかった。「悪いけど私は放っておかない」と宣言し、翔子に自分たちの近くにいることを命令するサチ。
一方でみねには、こうしろ、ああしろと何かを指示することはしない。なぜなら、彼がみんなのためならどんなことにも全力で応えようとする人間であることを分かっているから。でも、サチたちにとってみねはただの便利屋じゃない。大切な仲間だ。だからこそ、サチはみねに、ただずっと側にいてほしいと願う。
仲間といえば、邦子と富士子もカフェ「サンデイズ」のメンバーに加わった。サチがそれぞれに役割を与えたのだ。富士子が年齢的なこともあってなかなか東京で働き口が見つからないこと、車椅子生活で誰かの手を借りることが多い邦子が自分も人の役に立ちたいと願っていることもサチは気づいている。ただみんなに居場所を与えるのではない。そこに、“いる意味”を一人ひとりにサチは与えようとしている。
そして、最後にサチはこれまでたくさん辛い思いをしてきた若葉にこんな言葉を送った。
「毎日楽しいなと思うことが、一番の復讐!ね、やっつけよう過去」
嫌な過去はなくならないし、自分を傷つけてきた人への負の感情も消すことはできない。でも、それを糧に幸せを掴むことができたらどんなにいいだろう。過去の自分に負けず、未来の自分を形作っていくみんなの“現在(いま)”が眩しくて泣けた。
ドラマ的にはこう順調だと何かが起きるんじゃないかと不安になったりもするけど、こんなに何も起こってほしくないと願ってしまう作品も珍しい。「日曜の夜ぐらいは...」というタイトル通り、日曜日の夜ぐらいは、本作みたいにただ幸せな気分に浸れるドラマがあったっていいじゃないか。
(文:苫とり子)
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