「らんまん」寿恵子、妊娠! 浜辺美波のつわり演技を評論する<第75回>
[※本記事は広告リンクを含みます。]
「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら
2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第75回を紐解いていく。
▶︎「らんまん」画像を全て見る
「らんまん」をU-NEXTで視聴する
田邊教授、震える
石版印刷機を購入し、長屋の部屋の壁を壊して、設置しました。壁を壊すことが、万太郎(神木隆之介)が困難な状況をまた一歩突破したことが重なって見えます。
第74回で胸筋を見せて大活躍した倉木(大東駿介)が、第75回でも見せ場があります。
印刷機が来たのでいよいよ図譜の制作にかかりますが、版元から前金を求められ、寿恵子(浜辺美波)は質屋に白いドレスを持っていきます。
前金は100円。
ドレスだけでは足りず困っているところに、倉木が100円を持ってきます。
これは、第28回で、万太郎が困窮している倉木に差し上げた100円です。
「らんまん」明治時代の100円の価値は?<第28回>
あのとき、倉木は戊辰戦争で負傷したうえ、武士の時代が終わってしまい、アイデンティティもお金も失って、万太郎の荷物を置き引きして、妻えい(成海璃子)が質屋でお金に替えようとしていました。
万太郎は、荷物のなかにあった大事な植物標本を100円で買って取り返したのです。
標本がそれだけ大事であったというのもあるし、倉木のプライドも立てることができました。以後、倉木は変わっていきます。
第28回くらいの頃は、万太郎が植物を分析するように、誰かの本質に気づき、その人らしく生きられるように促すパターンが見受けられたのですが(例、綾や竹雄)、その後はややその描写が薄れていたところ、第15週では再び、そのパターンが戻ってきて、大窪(今野浩喜)も万太郎に本質を引き出してもらっていました。1話完結ものではないので、水戸黄門の印籠のように、毎回、同じパターンだと単調になりますから、忘れた頃にリフレインするのは達者です。
そして、ヤマトグサがついに日本ではじめて学名を発表した植物となり、大窪と槙野の名前がつきます。
本も完成。お祝いに、長屋総出でチラシ寿司を作ろうとしていたら、炊きたてのご飯に、寿恵子は思わず、口元を手で抑えます。
出た。つわり=うっ、と口元を手で抑えるポーズ。ドラマでは定番中の定番で、もはやある種の禁じ手であります。「舞いあがれ!」では、大好きなお好み焼きを見ながらなんか違和感を覚えるような表情を見せました。
お好み焼きを見て気持ち悪そうにした福原遥の演技が巧い<第111回>
「ちむどんどん」ではむかむかするとお腹をさすっていました(第95回)。
「カムカムエヴリバディ」第38回では、女中の雪衣(岡田結実)が「うっ」と口を押さえて流しに駆け込み吐いていました。定番ながら、一気にいろんなことが起こる怒涛の展開のひとつとしてわかりやすいインパクトを重視したものでした。
このように最近は、手垢のついた表現を避ける傾向にありましたが、浜辺美波さんは、定番の動きに、まず、寿司桶を遠ざけ、口を押さえ、しゃがむという1、2、3をリズミカルにやって、新鮮味のなさを回避。小柄な浜辺さんが素早くしゃがむことで愛らしさも出ました。
その前に、万太郎の仕事を手伝っていて、めまいがすると言うところもあったり、75回のラストで「どうでもよくない話があります」と万太郎に話をするところをはっきり言葉にしないで、万太郎の笑顔で驚きと喜びを感じさせています。植物も人間もひとつとして同じものはないように、妊娠がわかる場面にもひとつとして同じものはないのです。万太郎の植物分析も、花を大きく万太郎を小さくしてCGで見せました。これも毎回、植物をじっと観察しているとか顕微鏡をのぞいているとかだとパターンになってしまいますから、とてもいいタイミングで新たな表現を入れてきたといえるでしょう。
ですが、禍福は糾える縄の如し。
喜びのそばにはーー。
田邊(要潤)が怒る事件が起こってしまいます。
(文:木俣冬)
“朝ドラあるある”満載!「朝ドラ辞典」を見る
木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中
「らんまん」をU-NEXTで視聴する
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
(C)NHK