「らんまん」明治時代の100円の価値は?<第28回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第28回を紐解いていく。
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標本を買い取ろうとする万太郎
標本の入ったトランクは見事、質屋で取り返すことができました。でも中身がない。行方を追ってクサ長屋に向かった万太郎(神木隆之介)と竹雄(志尊淳)。そこであわや標本が燃やされそうになっているところに出くわし、ストップをかけます。
自分のものなのに、100円払うから返せと言い出す万太郎。それだけ大事ということですが。身代金みたいなものですね。
100円は大金、そんな理不尽なことに竹雄は我慢できず、倉木(大東駿介)に詰め寄ります。が、倉木は木で鼻をくくったような態度です。
竹雄は、倉木は牛鍋屋にいて、あとをずっとつけていただろうと指摘します。気づいていたとはさすがしっかり者ですが、だったらもっと用心しないと。でもきっとまさか、標本が盗まれるとは思わず、お金だけ大事に抱えていたのでしょう。
そのとき、倉木の子供・健作が熱を出して……。万太郎は自分の少年時代を思い出し、医者代やら自分の薬やらを提供します。
お金がある人がお金を出す。いいことです。場合によっては、お金にものを言わせているようにも映りますが、万太郎は嫌味がありません。
なにより、彼が倉木に啖呵をきったところが良かった。
植物の標本はいまは世間ではなんの価値もないけれど、自分がその価値を世に示すのだと堂々と言い切りました。
自分で自分のやりたいことの価値を上げるという信念。自分のやってることに意味があると信じる心の強さ。道を切り開く人ってかっこいい。
「あさが来た」ではそういう開拓者を、集団のなかから果敢に海に出ていくペンギンになぞらえ、「ファーストペンギン」と呼ばれるのだというエピソードがありました。この話をヒロインにした五代友厚を、「らんまん」で坂本龍馬役を演じたディーン・フジオカさんが演じていました。
万太郎もまさにファーストペンギンです。
そして、なんだかやさぐれている倉木ですが、御家人崩れではないかと長屋の住人には噂されていました。明治維新のときにいろいろあったようです。万太郎はそのことを気にかけている様子。維新では、新しい時代を切り開く人がいて、旧時代の人と繰り広げた熾烈な戦い・戊辰戦争があったのです。
「らんまん」は単に植物愛のある人間を描くのではなく、時代の流れを俯瞰しながら、そこに生きる人物がその時代をどう肌で感じながら生きているか、そこも含めて描こうとしているところがすてきです。
というわけで、当時の100円は、いくらくらいだったのでしょうか。
「値段史年表 明治・大正・昭和」(朝日新聞)という本を筆者は持っていて、朝ドラでお金の話が出てくるとそれを参照するのですが、本がなくてもネットを検索するといろいろ出てきます。便利な時代になりました。これも誰かが切り開いてくれたおかげです。
ただ、ネットに出てきた情報が信頼できるものか、見極めないといけません。信頼感でいったら国立国会図書館のサイトでしょうか。そこの参考資料のひとつがまさに「値段史年表 明治・大正・昭和」でした。
今回は試しに話題のChatGPTにも聞いてみました。すると、もっともらしい回答でしたが、参考資料を聞いたところ、ちょっとあやしかったので、ここでは掲載いたしません。
で、明治の100円です。明治30年でコーヒー1杯2銭だとかで、1銭は1円の100分の1。100円あったらコーヒーがいやというほど飲めます。
(文:木俣冬)
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