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「ハヤブサ消防団」第1話:中村倫也演じる三馬の愛らしさと村の陰鬱な雰囲気がコントラストに

2023年7月13日にスタートした「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系)は、池井戸潤の同名小説を原作とした異色の新機軸ミステリー。都会から長閑な集落に移住してきたミステリー作家の三馬太郎(中村倫也)が地元消防団に加入したのを機に、謎の連続放火騒動に巻き込まれていく姿を描く。ヒロインの彩を川口春奈が演じるほか、共演に満島真之介、古川雄大、山本耕史らが名を連ねる。

本記事では、第1話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「ハヤブサ消防団」第1話レビュー

もしかして、この集落って私の地元がモデル?近所にコンビニすらない片田舎に実家がある筆者は思わずそう思ってしまった。

ミステリ作家の登竜門といわれる“明智小五郎賞”を受賞したものの、2作目以降は出版の度に初版の部数を削られて鳴かず飛ばず。そんな新ドラマ「ハヤブサ消防団」の主人公・三馬太郎(中村倫也)が都会のストレスから解放されるために、移住したのは亡き父の故郷である小さな集落だった。

豊かな自然に囲まれて、時間に追われることなくゆるりと暮らしたい。そんな思いで都会から田舎に越してくる人は結構いる。だけど、実際に住んでみたら付き合いで色々やらされて大変だったという声をよく聞く。本作はその代表として地元の消防団に三馬が加入させられるという設定が何ともリアルで面白い。主要都市から離れた田舎では災害時、救助の手が届くのに時間がかかるため、有志で集まった地元の人たちがその役割を一部背負っているのである。

加えて、消防団は地域交流の場にもなっており、団員同士でお酒を飲む機会が非常に多い。今日もSNSでは、消防団に入っている地元の友達がみんなで町長を囲った集合写真を挙げていた。それを地域の人と繋がれる良い機会だと思う人もいれば、煩わしいと感じる人もいるだろう。三馬は当初、後者だった。

明らかに運動神経が悪そうで、「団と名前がついているものは向いていないんです」と案に集団行動が苦手なことを匂わせる三馬。とはいえ、潔癖に人を拒絶するそぶりは一切なく、歳が近い藤本(満島真之介)から誘われたら気軽に飲みに行く。山原(生瀬勝久)や宮原(橋本じゅん)ら血の気の多いおじさんたちとも噛み合ってはいないが普通に会話もできて、みんなから可愛がられるタイプだ。中村倫也はそういう通り一遍じゃない役を演じるのが本当に上手い。虫を怖がったり、消防服を着てはにかんだり、あることに驚いて川に落ちたり、初回から三馬の他人に好かれやすい人柄がまざまざと伝わってきた。

一方で、終始本作には不穏な空気が流れる。特に表情のない白髪の女性(村岡希美)が数人を引き連れ、山の上から太陽を眺めるシーンはカルト宗教のそれを思わせた。さらに村では昔から素行が悪く、現在は住職(麿赤兒)にお世話になっている浩喜(一ノ瀬ワタル)が村八分に遭っており、決して地域の人間関係が良好とは言えないことも分かってくる。

その極め付けに、三馬に対して親切に接してくれた住人・波川(大和田獏)の自宅から出火。寝たきり状態で自ら逃げ出せない波川の妻を勇敢に救い出した消防団の働きぶりを目の当たりにして、三馬は自身も加入することを決心するも、ハヤブサ地区では今年に入ってから複数回不審な火事が起きており、放火が疑われていた。その犯人として名前が挙がっているのが、浩喜だ。波川の自宅が火事になった当日も三馬は近くで浩喜の姿を目撃しており、興味本位なのか三馬は後日彼の家を訪ねる。全く怖がりなのか、勇敢なのか分かりゃあしない。

でも、三馬が接した浩喜は決して悪い人とは言えなかった。ぶっきらぼうで口数は少ないが、野菜作りに興味があるという三馬に自分の畑で採れた野菜をわざわざ持ってきたり、芝刈り機の不調を治してくれたりと力になってくれようとしている。「越してきて良かったです」という三馬の一言に見せた笑顔から、彼が村八分に遭っても地元を愛していることが伝わってきた。

しかしながら、その笑顔が三馬の見た彼の最期の姿となる。浩喜が山間部の川で遺体となって見つかったのだ。連続放火事件に、住民の不審死とただ事ではない出来事に移住早々、次々と遭遇する三馬。その裏では三馬が墓地で見かけた彩(川口春奈)や太陽光発電企業の営業マン・真鍋(古川雄大)が不穏な動きを見せており、消防団のメンバーも含めてキャストがキャストだけに全員が怪しく見える。

三馬の一挙一動が可愛い!癒される!なんて気を抜いていたら、意表を突かれそうな本作。ワクワクとハラハラが早くも止まらない。

(文:苫とり子)


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