映像業界の働き方

SPECIAL

2023年08月05日

アニメーション作家・大平彩華が語る、“AI”“NFT”で世界とつながる方法┃「ギャルの明るくて強い精神性は、コロナ禍を経た世界で求められている」

アニメーション作家・大平彩華が語る、“AI”“NFT”で世界とつながる方法┃「ギャルの明るくて強い精神性は、コロナ禍を経た世界で求められている」

テクノロジーの発展とともに、映像表現も進化を遂げている。最先端のカメラやソフト、AIなどの制作ツールや、多様化するメディアの中で映像クリエイターたちは「テック」とどのように向き合っているのだろうか?

今回話を聞いたのは、80〜90sアニメカルチャーへの深い愛を感じさせるアニメーション表現が話題の大平彩華。元「ギャル」でありアニメの「オタク」であることをアイデンティティに映像制作や、最近ではアーティストの草野絵美と立ち上げたNFT プロジェクト「新星ギャルバース」が世界的な人気も獲得している。

そんな彼女のキャリアを紐解くとセル画でのアニメ制作に始まっていた。そこから、どのようにNFTやAIといった最先端の技術を吸収していったのだろうか。

アニメーションはセル画から


──大平さんの作品には、日本の平成に生まれた「ギャル」と「アニメ」の要素を感じます。幼少期はどのようなものに触れてきましたか?

大平彩華(以下:大平さん):小さい時は、漫画やアニメに夢中でした。ジャンルも手塚治虫やAKIRA、ジャンプといった少年漫画も買うし、『神風怪盗ジャンヌ』など少女漫画も同時に読むような子供でしたね。実家にあった小学生時代のムツゴロウノートを見返した時に、連載漫画のように描いてて、いま思うと黒歴史です(笑)。


──最初の視覚体験として、漫画やアニメの影響があったんですね。そこからアニメーション、もしくは映像に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?

大平:20歳の頃に気がついたら、実写映画に興味が湧いていて。当時は個人でも買える値段のムービーカメラを手に友人を撮ってましたね。周りにそうした映像の知識を持っている人もいなければ、YouTubeで使い方を学ぶような時代でもなかったので、独学でもとにかく何かやりたいという気持ちが先行していました。でも、色々と映像の世界を知っていくうちに映像に関係する職業になるためには、美術大学や制作会社の出身者が多いことにも気がついて。そういう人たちがいる中で、普通にやっても敵わないなと思ったんです。そこから自分の武器になるようなものを考えた時に、小さい頃から唯一無我夢中になれる絵を描くことを思い出して。他の人の努力に勝るためには自分自身が「没頭」や「ただただワクワクできる感覚」を十分に感じれるものとして、アニメーションを取り入れて実写と混ぜたら自分らしい表現が楽しめるのかなと。

──とはいえ、アニメーションも基礎的な技術が必要となってきますよね。以前のインタビューでは、セル画から学んだとおっしゃっていて驚きでした。

大平:最初のうちは、実写もアニメーションも独学で勉強していたのですが、急に途方に暮れた時期に直面したんです。アニメーションは、基本的に制作会社というチーム単位で行うことなので、一人で作ってる自分に対してあまりにも無謀すぎることをやってるように感じてしまって。でも、20代の頃だから大学に入学する程のお金もないし、どうしようかと思った時に阿佐ヶ谷の小さなアニメーションの教室を見つけて数ヶ月通いました。おじいちゃんが先生のこじんまりしているところだったので、まず最初に出てきたのは、昔ながらのライトの上にタップでつけられた紙。わたしの中では、アニメーションといえばデジタルで作画して編集するものだと思っていたので、まさか1枚ずつ手描きでスキャンするなんて想像していませんでした。かといって、おじいちゃんに「デジタルの方法を教えて欲しい」と伝えても「知らん」と言われてしまって(笑)。

──宮崎駿にデジタル教えて欲しいといってるようなもんですもんね(笑)。それでも、そこでの経験は、いまのアニメーション制作に影響してると感じますか?

大平:驚きつつも、最後短編のアニメーションを完成するところまで基礎知識を学んだおかげで、手描きの質感は吸収できたと思います。当時も手で描いたものを、家に帰ってデジタルに置き換えるような作業をiPadで応用してみて。そうした基盤がある上で、いまはiPadで描いてから、PCでプレミアやアフターエフェクトで編集するようなプロセスで制作できてると思います。

香港から帰国して、ラッパーたちと仕事


──独学で始めてから、その後クライアントワークを手に入れるまではどのような活動を行っていましたか?

大平:最初のうちは、仕事もなかなか来なかったので、なんとかポートフォリオを完成させて仕事を取れるように頑張ろうと意気込んでいて。一方で、東京での制作もなんだか嫌になって、ちょうど家の更新のタイミングだったこともあり、2017年頃に勢いで香港に行ったんです。もともと映画『ブレードランナー』のような香港のSFっぽいネオン街の風景やウォン・カーウァイ監督の作品が好きだったし、現地の同じ年齢の映像アーティストやクルーにも興味があっていつか行ってみたいなとは思っていた街でした。特に九龍城の世界観が好きなので、現地でも似たような綺麗な刑務所のような場所に住んでいましたね(笑)。誰も知り合いがいない街で集中力を妨げるものもないので、黙々と勉強しながら制作してました。夜はクラブに行けば、共通の趣味がある子と出会ってそこから何百人もの友達を作って帰ってきて。いまでも海の向こう側から、当時知り合った友達の活躍をSNS上で見れるのはモチベーションにもなりますね。

香港時代に描いたアニメーション

──帰国してから最初のクライアントワークとなった作品を教えてください。

大平:BAD HOPの当時のマネージャー兼映像ディレクターのRenichi Murakoshiがポートフォリオを見てくれたのがきっかけで、武道館公演のLED映像、Visualizer、ジャケのアートワークなどを制作しました。

川崎を拠点に、活躍するHIPHOPクルー・BAD HOP。2018年11月、日本のHIP HOPアーティスト史上最年少で日本武道館公演を成功させた

大平がビジュアルを担当したBAD HOP『Choice feat. Vingo, Yellow Pato & Bark』のMV

Vingo, Bark & G-k.i.d 『RedruM』のジャケ

大平:あとはポートフォリオで制作していた昭和的なアニメーションを見てくださったm-floのVERBALさんが声をかけてくださって、m-floのアニメーションシリーズやMV、ジャケットのアートワークなど担当させていただきました。そこからはありがたいことにトントン拍子で仕事をいただけるようになりましたね。

m-floのメンバーが出演するblock.fmの番組「Mortal Portal Radio」の様子をアニメ化した映像作品

m-flo♡chelmico 『RUN AWAYS』のMV

同作のジャケ

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!