アニメーション作家・大平彩華が語る、“AI”“NFT”で世界とつながる方法┃「ギャルの明るくて強い精神性は、コロナ禍を経た世界で求められている」
NFTを使えばアニメーションも制作できるかも
2022年からスタートした大平がディレクター兼リードアーティストを務めるアニメ制作を目的としたNFTプロジェクト。ギャル、メタバース、ユニバースをかけあわせながら、平成初期の少女アニメのテイストを取り入れた、背景・顔・肌・身体・洋服のパーツをランダムに組み合わせて自動生成されたNFT。その数は8,888体もあり、世界中の人が集まりホルダーとして参加できるコミュニティがあり、ギャルバースの目標である「アニメ制作」のために議論が行われている──その後、「新星ギャルバース」(以下、ギャルバース)の活動がスタートしますよね。どのような経緯で共同創業者の草野絵美さんと話が膨らんでいったのでしょうか?
大平:ちょうどアニメーションから映像ディレクションまで活動が広がっていったタイミングで、コロナ禍に直面して。もともと草野さんとはMV制作を通して面識があったことから、お互い暇だからなんか作りたいねとカジュアルな会話から始まりました。
パートナーの草野絵美はアーティストで起業家。昭和歌謡。Emi Satellite名義で音楽活動も行っていた
大平:最初は一緒にアニメーション作りたいねという動機があったのですが、現実的に考えると制作費やチーム作りとしては難しくて実現性はぼんやりしていて。そこで草野さんから海外でNFTがどうやら流行ってるらしいと聞いたり、その後に草野さんの息子が作ったNFT「Zombie Zoo Keeper」(*)が話題になったことでインプットが増えたことをきっかけに、NFTを使えばアニメーションも制作できるかもと可能性と感じました。NFT界隈の交友関係も広がったことで、チームメンバーでもあるロサンゼルスとオーストラリア在住の2人もジョインしてくれて、テックやNFTに詳しい彼らがいるおかげで活動初期のロードマップ設計もスムーズに進みました。わたし以外の草野さん含めるメンバーのプロモーションやマーケティングの力によって、ギャルバースを8000体作るに至るまで制作に集中できたと思います。独学で続けてきたわたしにとって、初めてのチームワークだったこともあり、いまでもギャルバースでアニメーションを作りたいという最初に抱いた夢は目指し続けられています。
*.......2021年に、当時小学3年生だったZombie Zoo Keeperがゾンビを題材にしたドット絵をNFTで出品したところ、スティーブ・アオキが240万で購入するなど著名人の間で話題となる。その後、作品は売れ続け小学生ながら世界的アーティストとなった。
ギャルバースのキャラクターたち
──ギャルバースの名前の通り、キャラクターの見た目は多種多様であっても全員にギャルの精神性が宿っていますよね。現在「Y2K」のトレンドからギャルカルチャーもリバイバルを遂げていますが、大平さんが描くキャラクターのイメージは表層的ではないように感じています。実際に、10~20代でギャルカルチャーを体験した背景があるのでしょうか?
大平:言われてみれば、振り返ると10代にめちゃくちゃギャルやってて。週3で日サロに行ってアパレルショップの販売員をしているような生活でした。
ギャル時代のプリクラ
大平:でもギャルだけっていうよりも、小さい頃から好きだったアニメや漫画に対する想いは変わらなくて、「オタク」も「ギャル」もどちらのカルチャーも背負って生きていたように思います。いまの流行りだからということは関係なく、そうした平成初期の日本独特の生々しいカルチャーや時代感を体験したからこそ、自然と作品にも自分のアイデンティが現れているのかもしれないですね。いまでも自分が当時流行ったものを見て、「懐かしい!すごい好きだった!」と恋しい気持ちでテンションが上がるんです。ギャルバースの活動では、そういう感覚を思い出すように全員の心を幼少期に戻したいですね(笑)。
──ギャルバースは、そうした感覚に共感した世界中のファンダムと繋がりながらも一緒にロードマップを達成しているようなイメージです。日本のアニメカルチャーは世界的に共有できるコンテンツのひとつですが、その中でもギャルバースが注目されるようになった理由はなんだったと思いますか?
大平:NYで開催されたNFTの祭典「NFT.NYC 2022」に参加した時は、そもそも日本から参加している人が少ないことから、海外視点の日本インスパイア系のアニメ絵PFP(プロフィールピクチャー)プロジェクトが多かったです。個人的には海外から見たイメージとして忍者、侍のモチーフとか、「AZUKI」をはじめに屋号に変な名前があるのは面白いなと感じていて。萌え系路線でもやたら女性のアイコンの胸が大きいとか典型的なオタクカルチャーのイメージのPFPばかりで、それらも否定はしないのですが、単純に「女性がPFPにしたい」と思えるプロジェクトがあまりなかったんだと思います。そこにギャルバースが良い意味で目立って出てきて。実際に祭典でも「今まで自分のためのNFTが本当になかったけど、ギャルバースが出てきたおかげで私のためのPFPに出会えてすごい嬉しかった」とリアクションをいただきました。ほかにも性別や人種に限らないキャラクターのパーツや肌を描いていることから、子供の頃、魔法少女アニメなどの日本のアニメを好きだった黒人の女性にも「やっと主人公になれた」と言ってもらえて。個人的にもギャルは見た目だけじゃなくて概念だと思っているので、そうやって世界中の様々な人たちに喜んでもらえて嬉しかったです。
──大平さんの思うギャルの概念を教えていただけますか?
大平:他人の評価より自分の評価で生きることなんだと思います。「ウチ等が最強」って言い切れるくらい強い意志がギャルにはある。そうやってギャルの明るく強い精神性は、コロナ禍を経て世界が停滞していた時代にとって、自然と求められるものだったのかもしれないです。
AIをインスピレーションにアニメ制作
──最近のInstagramのポストでは、AIに大平さんのタッチを学習させてギャルバースイラストを生成していましたね。クリエイターとしてAIについて、どのように感じていますか?
大平:現在ギャルバースコミュニティ内でAI研究をしているホルダーさんがいて、実験的に私の絵をAIに学習させて絵の描けない人でもギャルバースの二次創作などを楽しめるようにする取り組みを行っています。実際にギャルバースの活動としても、ホルダーさんとのコミュニケーションツールとしてAIはうまく活用しています。
AIで生成したギャルバースのキャラクター
大平:先ほどお話した通りロードマップの最終目標である、ホルダーさんと一緒にアニメーション制作をする夢が、MVという形でようやく今年の7月末に実現しそうなんです。そこで制作のプロセスを一緒にホルダーさんと共有したいとなった時に、活用しているのが「midjouney」によるAI画像生成です。
ホルダーが提出したデザイン案
大平:例えば、ギャルバースでこれまで描いてきたキャラクターには下半身や全体の衣装が存在していないので、ホルダーさんにデザイン募集をする。従来であれば、画力がある人のみ参加可能となってしまうところをAIを使えば、その人がイメージするものをテキストベースで気軽に作ってプロジェクトに参加できるんです。しかもAI自体は、人間が考える常識的な重力や洋服の概念を超えてくれるので、ホルダーさんもわたしも予想外の発想を一緒に楽しめる機会になっています。イメージに限らず、マーケティングやプロモーションもみんなでDiscord上で考えているので、全ての過程を公開しているので本当に「みんなで作っている」という感覚ですね。
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