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2023年08月10日

「こっち向いてよ向井くん」第5話:元彼が素敵に成長してたら、さすがにアラサーもジェラピケを着る

「こっち向いてよ向井くん」第5話:元彼が素敵に成長してたら、さすがにアラサーもジェラピケを着る


ねむようこの同名漫画を原作とした赤楚衛二主演のドラマ「こっち向いてよ向井くん」(日本テレビ系)が2023年7月12日よりスタート。本作はGP帯連続ドラマ初主演となる赤楚が、雰囲気も性格も良く、仕事もできるのに10年間彼女がいない30代の男性を演じるラブコメディだ。共演には、波瑠、生田絵梨花、藤原さくら、岡山天音らが名を連ねる。

本記事では、第5話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「こっち向いてよ向井くん」第5話レビュー

あー!そっちは沼だよ!……と、洸稀(波瑠)の目線になって心で叫びながらも思わずドキドキしてしまった。「なし、だよね?」「なし……だよ」とお互い確認し合いながら、唇を近づける向井くん(赤楚衛二)と美和子(生田絵梨花)のキスシーンに。

「こっち向いてよ向井くん」第5話では、向井くんと元カノの美和子がサークルの同窓会で10年ぶりに再会を果たす。

久々の恋愛モードに突入してから、色々な女性と出会ってきた向井くん。真由(田辺桃子)には終始紳士的な態度で接し、アン(久間田琳加)から部屋に誘われても上がらず、チカ(藤間爽子)とは手を繋ぐのも躊躇った。もしかして性欲があまりないタイプなのでは?と思うほどに、あの理性的な向井くんはどこに行ってしまったのだろう。頭ではダメだと分かりながらも、本能に抗えない向井くんに初めて“雄”を感じた。でもそれって結局、向井くんの中で美和子への思いは終わってなかったってことなんじゃないか。

そんなど本命の美和子に一応は受け入れられて、向井くんはこのまま復縁パターンを期待する。性懲りもなく美和子の部屋に何度も上がる浮かれポンチの向井くんに呆れつつも、その幸せそうな姿を見ると良かったねと思う自分もいる。洸稀じゃないけど、もはや向井くんは他人じゃない。私たち視聴者だって向井くんに幸せになってほしい。幸せになってほしいからこそ、美和子の一挙一動に意味を感じて、向井くんが心配になってしまった。

10年前まで向井くんの前でジェラピケを着ていた美和子は、ダル着にすっぴんで味付け海苔をつまみに酒を呑む。長い月日を経て美和子は、向井くんの知る彼女ではなくなった。そんな美和子の「向井くんは変わらない」という言葉が気になる。だってそれは、彼女が別れを選んだ頃の向井くんから何も変化がないということであって、問題は何も解決していないのだから。

久しぶりの元彼がそれはそれは素敵な男性に成長していて、復縁のふた文字が頭に浮かぶくらい心がトキめいたのだったら、アラサーだってふわふわのジェラピケを着る。ましてや、すっぴんなんかでいられるわけがない。だから、美和子のそれは単に久しぶりに会っても向井くんの前では素でいられるということではなく、もはや本命ではなくなった相手に自分を可愛く見せる必要はないというメッセージなんじゃないだろうか。

向井くんはこの10年間、美和子と過ごした日々を思い出にはできなかった。だけど多分、美和子はそれを宝箱にしまっていのだと思う。いや、宝箱じゃなく、そこら辺にあるクローゼットか段ボールだったのかもしれないけれど。とにかく捨てはせず一応取っておいたのだ。そしてしばらくたって久しぶりに引っ張り出したら、ちょっとだけ輝いて見えた。元々は欲しかったものなのだから、当たり前だ。だけどそれは所詮いらなくなったものであって、またしばらく経つと「ああ、ここが気に入らなかったんだよな」って気づいて再びしまわれるか、捨てられるかである。

なんて、リアルで残酷なラブストーリーなんだろう。向井くんが傷つく未来が容易に想像できて、胸が苦しい。一方で、向井くんも本当に美和子と復縁したいのかどうかはちょっと謎だ。本当に好きだったらこれまでも何かしらアクションを起こしてもおかしくないはずなのに、向井くんは何もしなかった。プライドなのか、しつこくして嫌われたくなかったのか。結果的に美しい思い出に浸るばかりで、10年も美和子を放置した。その間に美和子はきっと別の恋もしただろうし、社会に揉まれて変わってしまったよ。なのに今更プリンの口になったからって、やっぱり美味しいな、俺たちやり直さない?なんてちょっと虫が良すぎる気もする。

美和子ともう一度付き合いたいなら、物語の続きを作るなんて言わずに全く新しい物語を作る覚悟が必要なのだろう。

(文:苫とり子)

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