「ブギウギ」給料1.5倍の700円で引き抜きを打診されるスズ子<第32回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第32回を紐解いていく。
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松永の気持ちは
東京に出てきた年頃の娘さんたちにはいろんなことが起こります。これが大人になるということなのでしょうか。スズ子(趣里)と秋山(伊原六花)は目下、恋の悩み中。
スズ子は松永(新納慎也)、秋山は中山(小栗基裕)への思いに揺れていますが、スズ子はまだ額にキスされただけ。
でもついに「ないしょの話」があると喫茶店に呼び出されたので、内心期待して赴くと、それは、引き抜きの話でした。梅丸から日宝へ一緒に行かないかと誘われました。
「やりたいことをやらなくて何が人生だ」というパワーワードを松永は繰り出します。
それを聞いた羽鳥(草彅剛)は、「いいこと言うなあ」と悔しがる。羽鳥のおもしろさは、
スズ子の引き抜きには断然反対で、激しく興奮しながらも、松永のことはリスペクトしていること。
ものすごく怒っているのに、ユーモラスで、怒られてる感じがしません。役によっては強烈な破壊力として発揮することもあるエネルギーを、コントロールして、破壊の方向に持っていかず、ズラすことができるんですね。
秋山のほうは、スズ子の恋が「まだ(額にキスだけ)」と驚くということは、中山にぐいぐいと押されて、すでに交際ははじめて、もっと進展しているのでしょう。
中山に女性用の色っぽい衣裳を着せられるシーンを見てると、関係はもうだいぶ進んでいるような雰囲気。番組が違えば、もっと濃密な場面がありそうな感じです。
そして、あれよあれよとプロポーズも。何かと秋山の大きな瞳が見開かれまくります。
環境が人を変えていくものです。出会いで、人は変わっていく。
スズ子のほうは恋の話ではなく、ビジネスの話ですが、梅丸の1.5倍の給料で日宝に来てほしいと言われ、高級そうなお店でごちそうにもなり……。だんだんと自分のランクが上がっていくのを肌で感じていきます。
しかも、松永に「君がほしい(I want you)」と囁かれ、くらくら。
松永は、スズ子に甘い言葉をささやき、とても優しいけれど、はたしてスズ子を女性として見ているかと言えば、中山の秋山への態度ほど、男女の関係が匂い立ってこない気がします。
心惹かれる松永の誘いに、日宝の偉い人からの好条件の提示。でもスズ子はすぐに移籍を決められません。そこが彼女のいいところ。
悩むスズ子が、おでん屋の伝蔵(坂田聡)に「義理と恋」どちらが大事か訊ねると、「ばかやろう。おれはそんなもんどっちも信じねえ。どっちもまやかしだ」と一刀両断。伝蔵のやさぐれ気味な言動がいつもほんとうにおもしろい。
スズ子の心が日宝に少し傾きはじめるのは、実家のお金問題。ツヤ(水川あさみ)が病気で治療費がかかるかもと思うと、給料が1.5倍の700円に上がることに心惹かれて……。
と、そこへ辛島(安井順平)が血相を変えて、スズ子の下宿に飛び込んできます。「あさイチ」では、羽鳥が引き抜き問題を話したにちがいないと推測していました。たぶん、間違いない。
そもそも大事な秘密の話を、みんながよく使ういつもの喫茶店でするのはどうかと……(いつものセットが限定されてる問題)。
(文:木俣冬)
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