待望の二枚目役!?竜星涼が『Gメン』の現場で託されたタスクを語り尽くす!
連続ドラマ化もされた『ナンバMG5』の原作者・小沢としおによる青春グラフィティ『Gメン』を、『おっさんずラブ』シリーズの瑠東東一郎監督が実写化、恋に友情、笑いとアクション……と“全部乗せ”な青春エンターテインメントに仕立て上げた。
彩るキャストも、主人公・門松勝太役の岸優太をはじめとしてまさに豪華絢爛。勝太の恋の師匠にして無二の友となっていく瀬名拓美役には、竜星涼が配された。瑠東組に何度も参加しているからこその“ミッション”を担い、岸優太と向き合い続けた撮影期間もまた、汗と笑いとエモーショナルに満ちた(!?)日々だったようで──。
公開目前のタイミングということで、事細かに語ってもらった。
現場にあったのは“アオさとアツさ”
▶︎本記事の画像を全て見る──お世辞でも何でもなく、高校生役を演じていても違和感がなかったです。
竜星涼(以下、竜星):ホントですか!? もしそう見えていたのであれば、ふだんよりも濃いめの化粧が効果を発揮したんだと思います(笑)。やっぱりね、もう三十路なもので……自分としてはどうしても“年齢の壁”を意識してしまうんですけど、そんなふうに言っていただけるのはありがたいですね。
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──そして、これまた……お世辞抜きで『Gメン』、面白かったです!
竜星:試写を観てくださった方から満足度の高いコメントをいただくことが多いので、素直にうれしいですね。刺さる要素はいろいろあると思うんですけど、キャストがバラエティーに富んでいて……芸人のりんたろー。さんがいらっしゃったり、いろいろな活動をしてきた岸優太が主演として座組の真ん中にいてくれたことも大きくて。
役者だけの現場じゃなかったからこその熱さだったり笑いだったりが生まれたのかなと思っているんです。言ってみれば、“アオさとアツさ”のある現場だったんですけど、この年齢でまさか自分がもう一度参加できるとは思っていなかったので、そういう意味でもうれしかったんですよ。
僕が学生のころって、人からはバカなように見えてもアツく思春期を過ごすヤツらを描いた作品が結構あって、胸を熱くした世代の1人でもあるので、この令和の時代にこのメンバーで『Gメン』のような作品をやれたことが、本当に感慨深いです。
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──竜星さんよりも大人の田中圭さんや高良健吾さんが高校生役を演じきっていたことを考えると、まだまだイケるんじゃないかと……。
竜星:青春群像をリアルに描くとなると、実際の10代や20代前半ぐらいの役者さんを起用したほうが生々しさが出ると思うんですけど、『Gメン』のようにコミカルな味わいのある作風は、ちょっと年齢層が上の──僕らぐらいの役者のほうが深みが出るのかな、と思ったりもしていて。そう考えると、まだ“ヤンキー系の青春モノ”であれば演じられるのかな、と(笑)。
──にしても、瀬名役はめちゃくちゃフィットしていたように感じました。
竜星:まぁ、僕もこれをきっかけに「竜星涼は“二枚目路線”もできます!」とアピールしていこうと思っていますので(笑)。ただ、瀬名は単に二枚目では終わらないキャラクターなので、そこが瑠東(東一郎監督)さんに選ばれたポイントだったんでしょうね。僕が演じたことで、原作の瀬名から“2.5枚目キャラ”にまで膨らんでしまった部分が結構あったかもしれないんですけど、にじみ出る人間味が小気味いい瀬名拓美になったんじゃないかな──? と自分でフォローを入れておくことにします。
監督からの「岸優太を困らせる」という指示
▶︎本記事の画像を全て見る──その瑠東監督の現場はアドリブが多いことで知られていますが、『Gメン』の現場ではどういった感じでしたか?
竜星:今回は岸優太をどれだけアドリブで困惑させるか、というテーマを瑠東さんからは与えられていたので、常に段取りとテスト、本番で違う芝居をして、そのリアクションを瑠東さんと僕は楽しんでいたという感じでした。というのは、岸優太という役者はあらかじめ固まったものを演じるよりも、自由に泳がせたほうが面白いものがいっぱい出てくる──と瑠東さんが感じとったからこその、僕に対する「優太を困惑させてくれ」という指示だったんだろうな、と(笑)。
実際、本人は毎回僕の芝居が違うから困ったでしょうけど、困りながらもその都度一生懸命に対応してひねり出すワードのチョイスが、まさしく天性のものというほかなくて。その面白さが正直うらやましかったですね。計算じゃないからこその強さがあって、素で笑っちゃうんです。しかも、そういうリアクションも本編で使うのが瑠東さんらしくて、いろいろな意味で楽しい現場でした。
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──別媒体で岸さんにインタビューした際、「早くカットが掛かってくれ……」と毎シーン、心の中で思っていたとお話しされていて。
竜星:優太からすれば、それが素直な思いでしょうね(笑)。でも、カットが掛からない以上はやり続けなければならないじゃないですか、役者として。僕はそういうハプニングも楽しめるタイプなんですけど、優太は困っている顔をしつつも、想像しているリアクションとは180度違うことをしてくるんですよ。「え、そう来るか!?」って、逆に驚かされるという……。そういう読めないところが、彼の面白いところだなぁと感じました。
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──今まで竜星さんがご一緒してきた役者さんの中に、岸さんのようなタイプはあまりいなかった感じですか?
竜星:瞬発力もありますし、天然だと分かってもいるんですけど……言っていることに対して一瞬「!?」と思ったりするというところでは、今までにはなかった経験だったかなと思います。
──その突飛なワードセンスが作品の世界観にフィットして、成立させるところが岸さんの凄みだったりするんでしょうか?
竜星:おそらく、門松勝太という主人公と岸優太本人のキャラが近しかったんでしょうね。だからこそ成立したんじゃないかな……と、僕は思っています。
竜星涼と瀬名の親和性
▶︎本記事の画像を全て見る──ちなみに、竜星さんご自身と瀬名拓美の親和性は、どんな感じだったんでしょうか?
竜星:そうですね、イケメンっていうところだけは間違いなくシンクロしていたと思うんですけど……?
──アハハハハ! なるほど(笑)。
竜星:笑われたっていうことは、自分だけがそう思っていたということですね(笑)。でも、瀬名のウィッグを着けるたびに毎回、鏡を見ながら「いやぁ〜、今日イケるかなぁ!? ちょっとキツいかな〜? いやいや、イケるイケる……! (矢本)悠馬ぁ、ちょっとさ今日の俺、大丈夫かな?」「いや、全然ダメだろ。おっさんだもん」みたいなやりとりをしては、「いやいや、よしっ、イケるイケる! 田中圭さんと高良健吾さんは40歳のほうが近いのに学生服を着ているじゃないかッ」って、勇気をもらいながら、瀬名とのシンクロを試みていました。でも、本当にまだこの年で制服を着られる機会をいただけたことが、ありがたかったです。
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──吉岡里帆さん演じる雨宮瞳先生と瀬名の駆け引きというか、やりとりも面白かったです。
竜星:舞台『狐晴明九尾狩』(2021/劇団☆新感線)で共演したときに『Gメン』のオファーが来ていて、僭越ながら「絶対面白くなるから、一緒にやろうよ!」と後押しさせてもらって。でも、実際に現場へ入ったら……段取り、テスト、本番と常にいっさい手を抜くことなく、雨宮先生としてビンタを飛ばしてくれて。
まあ、優太には当てないんですけどね! でも、僕にはいつでも本気で当てに来てくれて。「あれ……? なぜだ?」なんて思ったんですけど、よく考えたら「思いっきり、どんと来い!」って彼女に言っていたんだなって(笑)。ただ、あまりにも全部のビンタに本気を感じたので「何か恨まれることとかしたっけ……?」と考えたりもしたんですけど、瀬名として気持ちよく雨宮先生の愛のムチを受けていました。
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その3人──勝太と瀬名と雨宮先生のシーンもそうですし、G組の面々との芝居でもたびたびゲラが起こるというか、笑いのツボに入ってしまって撮影が終わらない、みたいなこともありました。しまいには「瀬名の顔が面白い」ということになって、そうなるともうどうしようもないなと思ったりもしたんですけど、スタッフさんも含めて笑いの絶えない、終始楽しい現場だったことを強調しておきます。
絶妙なG組メンバーのキャスティング
▶︎本記事の画像を全て見る──承知しました(笑)。そして、梅田真大役の森本慎太郎さんは『ナンバMG5』(2022/フジテレビ系)に続いての小沢としお先生の作品でしたが、ご一緒されてみていかがでしたか?
竜星:まず、見た目からふだんの彼じゃなかったんですけど、本人は楽しそうに梅田を演じていたように……僕にはそう見えましたね。あと、慎太郎くんが一番“G組のグループLINE”をこまめに動かしてくれて。現場が終わったら解散したかのようにパッタリ止まっちゃったんですけど(笑)、そういうところでも気配りの人なのかなぁと思ったりしました。
優太にしても慎太郎にしても、ふだんはもっとキラキラとした場所でパフォーマンスをする顔も持っているわけですけど、本人たちはすごく人間味があって、“愛され力”が高いんですよ。だからこそ、俳優としてもいろいろな作品に呼ばれるんだろうなと感じました。
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──そういったお話を聞くにつれ、G組の5人の配役は絶妙だったんだなと感じずにはいられません。
竜星:そうですね……ただ、瀬名は本当に僕で良かったのかな!? と思う部分もありますけど(笑)。というのは、ここまで面白い方向に振らないほうがよかったのかな、と感じたりもしているので。『Gメン』の取材ではことあるごとに「やっと二枚目キャラのオファーがきました」と言っているんですけど、実際に瀬名役のお話が来たときは、若干の戸惑いもあったんですよね。
でも、瑠東さんから「こういう役を演じている竜星を最近見てないから、やってよ」と、ありがたいお言葉をいただいて。そこまで言われたら男気を見せないとって思ったんですけど……振り返ると、優太が門松勝太としても岸優太本人としても現場でみんなに愛されて、応援したくなるような座長としていてくれたのが大きかったんだなって。みんなから愛のあるいじりをされる主役って、実はなかなかいなかったりするんですよ。そういう意味でも、誰もが心から楽しめていた座組だったんじゃないかなと、改めて感じました。
30代を迎えた竜星の、役者としてのキャリア
▶︎本記事の画像を全て見る──素敵なお話です。では、ここからは竜星さん自身の話を掘っていきます。役者としてのキャリアも丸13年になりましたが、30代に入ってお芝居との向き合い方が変わった……といったようなことはありますか?
竜星:昔よりもロジカルになってきた部分はあるかもしれないですね。ロジカルでありながら、目的とする表現へ向かう途中に感情を乗せることを大事にしている気がします。ト書きでいろいろと感情面が書かれていたりもしますけど、その場に立ってみたらちょっと感情のニュアンスが違っていたりするかもしれないですし、一緒に芝居をする相手の方の温度感に合わせた感情になったりもするじゃないですか。
瑠東さんもよく言っていますけど、現場は“生もの”なんですよね。自分も相手の方もその日によってコンディションが変化するわけですから、共鳴し合うこともあれば、合わせているつもりなのに不協和音になってしまうこともあって。芝居を生業にしている者として、それを言葉にするのはプロフェッショナルじゃないのかもしれないですけど、そういう微々たる変化をも意識しながら、ロジックとエモーションの配分を変えていければと思っていて。
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──いかに状況を素速く判断して、適応できるかという感じでしょうか?
竜星:そうですね、いつでもどこでも自分のやり方を貫き通すのではなくて、いかにアプローチを素速く切り替えていくかが求められていると思うので。ただ、あらかじめ「このシーンでは、こういう感情になる」というふうに目的化したくはないんですよね。瞬発的に対応したことによって、たまたまついてきた感情こそを大事にしようと。最近はそういったことを、自分に言い聞かせています。
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──『Gメン』に伊達薫役で出演している高良健吾さんも以前、「30歳前後で芝居の捉え方が変わった」と話していましたが、年齢的なタイミングもあったりするのでしょうか?
竜星:そこは人によりけりだと思いますし、ロジカルにしても感覚的にしても、その人にとってベストなアプローチで芝居をするのが最適解なんだろうな──と僕は捉えているんですよね。お芝居を10年ちょっと続けてきて、自分の中でロジックを成立させつつ、その延長線上にある出来事に一つひとつ反応していくことによって、自分の理想とする表現に近づいていけるような気がしていて。舞台を経験したことで、その感覚がより強くなったかもしれないですね。
──『Gメン』のようなエンターテインメント性の高い作品だと、竜星さん的にはどういったアプローチになるのでしょうか?
竜星:瀬名で言うと、自分に与えられたキャラクターをいかに肉づけしていくかを重視したかもしれないですね。ほかのキャラも相当強烈でしたし、みんな結構欲望に忠実なお芝居をしていた現場で、「あとはうまく瑠東さんに編集で調理してもらおう」みたいな感じでもあったので(笑)、俳優部としては現場でやり切った感がありました。……と僕は思っているんですけど、みんなはどうだったんだろう!?
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──イイ感じに振り切れていて、観ている側としては心底楽しめましたよ!
竜星:そうやって同じ熱量で楽しんでいただけたと聞くと、やりきってよかった〜って思います。実は『Gメン』のような作品は塩梅が難しくて、狙いすぎても白けてしまう可能性があるし、かと言ってスカしても何か温度感が微妙になってしまうかもしれないので──。僕自身が出ているシーンや関わっているところに関しては、俯瞰して黙々と観てしまったところがあるんですけど、優太と先輩方のシーンだったり自分がいないところのG組メンバーのやりとりは笑いながら観ることができたので、きっと結果的にはOKだったんだろう……っていうことにしちゃいましょう(笑)。
(撮影=渡会春加/取材・文=平田真人)
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(C)2023「Gメン」製作委員会 (C)小沢としお(秋田書店)2015