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2023年09月07日

「こっち向いてよ向井くん」第9話:白でも黒でもなく、グレーのままでいる勇気が世界を広げる

「こっち向いてよ向井くん」第9話:白でも黒でもなく、グレーのままでいる勇気が世界を広げる

ねむようこの同名漫画を原作とした赤楚衛二主演のドラマ「こっち向いてよ向井くん」(日本テレビ系)が2023年7月12日よりスタート。本作はGP帯連続ドラマ初主演となる赤楚が、雰囲気も性格も良く、仕事もできるのに10年間彼女がいない30代の男性を演じるラブコメディだ。共演には、波瑠、生田絵梨花、藤原さくら、岡山天音らが名を連ねる。

本記事では、第9話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「こっち向いてよ向井くん」第9話レビュー

素の自分を見せることに躊躇いがある洸稀(波瑠)が、流れで向井くん(赤楚衛二)とカラオケでオールし、一緒に朝ごはんを食べることになった「こっち向いてよ向井くん」第8話。あの日から、向井くんは洸稀を変に意識し始めていた。

向井くんと洸稀の関係はいわば、性別の垣根を超えた飲み友達。恋愛における面倒な駆け引きが必要ないからこそお互い気楽でいられるのであって、もし少しでも一線を超えてしまったらバランスが崩れ、今みたいに会えなくなってしまうかもしれない。逆に、一線を超えずに飲み友達のままでいられれば、終わりが来ることもない……とも言える。

そんな中、麻美(藤原さくら)と元気(岡山天音)の離婚が成立。なぜか麻美が一人暮らしを始め、書類上は赤の他人である元気が彼女の実家に居座ることになった。その理由を公子(財前直見)は「麻美は家族だから離れてても繋がってるけど、元気くんとはこうやって一緒に住んでないとホントにお別れだもん」と語る。

人と人との関係は、“名前”がなくなったら終わりなのか。それが、今回の第9話で向井くんたちに課せられたテーマだ。

美和子(生田絵梨花)が意図せず元気の店に現れ、向井くんや洸稀と4人でディベートのような会話を繰り広げる場面はとても見応えがあった。30代前半の彼らは、いわば狭間の世代。「男と女は基本的に恋愛で結びつくもの」「恋愛の行き着く先は結婚か別れの二択」「結婚や出産が女の幸せ」「結婚したら夫が大黒柱となって家族を養う」等々、旧世代の価値観と、「いや、そうとも限らない」と言い切れる次世代の価値観に挟まれ、迷子になりつつある。

だから、麻美と元気の離婚に対する意見もバラバラ。驚いたのは、麻美が婚姻関係を解消したがった理由を元気が全くもって理解していなかったことだ。元気は甲斐性がない癖に、夫っぽくする自分に麻美が愛想を尽かしたと思っている。だけど、そうじゃない。麻美はただ元気と一緒にいたかっただけなのに、結婚した途端に面倒な手続きが増えたり、元気が世間の求める立派な夫像をなぞり始めたことにモヤついたのだ。

だから、元気と離れることを望んでいたわけじゃない。そのことにピンと来ているのが、4人の中では洸稀と美和子だけだった。必ずしもそうとは言えないけれど、比較的に女性の方が麻美の気持ちは理解しやすいのかもしれない。

やっぱり、女性は男性よりも後に社会へ進出したから。男性に守られるべき存在として良くも悪くも家の中に閉じ込められていた時代があり、そこから女性は様々な権利を獲得して広い世界に飛び出していった。だけど、まだまだ旧世代の価値観が残る中で、女性だからという理由で制限されることも多い。普段からそういう違和感に直面しているから、麻美が言わんとすることが何となく分かる。

もちろん、麻美にも言葉足らずな部分はあって、それでも元気に全てを察しろとは言えない。でもどうしたって埋められない男女の違いみたいなものが見えてしまったから、麻美は根を上げてしまったのではないだろうか。

元気のことが好きだから、夫という役割に囚われずにこれまでと変わらず伸び伸びといてほしい。だけど、一方で「役割を生きない方がずっと難しい」という向井くんの意見も理解できる気がする。私たち人間は役割を与えられて初めていきいきとする部分が少なからずあって、何者でもない自分でいるのは意外と辛い。「あなたは〇〇ですよ、だからこれをやってくださいね」と言われたことに従うのは息苦しく感じることもあるが、基本は楽だ。

でも、元気は何も楽をしたかったわけじゃない。元気が店を畳むと聞いて飛んできた麻美に「私がいてもいなくても元気は元気の人生を幸せそうに生きてほしい」と言われ、彼は無理だと答える。一人で好き勝手に生きるのではなく、麻美を笑顔にしたい。元気の人生に麻美が現れてから、いつしかそれが自分の幸せになっていた。だから、できることは何でもしてあげたかったのであって、結婚したからではなく、元気は元気の意志で変わったのだ。そういう意味では、麻美の方が結婚という制度に囚われていたのかもしれない。

二人は最終的に再婚ではなく、今はただ一緒にいることを選んだ。「俺はさ、まみんをずっと好きでいればいいんでしょ?」という元気の台詞が印象的だ。夫婦とか、家族とかいう名前のある関係に甘えて相手をないがしろにする人もいる中で、名前がなくとも相手をずっと大事にしたいと思える関係は尊い。子供のこと、財産のこと。色々と考えた上で再婚の道を選ぶ未来もあるかもしれないが、どちらにしても互いを思い合える2人ならきっと大丈夫だろう。

人と人との関係は、“名前”がなくなったら終わりなのか。その問いに、NOを突きつけた本作。向井くんと美和子も恋愛では上手く結びつかなかったが、現状を報告して互いを鼓舞し合える、友達とはまた言い難い名前のない関係に落ち着いた。私たちはどうしても白か黒かはっきりさせないと気が済まないけど、白でも黒でもない、グレーのままでいる勇気を持てたら、もっと世界は広がるのかもしれない。

綺麗な虹を見たら、互いの顔が浮かぶようになった向井くんと洸稀はどんな選択をするのだろう。次週はついに最終回だ。2人が出す答えに注目したい。

(文:苫とり子)

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