『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』“5つ”の見どころ: 獠と香の最終章がついに始まる!
2023年9月8日(金)より公開されている『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』。
凄腕のスイーパー(始末屋)・冴羽獠とパートナー・槇村香の活躍を描いた北条司原作の人気漫画にして、大ヒットアニメ「シティーハンター」。
本作は2019年公開の『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』に続く同作の完全新作であり、テレビシリーズ初代監督・こだま兼嗣が総監督を務め、神谷明・伊倉一恵をはじめとするオリジナルキャストが集結している。
本記事では、この新作劇場版の見どころを、作品を愛するファンの目線で紐解いていきたい。
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【インタビュー】<冴羽獠がずっと「いる」>『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』神谷明インタビュー
1 “エンジェルダスト”をめぐる冴羽獠のハードな戦い
筆者は「シティーハンター」の原作及びアニメに慣れ親しんできた世代である。それだけに、劇場版のニュースを聞いて「あの神アニメの新作がまた見られる!」と飛び上がって喜んだのだが、その後、すぐに「ついに、これをやるのか……」と覚悟に近いざわめきを覚えてしまった。
理由は、タイトルに記された“エンジェルダスト”の文字だ。
原作を読んでいるファンの方々ならお分かりだろう。“エンジェルダスト”は、「シティーハンター」における、いわば闇を司るキーワード。人間の筋力を強化させるとともに体や心を蝕んでしまうテクノロジー(原作では薬物)の呼び名であり、その恐ろしさを身をもって知り、切っても切れぬ縁を持つ一人が作品の主人公・冴羽獠だ。
これをタイトルに記す以上、獠がエンジェルダストがもたらす災いや自身の過去と向き合う厳しい戦いになるのだろうと予想。そして、いざ蓋をあけてみれば、思っていた以上にハードでシリアスなドラマが描かれていた。
始まりはいつもどおり、掲示板の「XYZ」。獠と香は動画制作者の美女・アンジーから猫探しを頼まれる。毎度のごとくアンジーにスケベ心を抱く獠だが、実はアンジーもまたエンジェルダスト、そして獠にただならぬ縁のある人物だった。
物語の中では、エンジェルダストとともに「赤いペガサス」や「ユニオン・テオーペ」など作品の重要なキーワードが次々現れて、香の兄・槇村秀幸を死に追いやったあの悲劇もプレイバックする。そして、獠と香はエンジェルダストをめぐる暗殺者たちの戦いの中に身を投じていく。
超一流のスナイパーで、作品を通してずっと無敵感が強かった獠。しかし、本作の終盤では非常に過酷な戦いを強いられる。彼がここまで苦戦する場面はなかなかないのでは……と思わせる白熱の戦いのシーンは、まさに本作の見どころの一つといえるだろう。
美女と見ればすぐにはしゃいで追っかけ回すモッコリ大将。獠のコミカルでギャグ満載な姿に私たちはつい騙されがちだ。しかし、女好きでスケベなところは彼の一面に過ぎない。ふざけてばかりいるその奥に誰よりも強靭な精神を宿し、自分を頼ってくる依頼人や大切なものを全力で守る優しさを併せ持つ。それこそが、冴羽獠という男のたまらない魅力なのだ。
本作を観たファンは、傷を負い、悲しい選択を迫られながらも戦い抜いていく獠の姿から、彼の強さ、ワイルドでタフな“らしさ”をきっと改めて確認できるだろう。
2 香も活躍!彼女はいつだって愛すべきSUPER GIRL
この劇場版では、獠のパートナー・槇村香の活躍も見逃せない。
非業の死を遂げた兄・槇村秀幸の後を継いで獠の相棒となった香。アニメ放送時は、まだまだおしとやかなヒロインが多い時代であり、それだけに、ボーイッシュで媚びない彼女のキャラクターは非常に新鮮だった。同性ファンからの支持も高かった香。筆者にとっても彼女はいまだに大好きなヒロインの一人だ。
女性を追いかける獠に怒りの天誅ハンマーを食らわせたり劇中で男性と勘違いされることが多かったり、さっぱりしていい意味での男前っぷりも目立つ香。とはいえ、気が強いだけでは決してない、繊細で深い優しさを持ちあわせた女性であり、原作やアニメでも香の温かさが依頼人の心を救ったことが幾度となくあった。
本作では、アンジーをはじめとする女性たちにスケベ心を燃やす獠を成敗するべく、香がハンマーを振りかざしたり得意のトラップを駆使したりするおなじみの展開はもちろんのこと、前作で披露したウェディングドレス姿とはまた違う趣のあるキュートな出で立ちの彼女も見ることができる。
さらに後半、香がある種の大暴走を巻き起こすシーンも必見だ。
そして、ハードでつらい展開も多いドラマの中で、一筋の救いとなったのもまた香の存在。彼女の優しさが依頼人のアンジーの心に安らぎをもたらし、つらい戦いに身を投じる獠の支えになったように感じられた。
活発でバイタリティにあふれる一方で、誰よりも愛情深く思いやりにあふれる香。昔と変わらない優しさを持つ彼女がこの映画の中にいてくれたことが、とても尊く大切なことであったように思う。
そう、香はいつだって、獠や私たちにとっての愛すべきSUPER GIRLなのだ。
3 海坊主&美樹に冴子、豪華ゲストも登場。まさかのあのキャラも!
本作では「シティーハンター」のおなじみのキャラクターたち、ファルコンこと海坊主に美樹、冴子らも登場。海坊主&美樹のカップルが前作に引き続き獠たちに協力する展開が、頼もしく嬉しかった。
劇中でお約束のゆでダコぶりも見せてくれた海坊主。彼の強さや不器用な優しさが、香とはまた違う形で獠の支えになっているといえる。
レギュラー陣の声をオリジナル・キャストが続投し、新キャラクターたちもアンジー役の沢城みゆきをはじめ、暗殺者のピラルクーを関智一、同じく暗殺者のエスパーダを木村昴が演じ、獠の育ての親である海原神役を堀内賢雄がつとめ、豪華俳優が揃った。
ゲスト声優たちの中で、筆者が特に印象的だったのは、やはりアンジーを演じた沢城みゆき。心にやりきれないものを抱えた女性の心情がその演技からときに激しく、時に悲しく痛いほどに伝わってきた。
沢城は2019年に公開されたフランス製作の実写版『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』にてカオリの吹き替えを担当しており、同作と今回の出演をあわせもって「シティーハンター」と関わりが深い声優の一人になったと言っていいのではないだろうか。
そして、これまた前作に続いての「キャッツ・アイ」の来生三姉妹の登場や、「ルパン三世」からのルパン三世と次元大介と「タマ&フレンズ ~うちのタマ知りませんか?~」からの猫のタマが現れるサプライズにもワクワクさせられた。
タマは、「シティーハンター」のアニメが放送されていた頃ファンシー文具のキャラクターとして人気を集めていたので(実は、筆者もタマのイラスト入りバッグを持っていた)、懐かしさを覚えるファンの方も多いのではないだろうか。
なお、ルパン&次元の登場は、2023年1月にPrime Videoで配信された「ルパン三世VSキャッツ・アイ」が本作と同じ世界軸であるのを物語っているともとれる。こうなると、冴羽獠とルパン三世が対決するスピンオフなどもいつかどこかで見てみたい。
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4 TM NETWORKが歌うOP&EDがついに実現
「シティーハンター」が再び映画化されると聞いたとき、正直EDは「Get Wild」以外考えられないと思った筆者である。そんなファンの目に飛び込んできたのは、EDが引き続き「Get Wild」になるだけでなく、OPもTM NETWORKが担当するという朗報だった。
映画が始まってすぐに流れるOP曲「Whatever Comes」。初めて耳にしたとき、筆者は「これこれ!」という気持ちがただただ高まった。リズミカルにメロディアスに紡がれる非常にTM NETWORKらしいサウンドに「シティーハンター」が始まる期待感を覚え、改めて同グループの楽曲が作品の世界観にぴったりであると確信できた。
本作のプレス発表イベントで、「念願のオープニングとエンディングを両方ともTM NETWORKでできるのが、最高です」と小室哲哉氏が語っていたのを聞いて、今更ながらTVアニメで両方はやっていなかったことに驚いてしまった筆者である。
改めて振り返ると、「シティーハンター」関連のTM NETWORKの楽曲として知られる「Get Wild」と「STILL LOVE HER (失われた風景)」はいずれもED。他に、OPに使われた小室哲哉のソロ名義の「RUNNING TO HORIZON」などもあるが、TM NETWORK名義の楽曲がOPになるのは今回が初であり、長い年月を経てついに実現した。
「シティーハンター」とTM NETWORK。アニメとアーティストがここまでかっちりとハマるケースは決して多数あるわけではないと思われ、それだけに同グループの楽曲がOPとEDを彩ることがファンとしてただただ嬉しい。
映画を観る方々は、ぜひ小室みつ子作詞、小室哲哉作曲のサウンドが流れる瞬間を楽しみにしてほしいと思う。
5 最終章か、序章なのか。最大の敵との対峙
「最強の敵と最後の戦いへ」と銘打たれ、「シティーハンター」の最終章に突入したことを告げている本作。プレス発表イベントで獠役の神谷明氏は「これで終わりかなというつもりで演じたけれど、“序章”なのかなという印象もある」のように語っていた。筆者も作品を見終えてラストに「Get Wild」が聴こえてきたときに、これは“Begins(始まる)”なのだというのを強く感じた。
本作には、原作における獠の実質的な最大の敵が登場する。獠を兵士として育てた人物である海原神だ。彼もまた、エンジェルダストをめぐる戦いに関わってくる。
詳しくは映画を観て確かめてほしいので詳細は避けるが、一つ言えるのは、本作をもってついに獠が海原と対峙するときを迎えたということ。アンジーとの出会いやエンジェルダストに導かれて、獠は追憶の地平線へとたどりついてしまったのかもしれない。
最終章であり、序章のようにも感じられた本作。それだけに、これから先、獠と香がどうなっていくのだろうか……と思いを馳せ、彼らの未来に希望があることを祈らずにいられなかった。
できることなら、ファンとしてこの続き、獠と香がたどりつく未来を見届けたく、その日が来ることを期待してやまない。
さいごに――獠と香の絆は消えない
『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』を語るうえで、これまで上げてきた見どころとは別に、最後に、いつも私たちファンをやきもきさせる獠と香の関係、絆について触れておきたい。
あくまで筆者の感想ではあるが、二人を繋ぐかけがえない結びつきは今回の劇場版でも変わらず、そしてこの先も消えないに違いないと感じた。
美女を追っかける獠とそんな獠に天誅を食らわす香。ずっとこれを続けていて、お互いへの想いを聞かれても認めようとしないものだから、彼らの愛情はいつでもちょっとだけわかりにくい。それでも、ふとした瞬間に他の誰かが入り込む隙間などない深い絆で結ばれていることがわかる。本作でも、香の言葉や二人のやりとりで、自然にそれが伝わってきた。
今回の劇場版の先に何かが待ち受けているとしたら、それは決して楽ではない標識のない道であり、さらに愛憎入り交じる物語が紡がれると想像する。ただ、どんな明日が来ようと、獠と香は大丈夫なはず。お互いそっけない態度をとりながらも守り続けている絆があるかぎり、彼らはきっと強くなれる。
ついに始まる「シティーハンター」の最終章。獠と香がいつにも増して活躍し絆を感じられる物語が、作品を愛する多くの人たちに元に届いてくれたらと願っている。絶対観てね!
(文:田下愛)
【インタビュー】<冴羽獠がずっと「いる」>『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』神谷明インタビュー
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(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会