<冴羽獠がずっと「いる」>『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』神谷明インタビュー
槇村香は「絶大な信頼感を持った相棒」
──今作では槇村秀幸役の田中秀幸さんも復帰されて、ファンとしてそれも嬉しかったです。収録は別の部屋だったそうですね。
神谷:最初に顔合わせはしましたから、「やあやあ元気?」みたいな感じでおしゃべりはさせていただきました。秀くんとは『ドカベン』のときからずっと一緒にやってきたし、『キン肉マン』のテリーマンも演じてもらっていて。久しぶりに会ったんですけど懐かしくてね。槇村の声って包みこむような優しさがあって、秀くんそのものという感じなんです。たぶん槇村の「秀幸」っていう下の名前は、田中秀幸さんから取ったと思うんですよね。なんだか秀くんは会うと幸せな気分にさせてくれる方なんですよね。
──神谷さんがおっしゃるように田中さんの声には包容力がありますよね。とても柔らかくて優しい感じがします。
神谷:それに上手いしね。海坊主役の玄田さんもそうなんですけど、長いこと一緒に仕事をできているっていうことが嬉しいです。
──本作の中で海坊主と美樹が獠と香の関係に言及する場面があります。獠に一番近い神谷さんからふたりの関係はどのように見えているのでしょうか。
神谷:作品の中でもずいぶん描かれてはいるんですけど、いまの獠ちゃんっていうのは「もっこり!」とか言っているときも全部香がいるんですよね。香がいるからこその獠ちゃんのもっこりシーンだと思うし、闘っているときでも香がちゃんと後ろにいてくれる。もしくは香がいるから自分が傷ついたり死んだりすることはできない。やっぱり香との関係性っていうのは、作品を観ていて若干曖昧さを感じるかもしれませんけれども、おそらく獠としても絶大な信頼感を持った相棒だと思っていますね。
だから逆に言うと、きっかけさえあればもっと親しい関係になる。でもあのギリギリの線をお互い楽しんでいると思いますね。今回もお台場の観覧車に乗ってもっこりというシーンがあって、ここなら絶対来ないよなと思っていたらハンマーを持って来ましたからね(笑)。
──びっくりしました。観覧車の外から来ましたもんね(笑)。
神谷:期待を裏切らない間柄でもあるというか、そういうところがあるから獠ちゃんも遊べるっていうのかなあ……。間一髪でそれ以上いったことがないですから。だからもっこりシーンがあってもファンの方は獠ちゃんのことを大好きでいてくれるんじゃないでしょうか。
──今回の収録にあたって北条(司)先生とお話しになったり何かやり取りされたりはありましたか?
神谷:去年の12月にプライベートでもお目にかかってるんですけど、作品についての話は全然なかったですね。
普段から「北条先生」ではなく「北条さん」と呼んでお話しさせてもらっているんですけど、意外と北条さんとはお互いにテレビシリーズの頃から何も言わないんですよ。対談とかはしたんですけど、前作をやるにあたってもあまりお話ししませんでしたし。でも前作が大ヒットしたとき、北条さんとこだま(兼嗣)さんが素晴らしい笑顔をされていたんです。それがいまでも忘れられないですね、「ああ良かった」って。
──近すぎて、というのもあると思いますが信頼関係がすごいですね。
神谷:こだま総監督もそう。何も言わないですよ。言わずもがなというのかな、その信頼関係っていうのがそれぞれにありますね。
今回監督を務められた竹内一義さんも素晴らしい監督です。こだま総監督は作品全体を俯瞰で眺める役で、本編全体は今回竹内監督がやってくださったんですけど素晴らしかったです。
──前作も本作もテレビシリーズのテンションと新しいものの配合といいますか、バランスの良さに驚かされました。
神谷:僕の中ではイメージがずっと保たれているんですけど、本当にそうかといわれるとちょっと不安になるじゃないですか。でも前回も今回も台本を見た段階でポンと入っていけたのは、脚本を書かれたむとうやすゆきさんと加藤陽一さんの“シティーハンター大好き”っていう思いがあったから安心して飛び込めたのかなって思います。
テレビアニメシリーズは1987年に始まりましたけど、恵まれていますよね。だって「やりたい」と思っても36年後にできないですよ。だからどちらかというと、作っていただけたことが嬉しいですし。これが『シティーハンター』が持っている素晴らしい力だろうなと思います。
──ファンとしても同じ思いです。前作もそうですし、こうやって続編まで作っていただけたことが本当に嬉しいです。
神谷:アニメーションは総合芸術ですから。大成功を収めて、作ってくださったスタッフのみなさんと喜びを分かち合いたいですね。
──それでは最後に、シティーハンターファンへ向けてメッセージをいただけますか。
神谷:前作に引き続き、今回もみなさんの期待に違わぬ作品を作ることができたと思います。でも大元をたどれば、みなさんの応援があったからこそなんです。応援してくださるみなさんが観てくれたからこそ今回があったわけですから。そして今回も、その期待に違わぬ作品を作ってくれたからこそ僕はここに居るとも思っています。ぜひこれからも『シティーハンター』をよろしくお願いします!
(撮影・取材・文=葦見川和哉)
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(C)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会