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2023年09月13日

「ばらかもん」10話:半田(杉野遥亮)が進むのは、誰も通ったことのない道だ

「ばらかもん」10話:半田(杉野遥亮)が進むのは、誰も通ったことのない道だ

杉野遥亮主演の“水10”ドラマ「ばらかもん」が2023年7月12日放送スタート。GP帯連ドラ初主演となる杉野遥亮が、長崎・五島列島で島民たちと交流し心を開いていく若き書道家・半田清舟を演じる。同名原作漫画も大人気で、いかにハートフルな世界観を体現できるか注目されている。

本記事では、第10話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「ばらかもん」10話レビュー

書道家をやめる、と宣言し、島で書道教室を開くことにした半田(杉野遥亮)。新しい一歩を踏み出した彼の行く先は、これで順風満帆……とはいかない。人数の限られた村で、月謝1万円の書道教室にどれだけの人が集まるか。教室の設立費用や、月々にかかる経費はいくらになるか。半田ひとりでそれら諸々が整うはずもなかった。

「後ろ向きな決断じゃない」「俺は、ちゃんとこいつらの先生になって、村に恩返ししたいんだ」と大見得を切ったものもの、生徒集めの段階で行き詰まる半田。結局、ケンカ別れのようになった川藤(中尾明慶)に頼ることになる。

画商としてはもちろん、一人の友人としても半田を支えてきた川藤。半田が書道家をやめ、島で書道教室を開くと宣言したときの衝撃を、彼は受け止めきれずにいた。

半田を東京へ無理やり連れ戻す覚悟で乗り込んだ川藤だったが、やがて、自ら厳しい道を進もうとする半田の姿にほだされる。半田らしさを二の次に、書道教室らしい教室を目指そうとする半田に、すかさず彼は言う。

「お前、なに良い先生になろうとしてんだよ」

「お前の道じゃないと、俺はついていかないぞ」

書道家としての半田は、基礎を重んじ、綺麗で型に嵌まった字を書こうとしていた。お手本に倣うのが、もっとも良い道だと信じ込んでいたのだ。

けれど、島にやってきてからの半田は、どんどんそのセオリーを崩していく。厳密にいえば、そこに暮らす人々のおかげで崩れざるを得なかったのだが……。彼の書く字は、どんどん“らしく”なっていった。

川藤の一声で、半田はまたもや、見失いかけていた自分を取り戻す。彼が歩こうとしている道は、厳しい道だ。周りから見れば、とくに川藤から見れば、ただ「逃げて遠回り」しているだけに見えるかもしれない。それでも、それは、半田が選んだ道……「誰も通ったことのない道」なのだ。

島の若者たちも、それぞれ、まだ見えない将来に向かって一歩を踏み出そうとしている。美和(豊嶋花)は実家の酒店を継ぐこと、珠子(近藤華)は漫画家になること、そして浩志(綱啓永)は、料理人になること。

未来への確信ではなく、覚悟を持って前に進むことが、どれほど怖いことか。それでも彼らは、まだ知らない領域に向かっていく。自分なりの道をつくり、自分だけの人生を生きるため。

人との出会いが、人生に影響を与える。見えなかった将来が、ほんの少しだけ掴めたように感じる。迷って、逃げて、また前を向く。きっと人生は、その繰り返しだ。このドラマは、挫折や失敗を土台にして立ち上がる術と、困ったときに助けてくれる“人”のあたたかさを教えてくれる。

最終回、彼らが向かった先では、どんな景色が見えるだろう。

(文:北村有)

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