映画コラム

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2023年10月21日

<中島健人の新境地>『おまえの罪を自白しろ』スクリーンから目が離せない“3つ”のポイント

<中島健人の新境地>『おまえの罪を自白しろ』スクリーンから目が離せない“3つ”のポイント

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2023年10月20(金)から公開された『おまえの罪を自白しろ』

主演を務めたのは、中島健人。『ニセコイ』(2018)や『未成年だけどコドモじゃない』(2017)などこれまでラブコメ作品への主演が多かった中島にとって、今回が初の本格サスペンス映画主演となる。

本記事では、中島の演技について触れながら『おまえの罪を自白しろ』作品全体の魅力を紹介していきたい。

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1:人間ドラマに翻弄されたストーリー



中島が演じたのは、政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司。建築会社を設立するも倒産し、政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の父・宇田清治郎(堤 真一)の秘書として煮え切らない日々を送っていた。

ある日、一家の長女・麻由美(池田エライザ)の幼い娘・柚葉が誘拐され、犯人からは「明日午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という清治郎への脅迫文が届く。

誘拐犯から柚葉を救うため、晄司たちが真相究明へと動いていくストーリーだ。

印象的だったのは、「明日午後5時まで」というタイムリミット付きであること。そして犯人の要求は、身代金ではなく「罪の自白」であること。


事件の犯人を追いながら、警察は清治郎が犯した罪についても追いかける。既にいくつか疑惑がある清治郎にとって、政治と金が絡む罪を犯したのはほぼ確実である。

だがもし清治郎が正直に自白すれば、逮捕される上に家族も政界から追い出されてしまう可能性がある。柚葉を救出するためとはいえ、自白はリスクのある行為であった。埼玉県議である宇田家の長男・揚一朗(中島 歩)も柚葉を救うとはいえ躊躇している様子だ。


そして清治郎の自白には、政治家たちも注目している。彼の発言一つで立場が危うくなる人物もいれば、むしろ有利になる人物もいる。清治郎を救うか、突き放すかの駆け引きが水面下で行われているのだった。

誘拐犯の捜査だけでなく、清治郎の自白をめぐる政界内の抗争などいくつもの要素が複雑に絡み合っているのに加え、「明日午後5時まで」というタイムリミット付きなのでより緊張感が漂っていた。言動一つ見逃せない、非常に見応えのある物語だ。


そして注目してほしいポイントは、孫娘・柚葉が誘拐されたことによる清治郎の変化だ。誘拐直後は動揺している姿をあまり表立って見せず、感情を押し殺した様子の清治郎だったが、とある場面で大きく表情を変える。

「冷徹な政治家」から「孫を愛する祖父」へと大きく変わる堤 真一の迫真の演技は胸を打つものがあったので、ぜひスクリーンで観てほしい。

2:中島健人の「葛藤」に注目



中島健人の役者に対する覚悟が固まったように感じたのが、2022年に公開された映画『ラーゲリより愛を込めて』で足が不自由な抑留者・新谷健雄役を務めたときである。演技を観ていてもそうだが、役作りのために坊主にするなど意識からも彼の変化を感じることができた。 

そんな『ラーゲリより愛を込めて』から1年後、「自分にとって必要なフェーズであり、飛び込んでみたかった世界観」(※)だと意気込みながら主演としてスクリーンに戻る。


本作で中島が演じた晄司は、新米秘書から政界に「上手くハマっていく」。

柚葉を救うには清治郎は犯人の要求通りに自白するしかない。だが、清治郎や揚一朗は自分たちの政治生命を気にして覚悟が決まらない。

しかし、晄司は違う。つい最近議員秘書として政界に足を踏み入れた晄司は、まだ政界の色に染まりきっておらず、父が犯した罪についても“仕方ないこと”と割り切れていなかった。父に憤りを感じつつも、柚葉救出のためにあらゆる手段を模索する様子からは、ベテラン秘書たちの中でただ1人「若さ」が見えた。


大人ではあるけれど、現実を諦めた大人になりきれていなくて、もがいている晄司の様子は、まさにバラエティ番組で「20代で培ってきたものが30代で活かされる」「未完成ではない自分を見せていかなければならない」と今後のキャリアについて悩んでいた中島自身と通ずるところがある。

プロデューサーの石塚慶生氏も「(中島健人が)これから30代を迎え、社会の中でさらにいろいろなことを抱えて生きていかないとならない大人として、晄司が経験した、人生ときには清濁併せ呑む必要があること、そしてそれらを昇華し乗り越えて生きていくことを、彼自身にも重ね合わせて演じてくれているのではないかと思います」(※)と話す。


父が保身のために計画通りの行動を取らなかったときには躊躇なく激しく怒ったり、父を陥れようとした官僚に対しては、相手の居場所を突き止めて乗り込み、壁に押し付けて詰め寄ったりした。こうした怒りの描写は、彼自身が持つ「アイドル」というパブリックイメージに反するのも相まって、新鮮に映るはずだ。俳優として確実にステップアップしていると感じた場面である。

そして新米秘書だった晄司が政治家として「ハマり始めた」と感じたのは、清治郎たちと覇権争いをしている政党の幹事長・木美塚壮助(角野卓造)の元へと訪れる場面だ。最初は敵視していたが、木美塚に政治的なメリットを見出すと、途端に口調や態度を変えていく。


損得勘定なしに感情をぶつけていた晄司にとって、敵側である相手に擦り寄る行為は、以前だったらあり得なかっただろう。相手の懐にさっと入る器用さは現実の中島とリンクしているところがあり、「上手い」と感じた描写であった。

3:豪華キャストとの掛け合い


本作は、出演者が大御所揃いであるところも見どころだ。堤 真一をはじめ、山崎育三郎・尾野真千子・金田明夫・ 角野卓造・升毅・平泉 成とそうそうたる顔ぶれが並ぶ。画面に映った時に存在感があり、政治家として説得力のあるキャスティングであった。

こうした面々の中、中島は他の役者に埋もれることなく堂々と演じていた。もちろんアイドルとしてのキラキラしたオーラは消えていたが、「若さ」や「誠実さ」など彼のキャラクターを存分に活かし、キャリアの長い先輩たちに対しても臆することなく向き合っていた。

これは、2023年7月クールに放送されたドラマ「シッコウ!!~犬と私と執行官~」(テレビ朝日系)で織田裕二と共演した際にも感じたことである。「中島健人」としての軸を持ちつつ、他の役者と掛け合わさることによって演じ方を変化させていく。


今回初共演の堤とは、親子でありながら「国会議員と秘書」という複雑な関係でもあった。政治家として尊敬したり、父親として失望したり。堤との共演で「遠慮しないこと」を意識したと話していた通り、全力で感情をさらけ出していたのが印象的だ。

そんな晄司に清治郎も、時に国会議員、時に父親として応じていく。親子であるが、仕事上でのパートナーでもある2人。馴れ合いすぎない距離の取り方が絶妙であった。

20代ラストのターニングポイントとなる作品


中島は歳を重ねるたびに、その年齢だからこその魅力を作品でも表現していると感じる。

10代後半から20代前半は学生役をフレッシュに演じることが多かった。20代半ばからは、徐々に大人になっていく新米警察役を演じるなど、彼自身の成長とともに任される役柄も変わってきた。

そして20代最後を締めくくる作品が、今回の『おまえの罪を自白しろ』である。本作は、間違いなく今後のキャリアのターニングポイントとなるだろう。これまでにない、彼の新しい一面を多く目にすることができた。

今後はどんな役と出会い、どんな役者になっていくのか。30代の中島も、好きなことをのびのびと続けてほしい。再びスクリーンで彼の演技を観られる日が楽しみだ。

※参考:『おまえの罪を自白しろ』プレスシート

(文:きどみ)

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(C)2023『おまえの罪を自白しろ』製作委員会

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