(C) 2023 20th Century Studios
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俳優・映画人コラム

REGULAR

2023年10月24日

ハリウッドデビューから20年、渡辺謙の現在地。【『ザ・クリエイター/創造者』配信中】

ハリウッドデビューから20年、渡辺謙の現在地。【『ザ・クリエイター/創造者』配信中】


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『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズ監督による完全オリジナルSF叙事詩『ザ・クリエイター/創造者』が10月20日(金)より公開されています。

その中で重要な役どころを演じるのが、ハリウッド作品の出演もすっかりおなじみにとなった渡辺謙

『ラスト サムライ』でハリウッドデビューを飾ってから2023年で20年目になります。

映画は?

(C) 2023 20th Century Studios

映画は“モンスターバース”の第一作『GODZILLA ゴジラ』やスター・ウォーズシリーズ初の公式スピンオフ『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を手掛けたギャレス・エドワーズ監督の最新作『ザ・クリエイター/創造者』

ギャレス・エドワーズ監督は2010年の超低予算SF『モンスターズ 地球外生命体』で長編デビュー。最少人数のロケと自宅のPCでの特殊効果を駆使して仕上げた本作で高い評価を受け、その後『GODZILLA ゴジラ』の監督に抜擢されます。



そんなギャレス・エドワーズ監督が、久しぶりにオリジナル脚本によるSFエピックを創り上げました。

今のハリウッドにおいて、原作ものやシリーズものではないオリジナルSFを創り上げるのはかなりの難問だと思われますが、ギャレス・エドワーズ監督はやってのけました。

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主演は『TNENT テネット』のジョン・デヴィッド・ワシントン。さらに渡辺謙、ジェンマ・チェン、マデリン・ユナ・ヴォイルズ、アリソン・ジャネイなど国際色豊かなキャストが揃いました。

LAでのロケに加えてアジア各地でロケを行い、日本でも撮影が行われています。

物語は近未来、AIによってLAが核攻撃と受けた後の混沌とした世界、西側諸国は対AI戦争を展開し大型兵器“ノマド”を展開します。

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一方、ニューアジアと呼ばれる地域ではAIと人間が共存、そんな中で人類を滅ぼすという兵器を開発したとされる“クリエイター”の抹殺任務を受け、特殊部隊員のジョシュアがニューアジアへの潜入任務に就きます。

ラボに侵入したジョシュアが発見したのは、愛らしい少女の外見を持つ超進化型AI“アルフィー”。期せずして“アルフィー”と逃避行することになったジョシュアは、AIと人間の争いの秘密に近づいていきます。

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渡辺謙はジョシュアとも昔から知り合いのAIのリーダーのハルンを演じ、魅せる芝居からアクションまで幅広くこなしています。

駆け足、渡辺謙!

渡辺謙の最初のターニングポイントは、なんといっても映像デビュー5年目で主役の座をつかんだNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」でしょう。異例の大抜擢となった「独眼竜政宗」は最高視聴率47.8%、平均視聴率39.7%という大河ドラマ史上最大のヒット作となりました。

前途洋々な船出に思われましたが2年後、映画撮影中に白血病に倒れます。90年代は試行錯誤と病との闘いの日々に。

その一方で役柄の幅を拡げるために様々な作品に出演。「御家人斬九郎」はこの時期の代表作といえます。

また今となっては異色としか言いようがありませんが、伝説の青春劇「池袋ウエストゲートパーク」にもレギュラー出演しました。



そして2003年、トム・クルーズ主演の異色のハリウッド時代劇『ラスト サムライ』に出演。(この撮影のために「池袋ウエストゲートパーク」のスペシャル版にはレギュラーだった渡辺謙と小雪が不参加です)

受賞こそ逃したものの、渡辺謙は『ラスト サムライ』での演技が高く評価されアカデミー賞・ゴールデングローブ賞などの各映画賞の助演男優賞にノミネートされ、華々しいハリウッドデビューを飾りました。

『ラスト サムライ』自体も、骨太な映画の演出に定評があるエドワード・ズウィック監督の手堅い演出もあって大ヒットし、北米地区でも1億ドルを稼ぎだしました。また当時としては異例なほどの丁寧な歴史考証・描写・所作の徹底もあって日本でも好意的に受け入れられ、最終的に137億円の興行収入をあげることになります。

この国内記録は一昨年の『トップガン マーヴェリック』に抜かれるまでトム・クルーズ作品としては日本国内最大のヒット作であり続けました。

『サスト サムライ』の思い出

(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

当時、私は最初の映画館で番組編成のアシスタントをしていた頃で、その夏は『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』を筆頭にメガヒット作が連発して映画館側として“ヒット作はもうお腹いっぱい”という嬉しい悲鳴が各所で上がっていました。
 
そんな中、冬公開のトム・クルーズ主演最新作は『ラスト サムライ』というハリウッド製時代劇になるという情報が舞い込みます。正直、海外の日本描写はいつもズレているイメージが強かったので、最初の印象としては“苦笑い”といったところでした。
 
ところが渡辺謙・真田広之・小雪・中村七之助(子役時代の池松壮亮も出演)と分厚い日本人キャストの名前が並び、一方で(言葉は悪いですが)ハリウッド側のキャストにネームバリューのある俳優が多くないという情報が漏れ伝わってくると、“ガチで時代劇を作る気”がひしひしと伝わってきました。
 
そんな中で公開された『ラスト サムライ』は実際に蓋を開ければ“ほとんど邦画”のような映画で、当時としても異例なロングラン興行を展開しました。
 
元々、海外作品に出演経験があった真田広之はもちろん渡辺謙もハリウッド作品に多く出演するようになりました。


 
以降、渡辺謙は以下のように10本以上のハリウッド作品に出演。

  • 『バットマン ビギンズ』
  • 『SAYURI』
  • 『硫黄島からの手紙』
  • 『ダレン・シャン』
  • 『シャンハイ』
  • 『インセプション』
  • 『GODZILLA ゴジラ』
  • 『トランスフォーマー/ロストエイジ』
  • 『追憶の森』
  • 『トランスフォーマー/最後の騎士王』
  • 『ベル・カント』
  • 『名探偵ピカチュウ』
  • 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

さらに、マイケル・マン監督のアメリカドラマ「TOKYO VICE」でもメインキャストを務めています。

日本人役から、日本人でなくてもいい日本人役へ

渡辺謙は、賞レースに大きく絡むという最高の形で『ラスト サムライ』という名刺を得ました。
 
その後も『SAYURI』『硫黄島からの手紙』(オーディションではなくイーストウッドの指名で出演)などハリウッド大作に次々と出演します。


 
国内作品でもプロデューサーを兼任した『明日の記憶』『沈まぬ太陽』や『怒り』『Fukushima 50』といった大作の“顔”を務めました。『硫黄島からの手紙』で組んだイーストウッド公認の日本リメイク版『許されざる者』などもありましたね。
 
ハリウッドで仕切り直しされたハリウッド版(モンスターバース版)『GODZILLA ゴジラ』に出演したのもこの頃の話です。
 
ただ、この辺りからハリウッドで渡辺謙の演じる役柄に少しずつ変わっていきます。



基本的にはそれまでと同じ“日本人役”ですが、初期の作品では“日本人ではなくてはいけない日本人役”だったのに対して、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』や人気ゲームの映画化『名探偵ピカチュウ』の様に“物語の構成上日本人にした”または“渡辺謙をキャスティングするために日本人にした”というパターンが見られるようになります。


 
ボイスキャストを務めた『トランスフォーマー』シリーズや、今回の『ザ・クリエイター/創造者』などは、もはや渡辺謙の国籍はあまり関係のないキャスティングと言えます。
 
20年に渡ってハリウッドでキャリアを積んできたことにより、渡辺謙が“日本人”という枠から“ざっくりアジア系”と言う大きなカテゴリーの中の一員になり、その中でキャスティングされるということになったと言えるでしょう。
 
今年のアカデミー賞で主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーと同じような立ち位置となり、ハリウッドでの“一人の俳優としての信頼度”の高さを感じさせます。

『ザ・クリエイター/創造者』とストライキ



余談ですが、目下アメリカ映画俳優組合のストライキが続いています。同時に行われてきた脚本家組合のストライキは一応の妥結を迎え終わりましたが、俳優組合のストライキは継続中です。
 
このストライキでは作品の撮影への不参加だけでなく、プロモーション活動にも制約がかかってしまいます。

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『ザ・クリエイター/創造者』は日本での撮影も行われ、渡辺謙も大きな役で出演し、『GODZILLA ゴジラ』の監督作品でもあるので、大々的に日本でもプロモーションをやりたかったところでしょう。しかし、全く動きが取れずちょっと不運な巡り会わせだと思わざるを得ません。
 
9月に公開された『ジョン・ウィック:コンセクエンス』も映画の前半の舞台が大阪で、真田広之以下日本人キャストも多く出演していたため、キアヌ・リーヴスを筆頭にしたメインキャストの来日キャンペーンを打ちたかったところでしょうが、叶いませんでした。

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具体的な数字への影響は明確ではありませんが、それでもハリウッドスターが来日すれば相応のニュースになります。そう考えると来日イベントが行われないのは、やはり寂しいものがあります。
 
日本が舞台だったブラッド・ピット主演の『ブレット・トレイン』が大々的に国内プロモーションを展開したことが記憶に新しいこともあり、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』や『ザ・クリエイター/創造者』については少し残念な気持ちになってしまいます。

渡辺謙のこれから

『ザ・クリエイター/創造者』後の渡辺謙について、先日大きなニュースが入ってきました。
 
2025年の横浜流星主演のNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜(つたじゅうえいがのゆめばなし)」に染谷将太・片岡愛之助らと共に出演が発表されました。役柄は幕府の有力者・田沼意次役とのこと。
 
大河ドラマへの出演は2018年の「西郷どん」以来となり、通算6作目です。立ち位置としては主人公を取り締まる側の最重要人物になるかと思われ、通年での出演となるのではないでしょうか。
 
一方で、ハリウッドを中心に映画での活躍も期待したいところですが、現在アナウンスはありません。ハリウッドなどは前述のストライキで動きが止まっているため、これが明ければまたニュースが入ってくるでしょう。
 
「TOKYO VICE」のシーズン2が決まっているという話もありますね。
 
今年で63歳となると言われてちょっと驚きですが、まだまだ様々なフィールドでの活躍に期待したいところです。
 
(文:村松健太郎)

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