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2023年10月23日

「下剋上球児」2話:弱小野球部を率いる監督を鈴木亮平が演じる「説得力」と「二面性」

「下剋上球児」2話:弱小野球部を率いる監督を鈴木亮平が演じる「説得力」と「二面性」



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鈴木亮平主演の日曜劇場「下剋上球児」が2023年10月15日放送スタート。菊地高弘の「下剋上球児」(カンゼン刊)を原案に、新井順子プロデューサーと塚原あゆ子演出のタッグが帰ってくる。弱小高校野球部を舞台に繰り広げられる下剋上ストーリーに期待だ。

本記事では、第2話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「下剋上球児」2話レビュー

冒頭から手前味噌のようで心苦しいが、まず前回のレビューからの一文を引用したい。
この過去が、南雲を野球から遠ざけている原因に思えたが、どうやら違う。おそらく賀門とのあいだに、まだ見えていない確執がある。そしてそれが、彼に「教師を辞めようと思っている」と口にさせる原因でもあるようだ。

越山高校が抱える弱小野球部を、甲子園を目指せるレベルまで鍛え上げるために、南雲(鈴木亮平)に監督の誘いがかかった。しかし、いつまで経っても南雲の返事は歯切れが悪い。

期限付きで了承するが、それさえも渋々だ。自身が監督を務めるのに及び腰で、そこには“決定的な理由”があるように思えてならない。前回1話の終盤では、恩師である賀門(松平健)に「教師を辞めようと思っている」と口にしたほどだ。

南雲の秘密が、2話で明らかになる。ここまでためらうなんて、犯罪がらみとしか思えないと推察していたが、ボールは意外なところから飛んできた。犯罪であることに変わりはないが、南雲は教員免許を持っていなかった。書類を偽造し、3年間、不正に高校教師を名乗っていたのだ。


ふと、医師免許を持っていない天才闇医者の姿がチラつくが、状況は異なる。いくら家族を養うために、まさに苦渋の決断だったとはいえ、免許を持たない人間が教師を騙るのは、擁護の余地はない犯罪行為だ。

南雲本人からその事実を明かされた山住(黒木華)は、思わず「南雲先生らしくない」と口にする。それに対し、南雲は「僕をご存知ないだけです」と返す。

人のことは、わからない。長く時間をともにしても、会話を重ねても、知らなかった一面が見えてくることがある。

ましてや、南雲と山住は知り合って間もない。協力し合って弱小野球部を立て直していこう、とエンジンをふかし始めた途端に、肝心のガソリンが入っていなかったことを知らされるようと唐突感。山住の表情に、怒りや絶望よりも先に、困惑が浮かんでいるのも無理はない。

この、圧倒されるような、南雲という人間の二面性。彼を演じるのに、鈴木亮平ほど合致するキャスティングはない。


教師として、一人の大人として、高校生たちを指導し率いる姿勢は模範そのものだった。とくに2話においては、エース投手である犬塚(中沢元紀)に続くピッチャーの素質を持った生徒・根室(兵頭功海)への気遣い、そして言葉掛けに注目したい。

家が遠いこともあり、なかなか野球部の練習に本腰を入れられない根室。祖母の具合が悪いことも重なって、練習どころか学校にさえ来られない日もあった。そんな彼を心配し、南雲は自宅まで顔を出す。ともに船での仕事を手伝いながら、出過ぎない範囲で語りかける。

「何か困ったことがあったら、なんでも遠慮なく言ってくれよ」

「みんなには3年間、なんの心配事もなく過ごしてほしいと思ってる」

きっと子どもにとって、その他大勢ではなく、たった一人の自分を眼差してくれる大人の存在は支えになる。

大人への境界線に足を踏み出しかけている彼らにとって、まだまだ尽きない心配事や不安をさらけ出してしまいたい衝動と、自分の足で立たなければいけないプレッシャーとを両天秤にかけたら、ちょうどぴったり釣り合う状態だ。

どちらにも傾けられない。甘えることも、強く在ることもできない。そんな彼らにとって、この場合は根室にとっての南雲は、不安や迷いの一部を吐露してもいいと思える相手になった。そんな説得力を違和感なく表現できる役者は、限られている。

生徒や周りの教師たち、そして視聴者の心を惹きつけたタイミングでの、南雲の身分詐称。正と誤、光と闇。無視できない二面性を抱えた彼が見据えている選択は、教師を辞めること。越山高校の“ざん”は、残念の“ざん”ではない……それを証明する日は、いつやってくるのだろうか。

(文:北村有)

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(C)TBSスパークル/TBS 撮影:ENO

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