「ブギウギ」スズ子たちはなぜ山寺に籠もったのか<第16回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第16回を紐解いていく。
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スズ子の妙なスター性
第4週「ワテ、香川に行くで」(演出:鈴木航)と、謎の香川行きを匂わせつつ、依然として労働争議(桃色争議)問題が解決していません。礼子(蒼井優)が中心になって山寺に籠城。なんで山寺?と思いましたが、人目につかず、たくさんの人数で寝食できて、練習もできる広い空間がある、ということではないでしょうか。
”駆け込み寺”というものがあるように、困ったときに駆け込む場所という認識もあります。ひととき現実を忘れる場所であるのが、劇場。つまり、現実社会と切り離された場所という意味で、寺と劇場はどこか似ています。また、”修業”する場所という意味でも。
寺に、新聞記者が取材にやって来ます。記事に娘・スズ子(趣里)のことも載って、梅丸少女歌劇団の生徒たちの親が寺に押しかけて来ます。
梅吉(柳葉敏郎)とツヤ(水川あさみ)は応援気分で、リリー白川(清水くるみ)のお父さんはお怒り気味。趣里がリリーの男遍歴の話をしてしまうのはご愛嬌。
ツヤは「妙なスター性があると思うんですよ」と親バカを発揮します。
礼子は、親の反対を押し切って、この仕事をはじめたので、親子が集まって語らう姿をしんみり見ています。
と、ここで浮かび上がって来るキーワードはーー
”親子”です。
梅丸株式会社の社長(升毅)は、15歳の礼子が親の反対を押し切って歌劇団に入団したときのことを
思い出していました。社長が親代わりのようなものだったでしょう。大切に育んできた礼子に反抗されて思いは千々に乱れていることでしょう。
たぶん、賃金削減、人員削減するなかで礼子は厚待遇だとおもいます。礼子は自分のことだけでなく仲間のことも平等に大切にしたくて、社長の庇護のもとから飛び出したのでは(勝手な想像ですが)。
USKでは、連日、公演再開を求める観客たちが劇場に集まっていて、林部長(橋本じゅん)やアオイ(翼和希)たちが謝罪していました。アオイが出てきたら、ファンが喜んでしまいそう。アオイはひとりでも舞台に立つと息巻いていましたけれど、さすがにひとりでは公演を実施できないようです。
アオイの苛立ちは、股野(森永悠希)に向きます。一時金に目がくらんで、好きな礼子を裏切ったことではなく、彼に信念が見えないからです。アオイはお客様のため、礼子は自分自身のため(それがまわりまわってお客様のためになる)という信念のもとに各々行動しています。股野は、なんのためにピアノを弾いているのか。すてきなメロディが迷いで乱れます。
当初、股野の存在感は薄かったですが、だんだんと存在感が濃くなってきました。彼もまた、突出した才能があるわけでも、人物的に目立つものがあるわけでもないけれど、ピアノが好きなのでしょう。不器用な人たちが集まった「ブギウギ」の登場人物らしい人物であります。
「あんた、礼子のこと好きなんやろ」と股野に問うアオイ。
「橘さんかて、大和さんのこと」と返す股野。
股野とアオイ。礼子をめぐる、ある意味、ライバルであります。
(文:木俣冬)
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