「下剋上球児」3話:秘密裏に結ばれた共犯関係、タイムリミットは夏の終わり



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鈴木亮平主演の日曜劇場「下剋上球児」が2023年10月15日放送スタート。菊地高弘の「下剋上球児」(カンゼン刊)を原案に、新井順子プロデューサーと塚原あゆ子演出のタッグが帰ってくる。弱小高校野球部を舞台に繰り広げられる下剋上ストーリーに期待だ。

本記事では、第3話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「下剋上球児」3話レビュー

やはり、新井順子プロデューサーと塚原あゆ子演出のドラマは、一味も二味も違えば、一癖も二癖もある。「下剋上球児」は、表向きは“高校の弱小野球部を甲子園出場へ連れていく”スポ根熱血青春ドラマに見せているが、蓋をひらけばさまざまな仕掛けが蠢いている。

日沖誠(菅生新樹)を筆頭とする越山高校野球部が、南雲(鈴木亮平)や山住(黒木華)と手を取り合って甲子園を目指すのがA面だとすると、裏で走っているのは、もうひとつのダークな物語。無免許で高校教師を名乗っていた南雲が、夏の終わりまでそうとバレずに、野球部の監督を続けられるか……。野球部員たちは想像もしていないような軸が、同時進行している。


太陽、汗、グラウンド、高校球児たちの曇りなき掛け声。光あふれるストーリーの陰で、共犯関係となった南雲と山住はこの先、少なくとも夏の終わりまで戦々恐々としながら球児たちと接することになる。

このドラマを、ただの青春物語では終わらせない。そんな宣戦布告さえ見え隠れするようだ。

もう一点、この「下剋上球児」から目が離せない理由は、越山高校の野球部を演じる面々のキャスティングである。

日沖誠を演じる菅生新樹や、根室を演じる兵頭功海、久我原を演じる橘優輝など、ドラマフリークかつ若手役者に注目している層なら既知の顔も多い。

しかし、生徒のほとんどはキャリアの浅い新人からの起用だ。これは「前のクールに出ていた役者が、続けてまた出ている」と言われがちな日本のドラマにおいて、稀有な現象だと感じる。


だからといって、彼らには不思議と、新人独特の気負いや“頑張っている感”がない。あえてわかりやすい例を挙げるなら、子役が泣くシーンに対し「一生懸命泣いてます感があって、正視できない」といった意見が聞かれることがある。それと同等の「頑張って演技してます感」が、彼らにはない。

末恐ろしくなるほど、自然だ。全員が、それぞれ演じている生徒その人に見える、視聴者に違和感を抱かせない演技をしている。まだ認知を広げる前の彼らだからこその副産物なのかもしれないが、それを抜きにしても、役を超えた表現を見せてもらえる満足感がある。


南雲に、山住に、そして生徒たちに感情移入している。無事に甲子園で勝ち進んでほしい、「越山高校の“ざん”は、残念の“ざん”だ」と言わせた全員を見返してほしい。そう思うのと同時に、無免許で高校教師を名乗っていた南雲の、その共犯の片棒を自ら担ぐことにした山住の、心中に思いを馳せてしまう。

越山が甲子園で優勝し、かつ、南雲と山住の共犯関係もなんらかの形でお咎めなしに……だなんて、そんなご都合主義な結末にはならないだろう。私たちは、この期待と不安を、最終回まで抱えることになる。

(文:北村有)

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