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2023年11月11日

『私がやりました』公開にあわせておさらいしたい!フランソワ・オゾン流“女性の生き方を探求した三部作”

『私がやりました』公開にあわせておさらいしたい!フランソワ・オゾン流“女性の生き方を探求した三部作”


フランスが誇る名匠フランソワ・オゾン監督の近年の作品は、フランスで実際に起きた事件を基に作られた『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(20)や“安楽死”を主題とした社会派映画『すべてうまくいきますように』(23)など、シリアスなテーマのものが続いているが、今回の新作『私がやりました』は、女性たちが主人公のクライムミステリー要素が加わったコメディだ。オゾン監督は本作を『8人の女たち』(02)、『しあわせの雨傘』(10)に続く、“女性の生き方をユーモア満載かつ魅力的に探究した三部作の最終章“と定義している。

さらに本作の時代設定について監督は、「1930年代の歴史的・政治的背景はそのままにしつつ、ジェンダーにおける権力と支配については、現代と共鳴するように自由にアレンジした」、「一見時代遅れに見える素材を使って、今の時代にも通じる生き生きとしたテンポ感で現代性を強調することができたんじゃないかな」、と単に30年代当時を再現したストーリーにするのではなく、現代に通底するテーマを作品に盛り込むために脚本を調整していったと語った。

確かに、本作だけでなく『8人の女たち』は50年代、『しあわせの雨傘』では70年代のフランスを舞台にしており、あえてひと昔前に舞台を設定し、現代的なテーマとリンクさせるのがオゾン流なのかもしれない。

今回は過去作のおさらいも含めて、フランソワ・オゾンが”女性の生き方を探求“したトリロジーを作品ごとにご紹介する。

「8人の女たち」(02)

(C)2002 STUDIOCANAL – France 2 Cinema

カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペール、ファニー・アルダン、エマニュエル・ベアール、ヴィルジニー・ルドワイヤン、ダニエル・ダリュー、リュディヴィーヌ・サニエ、フィルミーヌ・リシャールら、若手から大御所までフランスを代表する女優8人を集め、キャストの豪華さから当時話題を呼んだミュージカル仕立てのサスペンスコメディ。50年代の色鮮やかで美しい衣装と大女優たちが歌って踊る、めったに見られない姿に注目。マミー役で出演したダニエル・ダリューは『私がやりました』でも意外な形で登場する。

ストーリー

舞台は1950年代、フランス郊外にある豪華な大邸宅。クリスマスのため家族が集まるが、屋敷の主人がナイフで背中をさされた状態で発見される。外は大雪で密室状態だったため、容疑者は家にいたメイドを含む8人の女たち。犯人捜しをしていく彼女たちだが、次々に驚くべき事実が明らかになり──。犯人はいったい誰なのか、そして事件の真相突き止めることができるのか。

「しあわせの雨傘」(10)

(C)Mandarin Cinema 2010

オゾンが『8人の女たち』に続き、カトリーヌ・ドヌーヴとタッグを組んだ一作。ドヌーヴのイメージとは程遠い赤ジャージ姿に往年のファンたちが驚愕した。70年代を舞台に、優雅なブルジョワ主婦が、倒れた夫の代わりに彼女ならではの感性で傾きかけた雨傘工場を再起させていく、幸福感&高揚感溢れるヒューマンドラマ・コメディ。まるでドヌーヴの代表作『シェルブールの雨傘』へのオマージュかのような、色とりどりの傘に囲まれるシーンは必見!

ストーリー

スザンヌは、朝のジョギングを日課とする優雅なブルジョワ主婦。夫のロベールは雨傘工場の経営者で、「妻は美しく着飾って夫の言うことを聞いていればいい」という完全な亭主関白だ。ところがある日ロベールが倒れ、なんとスザンヌが工場を運営することに。ブルジョワ主婦ならではの感性で、傾きかけていた工場は大盛況!だが、新しい人生を謳歌する彼女のもとに、退院した夫が帰ってきて――。

「私がやりました」(11月3日より全国順次公開中)

© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

最新作ではナディア・テレスキウィッツと、レベッカ・マルデールの期待の新人2人を主役に迎え、その敵役として圧倒的存在感をみせるイザベル・ユペール、さらにユーモアあふれる男性キャラクターにはオゾン作品常連のファブリス・ルキーニやアンドレ・デュソリエが出演し、フランス映画界の新旧を代表する豪華キャストの共演が実現した。ハリウッドの古典的なスタイル“スクリューボールコメディ”(=1930-40年代のハリウッドで流行ったコメディのジャンル)の要素を取り入れ、クライムミステリーとは思えないほどアップテンポな展開で物語が進んでいく。

ストーリー

有名映画プロデューサーが自宅で殺された。容疑者は、売れない新人女優マドレーヌ。プロデューサーに襲われ、「自分の身を守るために撃った」と自供する彼女は、親友で駆け出しの弁護士ポーリーヌと共に法廷へ。正当防衛を訴える鮮やかな弁論と感動的なスピーチで裁判官や大衆の心をつかみ、見事無罪を勝ち取る。それどころか、「悲劇のヒロイン」として一躍時の人となったマドレーヌは、大スターの座へと駆け上がっていく。ところが、そんなある日、二人の前にオデットという女が現れる。プロデューサー殺しの真犯人は自分で、マドレーヌたちが手にした富も名声も、自分のものだというのだ。こんなに魅力的な“犯人の座”は渡せない──果たして、3人の駆け引きと、悪巧みの行方は──?


三部作とはいえ、それぞれ時代も題材も異なる物語。オゾン監督があらゆる視点で“女性の生き方を探求”した3作になっているので、本作の公開に合わせて事前に鑑賞しておくと、より新作を楽しめるかも?フランソワ・オゾンの集大成ともいえる、トリロジーの最終章をぜひ劇場でご覧あれ!

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