国内ドラマ

REGULAR

2023年12月17日

「下剋上球児」最終回:終わらない夏、終わらない下剋上。甲子園に連れていってくれてありがとう

「下剋上球児」最終回:終わらない夏、終わらない下剋上。甲子園に連れていってくれてありがとう



▶︎「下剋上球児」画像を全て見る

鈴木亮平主演の日曜劇場「下剋上球児」が2023年10月15日放送スタート。菊地高弘の「下剋上球児」(カンゼン刊)を原案に、新井順子プロデューサーと塚原あゆ子演出のタッグが帰ってくる。弱小高校野球部を舞台に繰り広げられる下剋上ストーリーに期待だ。

本記事では、最終回をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

[※本記事は広告リンクを含みます。]

▶︎「下剋上球児」を観る

U-NEXT

「下剋上球児」最終回レビュー

私たちは、不安になる。今やっていることが、果たして次に繋がるのか。懸命に打ち込んでいることが、将来、何かの役に立つのか。

南雲(鈴木亮平)や山住(黒木華)率いる越山高校の球児たちも、最初はそう思っていたかもしれない。弱い自分たちが、努力をして何になる? 頑張って練習をしたからって、“残念”の“ざん”と揶揄される自分たちが、甲子園に行くなんて夢のまた夢じゃないか。

でも、繋がった。終わらなかった。

ときに過酷な練習と試合を重ね、着実に強くなった。できなかったことが、できるようになった。ミットでボールを掴むこともできなかった球児たちが、ヘッドスライディングで鼻から血を流していた彼らが、夢と目標、そして共に志す仲間がいるおかげで強くなっていく。

このチームのために、強くなる。自分たちを信じてくれている大人たちのために、甲子園を目指す。気づいたら、このドラマを最後まで見守ってきた視聴者も含め、頑なに祈っていた。勝ちますように、報われますように、と。

甲子園を目指して戦ってきた彼らは、全員がプロの野球選手になるわけではない。部活から引退し、高校を卒業すれば、それぞれの進路へ巣立っていく。

根室(兵頭功海)のように社会人野球で活躍する者もいれば、犬塚(中沢元紀)のようにコーチを経験したあと、教師を視野に入れる者もいる。

だからこそ、高校での部活は貴重な時間だ。「青春」という二文字で終わらせるには、もったいない時期。自分がその渦中にいる間は、そのかけがえのなさに気付けない。南雲が言ったように「一生のうちにこのメンバーで野球ができるのは、今だけ」なのだ。

ともに強くなってきたメンバーで、彼らは勝ってみせた。甲子園出場がかかった予選。ここを守れば勝ち越しという場面で、音が消えた。襲いかかる期待とプレッシャーに、「勝ちたい」「甲子園に行きたい」……その気持ちだけで打ち勝った彼らは、まさに下剋上を成し遂げたのだ。

南雲は言っていた。「どんな手を使っても勝ちたくなってきた」と。彼のなかには言葉にならない、映像では表現されない思いが去来しただろう。かつて自分が涙をのみ、望まない勝ち方をした苦しい過去も含めて。そんな南雲が言う「どんな手を使っても」には、字面以上の意味がある。

下剋上を成し遂げてみせた彼らの夏は、誰にとっても忘れられない夏になった。
越山高校の球児たちの夏は、刹那的で、かつ途方もない時間が流れていた。

南雲の無免許問題、山住や久我原(橘優輝)の負傷、越山高校の資金繰り。課題が山積するなかで、球児たちがやるべきことは一つだった。目の前の試合に勝つために、練習すること。深呼吸し、集中すること。

「負けてもそこで、終わりじゃない」

「必ず次がある」

「次を目指している限り、人は終わらない」

意味のないことなんてない。無駄に終わることなんてない。部活なんて頑張っても将来の役には立てないかもしれないし、仕事なんて給料の範囲で適当にこなしていればいいかもしれない。それでも、人は終わらないのだ。次を目指している限り、夢や目標が潰えない限り。それを球児たちから教わった。

終わらない夏、終わらない下剋上。甲子園に連れていってくれて、ありがとう。

(文:北村有)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

©TBSスパークル/TBS 撮影:ENO

RANKING

SPONSORD

PICK UP!