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ライアン・ゴズリングの魅力にハマる映画“5選”<アカデミー賞 歌曲賞を盛り上げた男>
ライアン・ゴズリングの魅力にハマる映画“5選”<アカデミー賞 歌曲賞を盛り上げた男>
映画を彩る要素として欠かすことのできない音楽。主題歌や挿入歌が時としてセリフ以上のメッセージを伝えることもあり、映像では伝えきれない物語やキャラクターの感情を余すことなく観客へ届ける役割を果たす。
「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」(『タイタニック』)や「ミス・ア・シング」(『アルマゲドン』)など数々の名曲が誕生しており、楽曲を耳にするだけで映画のワンシーンが浮かぶという人も多いだろう。
──そこで今回は、俳優ライアン・ゴズリングの魅力を堪能できる映画5選を紹介していきたい。いや音楽の話はなんだったんだ、とツッコんではいけない。
写真:AFPアフロ
そう、ゴズリングは第96回アカデミー賞 歌曲部門にノミネートされた「I'm Just Ken」を同授賞式で披露し、会場を大いに盛り上げたのだ。演技ができて歌もうまい。もはや非の打ち所がないスター、それが……ライアン・ゴズリング。
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『バービー』
■まさか実写化するとは
「バービー」の実写映画化が発表された際、おそらく誰もがこう感じたことだろう。「どうやって?」。『LEGO ムービー』のようなCGアニメーションではなく、『テトリス』のように制作秘話にフォーカスするわけでもない。バービーの世界をそのまま実写化するという。……どうやって?
ところがいざフタを開けてみれば、目の前に広がるのは紛うことなきバービーたちの世界「バービーランド」。さらに「バービーが人間の世界に行く」というエンタメ性や、男性社会を風刺する「性差の抑圧・解放」など(と簡単にまとめるのも惜しいほどの)強いメッセージもしっかり盛りこまれていた。
(C)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
「ああ、これが作りたかったのか」と否が応でも納得させられるのだ。これは素直に監督のグレタ・ガーウィグと製作も兼ねた主演マーゴット・ロビーが賞賛されるべきだろう。
本作でゴズリングはバービーのボーイフレンド・ケンを演じているが、彼をただのボーイフレンドとして描くのではなく、バービーとの関係性に思い悩むキャラクター性を与えているのがポイント。そのため時にはバービーを振り回し、ケン自身が本当の自分を見失ってしまうことも。
人間の世界で見た「男はこうあるべき」(あるいは「女性はこうあるべき」)という呪いに囚われるケンを演じきったゴズリング。
「I'm Just Ken(僕はただのケン)」は、まさにケンの“キャラソン”といっても過言ではない。いや、キャラソンだ。ビジュアル初解禁時の衝撃とは裏腹に、愛嬌と哀愁を持ち合わせた「ケン」というキャラを作り上げたゴズリングの創造力は見事というほかない。
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『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』
■クルーニー×ディカプリオ×ゴズリング!
政治の世界を描いた映画は数多いが、これほどビッグネームが並ぶ作品は珍しいのではないか。ジョージ・クルーニーが出演だけでなく監督もこなし、製作総指揮としてレオナルド・ディカプリオが参加。ゴズリングやクルーニーの他にも、ポール・ジアマッティやいまは亡きオスカー俳優フィリップ・シーモア・ホフマンら演技派キャストが名を連ねた。
邦題が示すとおり、本作は米大統領選挙戦が控えるマイク・モリス知事陣営を描いた作品。ただし対立候補との激突を主題にした映画ではなく、モリスをサポートするスティーヴン・マイヤーズが情報戦に飲み込まれていく様にフォーカスしている。
(C)2011 Ides Film Holdings, LLC
ゴズリング演じるマイヤーズは頭脳明晰で選挙戦に情熱を注ぐ一方、純粋ゆえに自ら大きなミスを招いてしまう。相手陣営のブレインを演じるジアマッティとの対峙シーンは、まさに蜘蛛の糸に絡み取られた“餌”の状態。そんな弱さを見せつつも、生き残りを賭けて牙を研ぐ表情も印象的だ(ここにジアマッティが去り際に吐くセリフが皮肉として機能する)。
人の命すら利用するマイヤーズの立ち回りは、まさに闇落ちという言葉が相応しい。
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『ナイスガイズ!』
■アクションコメディもおてのもの
意外、という意味では『ナイスガイズ!』もゴズリングの魅力を知る上で必見の1作といえるだろう。『ダイ・ハード』や『マトリックス』などで知られる名プロデューサーのジョエル・シルバーと、『アイアンマン3』『ザ・プレデター』などのヒットメーカーであるシェーン・ブラック監督がタッグを組んだ本作。あらすじを読まなくても、ふたりの名前だけで生粋のエンタメ作品に違いないと予感させてくれる。
本作は1970年代のロサンゼルスを舞台にしたミステリー・コメディアクション。なんとも頼りない私立探偵ホランド・マーチと豪腕(元海軍)で切れ者(現・示談屋)のジャクソン・ヒーリーが、とある女優の死をきっかけに大事件の渦中へ飛びこむ姿を描いた。立て続けに被害者を出す事件の様相とは裏腹に、70年代の情景や衣装、音楽など随所に見られるシェーン・ブラック節には思わずワクワクしてしまう。
意外、というのはゴズリングが酒浸りの探偵マーチを演じていることだけではない。ヒーリー役を演じるラッセル・クロウとの凸凹コンビぶりもじつに新鮮で、ヒーリーが巨大なクマだとしたらマーチはプードルといったところか。
もちろんマーチもしっかり見せ場があり締めるところは締めてくれるので、クロウとの共演で嬉々としてマーチを演じるゴズリングの姿を堪能してほしい。
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『ラ・ラ・ランド』
■甘く切ないハリウッド・ドリーム
「映画」というフォーマットがこれほど一般層に浸透したのは久しぶりだったように思う。エマ・ストーンやゴズリングをはじめとした魅力的なキャストたち。煌びやかな衣装。従来の劇伴以上の効果をもたらしたジャスティン・ハーウィッツのジャズミュージック。男女が織り成すハリウッド・ドリームと現実の物語。ロケーションやミュージカルシーンなど、まさに「映画」のために存在する映画と言えるだろう。
『ラ・ラ・ランド』のヒットのお膳立ては既に整っていた。若くして『セッション』で映画界と観客を震撼させたデイミアン・チャゼル監督の新作とあって、多くの映画ファンが期待に胸を膨らませていたに違いない。
そして実際に、本作は観客の胸に響いた。映画の歴史そのものに立ち返り、黎明期とも重なる栄華と苦難の物語。これほどの完成度を誇る作品を撮るために、チャゼル監督は人生を何周したのだろうと疑問が浮かぶほどだ。
そんな作品を支えたエマ・ストーンとゴズリングは、まさに本作の「華」ともいえる。物語の中心には、常にふたりが演じたミアとセブがいる。むしろふたりを中心にして『ラ・ラ・ランド』という舞台が成立しており、バツの悪い出会いから大きな余韻をもたらすラストシーンに至るまで、ミアとセブが世界に色を与えているように思えた。
夢と現実。理想と妥協。本作が観客に残した爪痕はあまりにも大きい。
▶︎『ラ・ラ・ランド』を観る
『グレイマン』
■街を壊す気ですか
ゴズリングは(勝手なイメージで)エンタメ色を全面に押し出したようなアクション大作には出ないものだと思っていた。
そのため、『アベンジャーズ/エンドゲーム』を世紀の超大作に仕上げたルッソ兄弟監督作の『グレイマン』に主演したことは、良い意味で裏切られたといえる。MCUから離れたルッソ兄弟の新作ということもあり、公開・配信を待ちわびていた映画ファンは多いはずだ。
本作でゴズリング演じるCIA工作員コート・ジェントリーは、任務中に組織の内部情報を記録したデータを入手。しかし組織に追われる身となってしまい、ミランダ(アナ・デ・アルマス)の協力を得ながら逃走を図ることに。一方データ回収の陣頭指揮を執る工作員ハンセン(クリス・エヴァンス)は、ジェントリーを追い詰めるべくあらゆる手段を講じていく──。
兎にも角にも本作はド派手なアクションに終始しており、言い方は悪いがドラマは二の次三の次、ちょっと懐かしさすら感じるハリウッドアクション超大作の様相を呈している。
全アクションシーンが見どころになっており、特にプラハのトラムを舞台にしたチェイスシーンは街そのものを破壊する気かとツッコミを入れずにはいられない。
またゴズリングが見せる銃撃戦や技斗などのタクティカルアクションは、これまでになかった新たな魅力。息ひとつ乱さぬ姿に惚れ惚れしてしまう。
▶︎『グレイマン』を観る
まとめ
これは誰に向けるでもない独り言だが、毎度のことながら俳優くくりの◯選記事には頭を悩まされる。
アレも選びたい、コレも選びたい。ゴズリングなら『ドライヴ』や『ブレードランナー 2049』、『きみに読む物語』といった作品も外せないだろう。その役柄は幅広く、それだけ演技派だという証拠でもある。
そんなゴズリング、新作がデヴィッド・リーチ監督とタッグを組んだスタントアクション『フォールガイ』(8月16日公開)というのだから驚かされる。この先もまだまだ“新しい顔”を見せてくれそうだ。
(文:葦見川和哉)
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