©2024映画「陰陽師0」製作委員会
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俳優・映画人コラム

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2024年04月20日

『陰陽師0』山﨑賢人だからこそできた、アクションシーンの妙

『陰陽師0』山﨑賢人だからこそできた、アクションシーンの妙

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2019年に第1作が公開された『キングダム』シリーズを筆頭に、『ゴールデンカムイ』(2024)でも耳目を惹くアクションシーンを見せた山﨑賢人。新しく打ち出されたのは、若き日の安倍晴明を描いた『陰陽師0』である。

平安時代に実在したとされる陰陽師・安倍晴明を主人公にした、大ヒット小説「陰陽師」シリーズ(夢枕獏)の実写化。目には見えない禍々しいものと対峙する安倍晴明の凛とした姿は、これまで数々の作品で骨太なアクションをこなしてきた山﨑賢人だからこそ、スクリーンに表現し得たと言える。

『キングダム』『ゴールデンカムイ』から続く『陰陽師0』のアクションシーンの妙について、過去出演作も含め紐解きたい。

『陰陽師0』でも魅せる華麗なアクション



若き日の安倍晴明を山﨑賢人が演じた『陰陽師0』が公開される報を聞き、直近では『キングダム』や『ゴールデンカムイ』でしっかりアクションシーンの経験を積んできた山﨑賢人が、また一味違った作風に向け舵を切ったのだと感じた。

その直感は半分当たっていて、半分外れていた。

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目に見えないものと戦う、自ずと表現力が求められる役柄や作品に挑戦したという意味では、確かに彼の新境地と言える。しかし同時に、これまでさまざまな現場で培ってきた「アクションに関する知見」が土台にあるからこそ、『陰陽師0』という作品に確固たる説得力が宿っている。

山﨑賢人演じる安倍晴明が、染谷将太演じる源博雅とともに、圧倒的な力に立ち向かっていく。それらは人の目に、ときには竜のように、はたまた炎のように映る。

人が無力と化すような、大きなうねりが轟音を立てて、次々と行く手を阻む禍々しいもの。安倍晴明は強靭な精神と体力、気力でもって、それらに対峙する。

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何度も練習したという呪文や、指で形作る印をはじめ、平安時代の貴族が履いていたとされる浅沓に裸足で慣れる過程も、根気がいるものだったろう。

見せ場となる派手な対決シーンもさることながら、細やかな所作や身につけている装束、見えざるもののリアルさを極限に高めるCGの技術も含め、本作に見逃していい箇所は見当たらない。

2024年4月19日に公開された本作は、間違いなく山﨑賢人の新たな代表作となる。続いて『キングダム 大将軍の帰還』が公開される7月にかけて、その熱は途切れることはないだろう。

『キングダム 大将軍の帰還』にかけられた期待

ⓒ原泰久/集英社 ⓒ2024映画「キングダム」製作委員会

大人気シリーズとなった『キングダム』。2019年に第1作目が公開され、『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022)、『キングダム 運命の炎』(2023)、そして2024年7月に『キングダム 大将軍の帰還』が公開される。

超人気漫画が原作といえど、興行収入につながらなければ次回作は実現しない、シビアな映画業界。4作目まで求められ、世に公開されていること自体が、今シリーズの成果を体現している。

『キングダム 運命の炎』(C)原泰久/集英社 (C)2023映画「キングダム」製作委員会

原作漫画を土台にした脚本はもちろんのこと、吉沢亮・長澤まさみ・橋本環奈・大沢たかおなど豪華キャスト陣で固めた布陣、そして圧巻な戦闘アクションシーンも魅力のひとつ。山﨑賢人演じる信は、作品を追うごとに肉体的にも精神的にも成長し、次から次へと現れては立ちはだかる敵や目標に向かって、全力でぶつかっていく

その荒々しくも躍動感あふれる様は、確かに俳優・山﨑賢人の新しい可能性を示唆するものだった。

(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

これまで『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017)や『斉木楠雄のΨ難』(2017)など、漫画原作の実写化作品において堂々たる主演の立場を確立してきた山﨑。

過去の出演作を紐解けば、『オオカミ少女と黒王子』(2016)『四月は君の嘘』(2016)『一週間フレンズ。』(2017)など恋愛映画の経験もしっかり積んできている。

さまざまな方向性の作品で、表現の引き出しを十分に貯めたタイミングでの『キングダム』シリーズ主演。漫画原作実写化のアクションものには山﨑賢人あり、と業界内外に知らしめる系譜の発端となったはずだ。2024年に公開を控える『キングダム 大将軍の帰還』に、その期待は引き継がれる。

“個”のアクションが光る『ゴールデンカムイ』

©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

『キングダム』シリーズのアクションが“群”で魅せるものだとしたら、『ゴールデンカムイ』のアクションには“個”の輝きがある。こちらも大人気漫画を原作とする実写化で、山﨑賢人は主人公・杉元佐一を演じた。

「不死身の杉元」の異名を持つ彼の居住まいは、まさに孤高。雪景色をバックに遠くを眺めやる姿勢は、静かであればあるほど、安易に触れてはならない闘気を感じさせる。凍てつく空気が観ている側にもひたひたと伝わってくるような、“壮絶な過去”と“今”の双方に向けられる覚悟の強さ。それらを感じさせる佇まいを、いったい何人の俳優が体現できるだろう。

©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

特に目を惹くのは、山﨑賢人本人が撮影に挑んだという、雪ソリで何百メートルも引きずられるシーンだ。通常はスタントを使うところ、本人の希望もあり生身でぶつかった撮影となった。

舞い上がる雪煙、響く馬の蹄の音、頼りない綱一本でかろうじてソリに引きずられている杉元の姿は、一瞬でも気を許せば身体ごと投げ出されてしまう危険さと、リスクと隣り合わせだからこそ沸き立つ躍動に満ちている。

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山﨑賢人は挑戦する俳優だ。

『陰陽師0』でも呪文の暗唱や、両手指で形作る印を会得するのに、相応の労力が必要だったはず。一人の俳優として名実ともに確かな足場を築き上げてきた山﨑賢人だが、甘んずることなく、さらなるステップを視野に入れている。その姿勢は、途切れることなく続く出演作の数にも反映されている。

今後も、否応なく期待してしまうだろう。山﨑賢人は、どこまで進化するのだろうか。

(文:北村有)

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