「虎に翼」寅の子は未年。あっという間に子供が誕生<第39回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第39回を紐解いていく。
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地獄終了
穂高(小林薫)が雲野(塚地武雅)に報告したことで、妊娠している寅子(伊藤沙莉)は仕事を休むことになりました。もう先頭に立ってひとりで抱えなくていいのか、と少し肩の荷が降りた寅子でしたが、よね(土居志央梨)が冷たく去っていったのが気になって、カフェーを訪ねます。
寅子はよねにも妊娠のことを伝えていなかったんですね。
視聴者が寅子に対して抱きそうな批判をよねがポンポン、寅子にぶつけます。ということは、作者はすべて織り込み済みで寅子の問題点を書いてきたというわけです。
みんなの思いを背負って――とかそれ自体は大事なことだけど、ちょっと多用しすぎとか。ついでに言うと「地獄」ってワードも使いすぎとよねにツッコんでほしい気もしますが、この多用も意識的なのかな。「はて」「地獄」「みんなの思い」3大ワード。
たったひとりで背負い込んで、でも、抱えきれず、結局男性たちに手を差し伸べてもらってすこしホッとなる、そんな寅子によねは容赦ありません。
「お前には男に守ってもらうそっちの道がお似合いだよ」
「心配ご無用、女の弁護士はまた必ず生まれる」
よねも寅子に「ひとりじゃない」と手を差し伸べていたのに、結局、結婚とか出産とか、男性の先輩たちの判断とかに依ったことを悔しく思っているのではないでしょうか。よねの気持ち、わかる気がします。
よねはカフェーで、困っている人達の法律相談に乗っていました。
口にこそしませんが試験に受からないことに焦りや悔しさを覚えているでしょうし、試験さえ受かれば自分だってばんばん働くことができると。
寅子は、志なかばで去っていった仲間たちだけでなく、よねのような人のことも考えるべきでしょう。優三(仲野太賀)だってそう。よねや優三のように、なぜか試験には受からないけれど、ほんとはすごく優秀な人っているのです。
よねのように、資格はないけど、困っている人の相談に乗ったり、何か手伝ってあげたりする仕事って大事。ブラックジャックのような闇医者じゃないけれど、こういう仕事をしている人をオリジナルのドラマで描いたらおもしろそう。
「じゃあ私はどうすればよかったの?」とよねに尋ねた寅子。
優三は素敵な人だから恋に落ちてもいいのだけれど、仕事をするための契約結婚だったわけで。なぜ子供を作ったのかなあと、はて?と思ってしまうのです。もちろん、結婚して子供もつくったうえで仕事もすることを当たり前にできる世の中であるべきです。
だから、寅子が便宜上の結婚ではなく自然に優三と恋して結婚して子供ができていたら、引っかからなかったと思うのですが、寅子は突っ走って流されていたところもあるように思います。
この感覚、おそらくドラマ的にずいぶん駆け足ではしょったからなのでしょう。たぶん、世の中で子育てしながら働いている人は、短い描写でも、がんばったけど降参だと泣く寅子の気持ちが痛いほどわかるのだろうというのも想像に難くありません。
絶望した寅子は、法律事務所を辞め、家で過ごすようになりました。子供・優未も生まれ、幸せな日々。
たぶん、久保田(小林涼子)や中山(安藤輪子)もこんな気持だったのかもしれませんし、無双だった寅子が、じょじょに挫折する人たちの気持ちを実感し、寄り添えるようになっていくという意図であると思いたい。
大きな広いお屋敷も、戦争で手放すことになりました。
余談ですが、モデルの三淵嘉子さんのお父さんは、持ち家を持たずずっと借家主義だったそうです。裕福だったのになぜだろう。三淵さんのお父さんがどういう人だったのかとても気になっています。たぶん、直言(岡部たかし)とは全然違う感じの人ではないかなあと思って。
(文:木俣冬)
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