続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年08月15日

「虎に翼」直明の交際相手・玲美(レミ)は平野レミを彷彿とさせる快活さ<第99回>

「虎に翼」直明の交際相手・玲美(レミ)は平野レミを彷彿とさせる快活さ<第99回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となるヒロイン・寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第99回を紐解いていく。

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猪爪家・家族会議

終戦の日の放送回は、家族の幸せを考える家族会議のお話でした。

まずは、竹もとで、寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)が今後の話をしていると、桂場(松山ケンイチ)がやって来て、ふたりの仲を良しと思っていない素振りを見せます。あらぬウワサが流れてふたりの出世に関わることを心配しているのです。

寅子としては独身同士、何も問題はないと考えるのですが……。
実際のところはどうなのでしょう。いまだとシニアの恋も珍しくない印象ですが、この時代だといい年して……とよく思われないものなのでしょうか。結婚しないで長々交際していることが当時としては印象が悪いのかもしれません。

桂場は竹もとのあんこの味にこだわり、梅子(平岩紙)の味をなかなか認めないくらいなので、新しさよりも伝統を重んじるタイプで、寅子のようなルールからはみ出すタイプが本来、苦手なのかも。それでも辛抱強く、彼女のやってることを見極めようとすぐに判断をくださないところが、桂場の法律家らしさのように感じます。

松山ケンイチさんは、桂場の老けた感じと、偏屈な感じを、カリカチュアされた表情にしてこのドラマの雰囲気にうまく合わせ、さすがだなあと思います。

そして、今度は航一が猪爪家にやってきます。寅子は得意のロールキャベツを作ります。
家族プラス道男(和田庵)までそろって、挨拶していると、直明(三山凌輝)が交際中の
田辺玲美(菊池和澄)を連れてきました。菊池さんは「ゲゲゲの女房」に布美枝の子役で出演していたかたです。
航一に、花江と直明の言い分を冷静にジャッジしてもらおうという寅子のアイデアでした。

なぜか、窓から「ごめんください」と挨拶する航一。直明と玲美もまず窓から現れます。猪爪家の玄関が狭くて絵にならないのでしょうか。ワンクッションつくることで、登場のインパクトをもたせようという意図かもしれません。

こうしてにぎにぎしく家族裁判が行われました。
昔は、道男がやけにでかくて目立っていましたが、いまや、直人(青山凌大) 直治(今井悠貴)のほうが大きく見えるようになり、すっかり溶け込んでいます。

玲美は家庭裁判所発足準備の大晦日に手伝っていた学生のひとりでした。さらに、花江が新潟に行っていたときに、猪爪家に来て、そこから交際がはじまったというのです。花江はもうびっくり。確かに自分が人生初めてくらいに家を空けたときに、女性を家に呼んで料理をつくってもらっていて、それをいままで黙っていたと知ったら、疎外感を覚えるかもしれません。

玲美がよくしゃべるのを見た道男が「寅子みたい」と言うと、航一が「寅子」とぴくりとなります。

さすが、大学出で教師をしている才女。立板に水という感じで、同居させたくないのは、結婚が気に入らないからですか?と単刀直入に聞きます。そして、そもそも花江は直明の母ではないとずばり。
「この女強い!」とナレーション(尾野真千子)。

ここからみんなの意見がどんどん出てきます。
そもそも、猪爪家は家長不在な感じで、亡き長男の嫁・花江とその子供、次男の直明、長女の寅子が同居しているのです。義きょうだいが中心になった同居、かつ妹の寅子が経済的な面を担っていることも当時としてはイレギュラーな感じでしょう。そこに血縁関係のない道男もいるし。

ある意味、新しい家族の形のモデルケースである猪爪家ですが、花江はいまさらながら「結局私が誰かに世話をしてもらうしかない」と自身の立場に悩み、息子に将来の世話をしてもらうことをあてにしているみたいだと卑下します。自分が働いて家を出るという選択を考えたことはなかったのか。世間には戦争未亡人がたくさんいたでしょう。彼女たちの生き方から影響されることはなかったのか気になります。が、ここでは寅子が働く戦争未亡人で、花江は家事と子育てに集中する戦争未亡人と違うタイプに分かれているわけです。

息子たちは、家のことをずっとやってくれた花江に感謝していて、当然老後の世話をする気満々です。以前描かれた梅子の家とはえらい違いです。

「なんていい子、いい子すぎてこわいくらい」
「直ばっかり」
と玲美は感動したりツッコんだり。

玲美(レミ)という名前と、ペラペラとよくしゃべる感じが明るい料理家・平野レミさんを思わせます。
挙げ句、「そもそも私は是が非でも結婚したいわけではありません」と言い出し……。どうなる家族裁判?

玲美や、以前出てきた寅子の後輩の女性たちはメガネをかけて聡明な話し方をし、どこか寅子のモデルの三淵嘉子さんのような雰囲気を醸しています。当時の知性的な女性像の中央値なのでしょうか。
寅子がそこにハマらないのはあえて、中央値から脱却しようと試みているのかもしれません。


(文:木俣冬)

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