<小栗旬>愛を体現するひとの魅力を観る「3作品」
小栗旬がどんな俳優なのか、なんてことはおこがましくて言えない。
イメージは固定されず、良い意味で「この作品にも出ていたんだ」と驚くこともあれば、「もう小栗旬のことしか思い出せない」と思ってしまうほどに強烈なインパクトを残すものもある。時には物静かな青年、時には使命感に燃える公務員、時には工藤新一だし、信長だし、銀さんだし、ルパンだし……。
でも「小栗旬が演じたどの作品が好き?」と聞かれれば、多くの人が1作は挙げることができるのではないか。
野暮を承知で今一度、そんな小栗旬の魅力に迫りたい。
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「花より男子」
■思わず初恋を捧げたくなるあなたの小栗旬はどこから?と問いかけたときに、どんな作品を挙げるだろうか。
独断と偏見で恐縮だが、「花より男子」を挙げる人が多いのでは、と予想している。主人公の牧野つくしと、つくしを好きになる道明寺司。そして司の幼なじみ・花沢類を演じるのが小栗旬だ。
俺様な司に対し、つくしは反発心を持つが次第に惹かれていき……という流れなのだが、つくしがピンチのときに駆けつけ、寄り添い、優しさで包み込むのが花沢類なのだ。実際、つくしは花沢類のことを一瞬好きになりかけるわけだが、最終的には司と結ばれる。
分かっている。ヒロインがつくしなら、ヒーローは司だ。だから最終的に2人が結ばれるのは分かっていたのだけれど、それでも思わずにはいられない。「どうして花沢類を選ばない?」と。
三角関係において「当て馬」という言葉はよく使われるが、その「当て馬」の概念を最初に世の人にしらしめたのは小栗旬が演じる花沢類ではないだろうか。
原作の花沢類ももちろんステキなのだが、その花沢類を三次元に再現する人がいるとは思いもよらなかった。漫画ならステキ!と思えても、実際に存在したとしたら違和感がありそうな部分も見事に解消されている。
「カッコイイ小栗旬」「王子のような小栗旬」が形成されたとすればこの作品だろう。ちなみにこれが2005年のことである。その後も、多くの実写化作品に出演しているのは納得だ。自分の好きなキャラクターを演じるとしたら小栗旬がいい。そんな風に思わせてくれる。
『人間失格 太宰治と3人の女たち』
■女を狂わせたのか、狂ったのか花沢類の恋に胸を打たれてから14年後、主演を務めたのが『人間失格 太宰治と3人の女たち』だ。小栗が演じたのは太宰治。
小説「人間失格」の誕生秘話を、太宰と太宰を愛した3人の女たちの目線から描いたものだ。
太宰治といえば教科書にも作品が載るような人で、10代のうちにその作品に触れている人も多いだろう。
(C)2019「人間失格」製作委員会
どんな立派な人かとも思うが、女性に関しては褒められたものではなく、彼の周りには妻の石原美知子(作中では宮沢りえが演じた)、愛人の太田静子(沢尻エリカ)、愛人で太宰と共に心中した山崎富栄(二階堂ふみ)がいる。
史実に基づきつつも、作品自体はフィクションとされているが、「本当に太宰がこんな男だったのだとしたら、3人の女性たちも心を奪われても仕方がない」と思ってしまう。危うく、はかなげで、決して自分のことだけを愛してくれるわけではない。
(C)2019「人間失格」製作委員会
いや、一瞬は自分のものになったとしても、すぐにこの手の中からいなくなってしまう。それでいて、いやらしさがないのがすごい。R15指定なので濃厚になのだが、生きるための悲壮感を漂わせているからだろうか。
しかし、そんな危うさが心をくすぐられてしまう。ただ、くすぐられただけでなく、大やけどもさせられてしまうのが難。
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「鎌倉殿の13人」
■真摯に生きていた次男の行く末そんな小栗のひとつの集大成とも言える作品が大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の北条義時だ。小栗の大河ドラマへの出演機会は多い。
■小栗旬 大河ドラマ出演作品
- 八代将軍吉宗
- 秀吉
- 葵 徳川三代
- 義経
- 天地人
- 八重の桜
- 西郷どん
- 鎌倉殿の13人
- どうする家康
北条時政の次男で、最初は出世には興味がなかった北条義時が時代の渦に巻き込まれ、やがて幕府の実質的な指導者となってしまうまでを描く。
無邪気でキラキラとしていた義時が、次第に薄暗い空気をはらみ、目が据わっていく様子は闇落ちとも言われた。本当に前半と後半とでは別人のよう。悲しい最期の迎え方にも衝撃が走った。
源頼朝や義経をはじめとした、ある意味、歴史上で有名な人物たちに比べるといささか地味にも感じられる義時。しかし、その人生のグラデーションを表現しているさまは観ている人たちの心を打った。
作中でひとつ、大きなフックとなっているのが、幼なじみの八重への恋心。頼朝に惚れている八重への思いを諦めきれずにずっとアプローチし続けていた。いや、そんなアプローチの仕方は健気というよりもはや少し怖いのだが?と思わなくもなかったけれど、「鎌倉殿の13人」の義時における「綺麗な部分」が本当にピュアに描かれている。
この恋が物語にどのように関わってくるのだろうか、と思ったものだが、最期までこの想いが彼の拠り所だった。そう考えるとなんとも切なく、愛おしい物語なのだろう、と思う。
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「愛」を表現するには
世の中には恋愛ドラマが数多とあるが、フューチャーされなくても生活の中に愛も恋もある。本能ともいえるその感情の昂りをキラキラと描けるのはどうしてなのか、と思う。時を経ても変わらない表現のひとつでもある愛や恋。小栗旬はあまりにも鮮やかにその感情を描く。それはあまりにまぶしく、目が痛い。それでもまた見たいと思わされてしまうのが、俳優・小栗旬の力なのかもしれない。
(文:ふくだりょうこ)
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