<徹底解説>『デッドプール&ウルヴァリン』がMARVEL映画史の集大成だと言える“3つ”のポイント
2. メタフィクションとしての面白さ
「デッドプールが“第4の壁”を破る」ことができ、「複雑な制作経緯を経て実現した」映画であることを知っておくと、本作をより楽しめるだろう。「第4の壁を破る」とは“主人公が観客に語りかけてくる演出”のこと。
本作では2019年に20世紀フォックス映画(『デッドプール』を含めたX-MENシリーズなどを製作した会社)がウォルト・ディズニー社によって買収された出来事を、そのネタの中心として扱っている。
一時は事実上の打ち切りも危ぶまれたX-MENシリーズだったが、異なる作品世界を繋げる「マルチバース」という概念や、デッドプールの「メタフィクション」的な立ち位置も功を奏し、見事にマーベル・シネマティック・ユニバースの世界と合流。
劇中では、この制作背景が物語構造や作品メッセージにも直結しており、X-MENシリーズのスピンオフキャラクターであるデッドプールにしか語れない物語になっているのだ!
また、本作が『マイティ・ソー』の弟を主役にしたスピンオフドラマ「ロキ」と多くのつながりがある点も興味深いポイントだ。
幾重にも存在する世界を束ねる組織・TVAや、世界からこぼれ落ちた存在が辿り着く虚無空間、そして、姿・形が異なる別世界の主人公たち……。
『デッドプール&ウルヴァリン』の世界観はまさしく「ロキ」を踏襲しているが、主人公がスピンオフキャラクター&メタフィクション的にMCUを再解釈する物語という、シリーズにおける作品の位置づけも共通しているのだ。
※ここからの内容は、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の重大なネタバレに触れています。未鑑賞の方はぜひ観賞後に記事をご覧ください。
ところで、『デッドプール&ウルヴァリン』の劇中では別世界のデッドプールが大量に登場したが、そこにもメタフィクション的な面白さがある。
以下で挙げるのは、今回の映画で登場した別次元のデッドプールの一例だ。
- ナイスプール
- ドッグプール
- レディ・デッドプール
- カウボーイデッドプール
- ローニンプール
- 禅プール
- キッドプール
- ヘッドプール
- 探偵デッドプール
- デッドプール2099
- ゴールデンエイジデッドプール
- ベイビープール
これらは原作にも登場するデッドプール軍団(Deadpool Corps)を基にしているが、演者などに実写版ならではの小ネタが散りばめられていた。
余談だが『デッドプール2』公開時のPR動画では偶然にもキッドプールそっくりのキャラクターが登場していた。
例えば、レディ・デッドプールを演じているのは、ライアン・レイノルズの妻でもある女優ブレイク・ライヴリー。
劇中では、冒頭で彼女の代表作「ゴシップガール」をネタにしているほか、産後であることが言及される(実際に2023年には第4子を出産している)など、実生活を踏まえたジョークが登場している。
あわせて「キッドプール」役はライアン一家の次女・イネス、「ベイビープール」役は末っ子のオリンが担当。「スクリーミング・ミュータント」役に長女のジェームズ、スタッフとして三女・ベティもクレジットされているなど、家族ぐるみで本作の製作に携わっている。
また、映画オリジナルとなるウェールズの国旗があしらわれた甲冑のデッドプールにも注目していただきたい。
演じたのはウェールズのサッカーチーム・レクサムAFCの選手ポール・マリン。これはライアン・レイノルズがチームのオーナーであることを踏まえた小ネタである。
Disney+にて配信中のドキュメンタリーシリーズ「ようこそレクサムへ」では、役者である彼がサッカーチームの買収を行い、チーム運営に奮闘する様子が取り上げられており、ファンは是非こちらもチェックしていただきたい。
ちなみに、吹替版では『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』のデッドプール役だった子安武人がナイスプールの声も担当。
ちなみにアニメの人気投票では、アベンジャーズの主要メンバーを抑えて1位を獲得する快挙を成し遂げている。
この背景を踏まえた日本版ならではのセリフも登場しているので、くれぐれも聞き逃さないようにしていただきたい。
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