<徹底解説>『デッドプール&ウルヴァリン』がMARVEL映画史の集大成だと言える“3つ”のポイント


3. ファン待望のヒーローたち


本作では様々なキャラクターたちがカメオ出演を果たしたが、彼らが決してMCUの中心人物ではないというのも、作品において重要なポイントである。

冒頭に登場したハッピー・ホーガンはアイアンマンの相棒であり、のちにスパイダーマンとも親密な関係を築いた人物。

彼が「ヒーローを支える役割も必要であること」を説き、「人に必要とされるヒーローになれ」と助言する場面は印象的だったが、まさしく本作ではファンが必要としていたヒーローたちが次々と登場する。

まず登場したのが、ヘンリー・カヴィルが演じる別世界のウルヴァリン。彼はマーベルと並ぶ大手コミック会社・DCコミックスの映画シリーズで、2013年からスーパーマンを演じてきたが、昨今の大幅なシリーズ再編で事実上の降板に……。

そのため、映画ファンにとっては思いもよらぬ形で彼のヒーロー姿を再び拝めることとなった。

実はスーパーマン役の降板後、「彼が新たなウルヴァリン役を演じたら……」というファンアートが話題になったこともあり、今回の出演はそんなファンの声を反映した抜擢だったのかもしれない。

続いて、虚無空間に迷い込んだデッドプールとウルヴァリンが最初に遭遇したのが、クリス・エヴァンスが演じるヒューマン・トーチ(ジョニー・ストーム)



クリス・エヴァンスといえば、いまや『キャプテン・アメリカ』のイメージが強いが、実は2005年に『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』でヒューマン・トーチを演じている。

劇中では「シリーズを引退したはずのキャプテン・アメリカが復活……?」とミスリードしておいて、懐かしのキャラクターが登場したことで往年のファンを驚かせた。

さらに、虚無空間に閉じ込められたヒーローたちとして4人の豪華キャストが登場する。



一人目は、ダフネ・キーンが演じるローラ(X-23)。『LOGAN/ローガン』において、ウルヴァリンの遺志を引き継ぐことになった彼女は、かつてスピンオフ映画も企画されていたキャラクター。

その活躍を想像していたファンにとってはたまらないバトルシーンが登場し、物語においてもウルヴァリンの内面を深掘りする重要な存在となっていた。



二人目は、ウェズリー・スナイプスが演じるブレイド。1998年からシリーズ3作品が制作され、多くのファンが復帰を待ち望んでいた伝説のヒーローである(ちなみに『ブレイド3』にはライアン・レイノルズも出演)。

本作では「ブレイドは後にも先にも俺だけだ」という主旨の発言をしていたが、これはマハーシャラ・アリが主演を務めるリブート企画が現在難航していることも踏まえたブラックジョーク。

同時に往年のファンにとっては、彼の心強い宣言に胸を打たれる名シーンとなっていた。



三人目は、ジェニファー・ガーナーが演じたエレクトラ。2005年に公開された『デアデビル』のスピンオフ作品の主人公である。

公開当時の評価は芳しくなかったものの、マーベル映画史においては女性ヒーローを主演に捉えた草分け的な作品でもあり、本作でフィーチャーされたことには大きな意義があったと言える。

四人目は、チャニング・テイタムが演じたガンビット。ガンビットはX-MENの人気キャラクターで『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』では、テイラー・キッチュが演じていた。

実は2015年頃からチャニング・テイタムが主演を務めるスピンオフ映画の企画が進められていたが、20世紀フォックスの買収を決定打として立ち消えになってしまった経緯がある。

チャニング・テイタム自身が長年熱望し、ファンも期待していた企画だっただけに、本作での登場とアクションシーンは感慨深いものとなっていた。

そして、劇中ではX-MENシリーズからも懐かしのキャラクターが多数登場。以下ではその一部を過去の出演作とあわせて紹介する。

  • ジャガーノート(『X-MEN:ファイナル ディシジョン』『デッドプール2』)
  • アザゼル(『X-MEN:ファーストジェネレーション』)
  • トード(『X-MEN』)
  • サイロック(『X-MEN:アポカリプス』)
  • パイロ(『X-MEN』三部作)
  • レディ・デスストライク(『X-MEN2』)
  • セイバートゥース(『X-MEN』)

これらのキャラクターたちは20世紀FOXの買収を経て、もしX-MENシリーズが一新されていれば、再登場することはなかったかもしれない。そのため短い出演時間とはいえ、彼らが集結したことに大きな価値があったと言えるのだ。

最後にシリーズとしては久々の登場となった、スタン・リーのカメオ出演も忘れてはならない。マーベルヒーローの生みの親として、数多くのマーベル映画に登場した彼。

2018年の逝去を経た『アベンジャーズ/エンドゲーム』を最後に、登場シーンはほぼ見られなくなってしまったが、本作ではクライマックスのバトルシーンでバスの広告として登場している。

MARVEL映画への愛」が核となる本作において、彼の登場は象徴的な瞬間だったと言えるのだ。

本作のエンドロールでは『X-MEN』シリーズ、『ファンタスティック・フォー』シリーズ(2015年のリブート版が登場するのもファンにとっては感涙の演出だった)などのメイキング映像が引用される。



この演出は『デッドプール&ウルヴァリン』がMCU以外のMARVEL映画のトリビュートであることを決定づけた。

約20年近く映画館でMARVEL映画を追ってきた筆者にとっては胸に込み上げるものがあったが、シリーズを追ってきていない人であっても「映画愛」の表現として、心を揺さぶられるものだったのではないだろうか。


さて、今回の記事では、『デッドプール&ウルヴァリン』を楽しむためのポイントを大きく3つのポイントに分けて紹介してきたが、いかがだっただろうか。

『デッドプール&ウルヴァリン』は、デッドプールが「世界」を救う物語だった。

ここでいう「世界」とは、主人公にとって「大切な友人たちや愛する者が生きる世界」だったが、それは同時に「X-MENシリーズの世界」であり、「20世紀フォックス製作作品を筆頭とするMCU以外のMARVEL映画の世界」でもあった。


ライアン・レイノルズがSNSに投稿した20世紀フォックス時代の集合写真。『X-MEN:アポカリプス』、『ファンタスティック・フォー(2015年版)』のキャストに加え、幻の企画『ガンビット』のチャニング・テイタムがいるのも何とも感慨深い。

ストーリーはもちろんながら、そのメタフィクション的なメッセージにも何とも感情を揺さぶられる傑作となっていたのだ!

ヒーロー映画史の集大成として、ぜひ、一人でも多くの皆様に目撃していただきたい本作。一度では拾いきれない小ネタの数々も、色褪せない感動的なドラマも、繰り返し劇場に足を運んでみることで新たな楽しみ方ができるはず。

ぜひ、今回の記事で紹介した内容を基に何度でも作品を楽しんでいただきたい。

(文:TETSU)

参考資料


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