「虎に翼」あやしい美佐江(片岡凜)再登場で怯む寅子<第86回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第86回を紐解いていく。
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放火事件発生
麻雀大会の行われた料亭で食事をしながら、航一(岡田将生)に「戦時中に何か?」と質問した寅子(伊藤沙莉)。でも、航一は答えず、席を立ってしまいます。
寅子「少し無神経だったかしら?」
優未「少し?」
寅子「ごめんなさい」
寅子の困ったところを優未(竹澤咲子)が冷静にツッコむ役割になるとバランスがとれそうです。いいコンビになってほしいものです。
本来、ツッコミのために語り(尾野真千子)も存在しているはずですが、いろいろな角度からツッコんでいかないと、寅子の場合、規格外なのだと思われます。
そこへ消防車のサイレンの音が聞こえてきて、近隣で火事が発生。
この火事、どうやら事件性のあるもので、翌朝、警官が逮捕状に判をもらいに来ました。
容疑者は朝鮮人。火災の火元であるスマートボール場の経営者である朝鮮人の金顕洙(許秀哲)が火事の直前、保険金を掛けていたことと、火元に火の気がふだんないことなどから、疑いがかかりました。本人は否認しています。
85回のレビューで、いろんな出来事が玉突き状態のことをピンボールに例えて書いたら、スマートボール場が出てきました。たぶん、世の中、NHKの番組「ピタゴラスイッチ」でおなじみの、ピタゴラ装置(ルーブ・ゴールドバーグ・マシン)のようだということを描きたいのでしょう(そんなドラマ、他局で以前、ありましたよね)。
朝鮮人に差別的発言をした警官に寅子は注意をします。
が、寅子が席を外すと「あれはこわい」「から回っているな」と寅子の悪口を言います。
その頃、新潟では朝鮮人や中国人との衝突が起こっていました。
他者に対する偏見は異国人に対してとは限りません。
深田(遠山俊也)が寅子が杉田太郎(高橋克実)を泣かせたという噂をさっそく聞きつけ、大喜び。いつもはへつらっていますが、影ではバカにしています。
小野(堺小春)のことは愛想がないとか、婚約破棄されているとか噂話をします。
高瀬(望月歩)は「あんげなやつに何を注意してもむだですよ」と警官のことを「あんげなやつ」呼ばわり。以前、寅子も杉田兄弟や森口のことを「あんな人達」と高瀬に言っていました。
判事補・入倉(岡部ひろき)も「事件ばかり起こして困ったやつらですよ」と朝鮮人のことを言い、寅子はとがめます。
登場人物たちは皆、他者を「あんな」呼ばわりをします。なぜわざわざいやな響きの言葉を遣うのでしょう。「虎に翼」は主人公をはじめとして、登場人物を清廉潔白で正義にはしないように慎重に描いているように感じます。誰もが、自分のことをさておいて、誰かを偏見の目で見てしまうどうしようもないところがあるように。
寅子も、本人のいないところで噂話をすることを好みませんが、その一方で、他人の心の内側にずけずけ踏み込んでいきます。
入倉が「いいやつらもいればどうしようもないやつらも多い」と言うことと近いような。ひとりの人間のなかにいい面もあればどうしようもない面も多いというような。知らんけど。
放火事件の初公判の日、小野の姿もありました。彼女は、職場で事件の話をしているとき、何か思うところがあったようでした。
金顕洙の弟・広洙(成田瑛基)が興奮して、この国の人は誰も信じられないとわめき出すと、小野は朝鮮語で止めます。
第18週のサブタイトルは「七人の子は生すとも女に心許すな?」です。たとえ7人もの子供をつくった妻でも心は許せないという意味です。心許せない女は今週、いるのか、いるとしたら誰なのか。
寅子は、美佐江(片岡凜)とすれ違います。もらった腕飾りが事件に関与していた人物も同じものを持っていたという、ぞっとする体験を味わっていますし、それを外して机のうえに置いておいたら美佐江は引きちぎって壊してしまったこともこわかった。だから、再会したときの寅子はひじょうに緊張した表情をしていました。でも、できるだけ平静に対応しようと努力しているのも伝わってきました。
美佐江が事件に関わっていたのかいないのかははっきりしていません。
(文:木俣冬)
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