続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年08月08日

「虎に翼」優三(仲野太賀)のお守りに手紙が入っていた<第94回>

「虎に翼」優三(仲野太賀)のお守りに手紙が入っていた<第94回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第94回を紐解いていく。

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寅子、考えを変える

花江(森田望智)がへそくりを使って新潟にやって来ました。
その晩は稲(田中真弓)も一緒に楽しい食卓を囲みました。

稲は大事な花江に久しぶりに会って、すっかりごきげんで、お酒が進み、興が乗って歌まで歌います。それも踊りつきで。なんかやたらとお酒を飲んでいるなあと見ていて気になったのですが、酔いが回って無礼講になってしまった感じを出そうとしていたのでしょう。
そのあと、すっかり酔いつぶれて、優未(竹澤咲子)と寝てしまうのも、あれくらいガブガブ飲んだから無理もないと思います。
田中真弓さんの歌、明るくてすてきでした。

優未が服を着たまま稲といっしょに寝てしまい、寅子と花江は久しぶりにふたりきりでおしゃべり。花江が来たのは、優未に手紙をもらったから。
寅子に気になる人ができたものの、優未のことを気にして思いきれずにいるというようなことを心配しているのです。

花江に言われても、寅子がまだはっきりできずにいると、優未が起きてきて、優三(仲野太賀)のお守りの中を開けます。この間、航一(岡田将生)が来たときに、ちょうど、寅子が航一に説明しながら見せていた、寅年の寅子特製の思い出のお守りです。

お守りのなかに手紙が入っていることに優未は気づいていました。寅子には思いがけないサプライズです。手紙には、優三がもし死んで、再婚を考えた場合の注意事項が記されていました。

優三はほんとうにいつも寅子思いで、寅子のやりたいようにやれるように考えてくれて優しく導いてくれていました。亡くなってもなお、寅子の迷いを払拭してくれます。
すべて忘れてその人のもとに飛んでいってほしい
(優三)

米津玄師の主題歌の歌詞にある「飛んでいく力」「きままに飛べ」の「飛翔」への希求が恋に回収されたことにびっくりしたのと、最後の手紙に、妻の再婚への後押しを強く心配し、娘への言葉がややついでっぽいことにすこし悲しかったです。自分が優未だったらそれこそスンっと冷めた気持ちになるような。でも一緒に生活した時間が短いからもともとさばさばしているのかもしれませんが。物語だからいい話を期待しちゃうんですよね。

その頃、航一はライトハウスでひとり食事をとっていました。何時なのか。もう閉店していてまかない飯をごちそうになっているような雰囲気。

そこで涼子(桜井ユキ)が寅子は全方位に愛があるが、恋愛ごとの機微のようなことには無頓着なのだと注意します。涼子は、花岡(岩田剛典)のことを言っているのでしょう。彼の場合、寅子に気がありそうに見えてその気になったらがっかりする結果に終わったので、またそうなるのではないかと涼子は心配しているのでしょうか。

涼子の心配は杞憂であることを、涼子も航一も知りません。

翌日、寅子は、朝、出勤した早々、高瀬(望月歩)と小野(堺小春)の友情結婚に口をはさんだことを謝罪します。そして好きにするといいと言うのですが、そもそも、そんなことを寅子が口をはさむことではないし、朝いちで職場でそういう話をするのもなんだかなあという気もします。寅子ってヘンな人。

モデルの三淵嘉子さんはどんな人だったのでしょう。少なくとも、初婚の相手には自分から結婚の意志があったと記録には残っているようで、契約結婚ではなかったのです。もし、寅子がモデルの人生にならって、優三に思いを寄せて結婚したら、もうすこしわかりやすい話になっていたように思います。現代性を盛り込み、結婚制度への疑問を描いてしまったがために、結婚制度に疑問のあったヒロインの再婚問題は複雑すぎて、これだけをテーマに物語が一本書けそうですから。高瀬と小野の友情結婚に、寅子の過去の契約結婚を重ねることで、寅子が過去を引きずって航一との関係に一歩踏み出せないでいることを一生懸命書こうとしているのだと思いますが、よけいにこんがらがってしまっているような。作りごとに作りごとを重ねておかしくなってしまう例の典型に思えます。

寅子をちょっとヘンな人に描くのは、へんだなと思っても、彼女を否定することが差別につながるのだということを訴えたいのかなと思って見ています。
自分とは違うと感じるものも認め受け入れることが平等の精神です。
世の中には、寅子をちっともヘンだと思ってない人も存在しているはずです。
たぶん、このレビューを読んでいる人のなかにも、このレビューがヘンだと思う人もいるでしょう。それこそ世界そのものです。


(文:木俣冬)

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