「虎に翼」寅子(伊藤沙莉)VS桂場(松山ケンイチ) 法とは何か<第122回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となるヒロイン・寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第122回を紐解いていく。
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解決しない問題たち
朋一(井上祐貴)の家裁異動、少年法改正、家裁のことなど問題山積みの寅子(伊藤沙莉)。思い余って、桂場(松山ケンイチ)に物申しに行きます。
司法の独立のためにはやむなしで、朋一たちが連帯すると、少年法を政治の介入から守ろうとすることの邪魔にもなるというような詭弁を言う桂場に、「純度の低い正論は響きません」と寅子はかつて彼に言われたことを言い返します。
第25週は最終回が近いので、過去を思わすものがちょいちょい出てきます。
121回の梅子(平岩紙)が言った「いいほうに流れる」もかつて、香淑(ハ・ヨンス)が言った言葉でした。
寅子は「穂高イズム」はどこにいったと桂場を挑発します。いまの桂場は、若く希望のある判事たちを、雨だれにすることもなく切り捨てたと。
かつて、寅子は「雨だれ石を穿つ」という穂高(小林薫)の言葉に、自分たち女性が雨だれになることを強いられたと恨んでいました。
雨だれのようにコツコツと時間をかけて状況を打破する精神もわかってはいる(じょじょにわかるようになった)ものの、自分を犠牲にすることなくいまの自分を大切にしたいと思ってやってきたのです。
遠い未来のために自分は犠牲になってもいいという理想論よりもいま自分がやりたいことをやるべきかという考え方は、「虎に翼」で最も難しい問題で、「なぜ人を殺してはいけないのか」と並ぶほどではないかと思います。
さらにそこに、自分の理想のために雨だれにもならない人を作り出すトップ(桂場)の傲慢さ。
そうまでしないと、司法を守れないと桂場は追い詰められているようで。
でも、正直なところ、寅子は自分のやりたいことを、運良くやれてきているだけで、最高裁長官・桂場の立場はわかってないのではないでしょうか。が、わかってなくても思ったことを言うことが大事なのかもしれません。いま、桂場は上り詰めて、誰も彼に助言する人もいないでしょうから。
ぎりぎりとした顔をする桂場に、イマジナリー多岐川(滝藤賢一)が現れ、桂場の考える司法の独立はおそまつでさみしいと嫌味を言います。法を守ろうとするあまり、人間関係を切り捨てていいものか。
少年法の改正案では、これまで二十歳を基準に少年と成人を分けていたのを、18、19歳まで引き下げること。
寅子たちが18、19歳の少年に大事にしている調査がされなくなることに、寅子たちは反発します。
その頃、よね(土居志央梨)と轟(戸塚純貴)の事務所では美位子(石橋菜津美)の尊属殺の件で、奮闘中。尊属殺とは、年上の家族を殺すことは重罪というもので、なぜ、その行為に及んだかが問われない。明らかに、美位子の動機は殺意を抱いても致し方ないものがあるのに。
少女の頃、ひどい目に遭ったことのあるよねは、尊属殺を合憲とすることに苛立ちを隠せません。
少年法の引き下げといい尊属殺といい、法というのはときに守ってもらえるものですが、ときに法に縛られて人間に不利益を与えることになるのですから、容易に頼ってばかりもいられません。法を司る寅子たちは、どう向き合っていくのか、これがドラマの最終目標でしょうか。俺達の戦いはまだこれからだ、になるしかない気はしますが。
久藤(沢村一樹)が「タッキー(多岐川)に会いたいね」と言っていたら、「あさイチ」に多岐川役の滝藤賢一さんがゲスト出演でした。
(文:木俣冬)
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