「虎に翼」あれから20年近く、美佐江(片岡凜)に似た少女・美雪現る<第123回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となるヒロイン・寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第123回を紐解いていく。
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直明、実家を出る
少年法改正案について、寅子(伊藤沙莉)は職場の若者たちと話したり、猪爪家で家族討論会を行ったりしながら考えていきます。「正直私はピンと来てないわ」と花江(森田望智)が言いますが、視聴者も花江の気持ちに近いのではないでしょうか。
寅子が家裁に勤務していること、もともと、上司・多岐川(滝藤賢一)が家裁に深い愛情を注いでいて彼女がその理念を継いでいるからというのもあるわけですが、寅子と家裁の仕事がいまひとつ結びつかず、少年法改正案の議論がドラマのなかで浮いているように感じてなりません。
問題視されているのは、少年犯罪が年々凶悪化しているので、少年法によって凶悪犯罪を行った少年まで罪が軽くなるのはいかがなものかという意見もあるからです。寅子たちはそうはいっても少年たちに丁寧に聞き取り調査を行って、対話と歩み寄りを大事にしているので改正法には反対なのです。
でも若い世代は、寅子たちの時代に、きちんとシステム化しないで、個人の努力で対話と歩み寄りをしてきてしまったことも問題ではないかと冷静に指摘します。
ピンと来ないといえば、直明(三山凌輝)が実家を出ることを決めたことです。
あんなに、家族が離れることを恐れていた直明がふっきれたらしく、「自分のなかの戦後がやっと終わったというか」と言うのです。
みんなで暮らしたいと言い続けた直明の気持ちがよーく理解できる視聴者はどれくらいいるでしょうか。というのは、直明の中心のエピソードがほぼなく、寅子が直明の話を聞いているだけだったので、彼の心情に寄り添いづらかったからかなと……。脇役なので仕方ないのですが……。
何をきっかけに彼の戦後が終わったのか。時間なのか。子供が大きくなったからなのか。そもそも、結婚して自分の家族ができるから、家を出ても新しい家族ができるわけで、それが結婚と独立というものであり。ドラマの都合で猪爪家を大家族として描かないといけなかっただけとしか思えないのが、残念でありました。最初から近所に別居すれば済む話を20年以上も経って、いまさら近所に引っ越すのです。謎であります。むしろ今度は子供たちが、住み慣れた家から引っ越したくないと言い出す気がします。
直明の考えがどうも理解できないという視聴者(筆者)もいるくらいですから、少年法改正が必要か不要か、決まらないのも無理はないでしょう。
その頃、寅子の家に、同期が集まります。香淑(ハ・ヨンス)が弁護士になったことに刺激を受け、涼子(桜井ユキ)も司法試験を受けることにして、同期が応援に集まりました。みんなで問題を解いていると学生時代を思い出します。いくつになっても心は変わりません。
変わらないといえば、寅子は、20年ほど前、新潟で出会った美佐江(片岡凜)にそっくりの女子高生・美雪と出会います。「もしかして佐田先生ではないですか」と美雪から声をかけてこられて寅子がびっくり。ぎくり。寅子が有名人だから顔を知っていたということなのですが……。
あまりに美佐江にそっくりで、彼女の担当らしい音羽(円井わん)の腕にミサンガがないか確認してしまいます。
20年前という遠い記憶ですが、ミサンガのことも強烈に覚えていたとは、よっぽど印象に残った少年事件だったのでしょう。
寅子は優未のやりたいことをやらせてあげることを優先しながらも、内心、優未が大学を辞めて、雀荘と笹竹で働いていることを心配していてもやもやしているようで、つねにあらゆる意見を公正に見極めないとならない判事という仕事についたがために、心が疲弊してしまわないか、心配になります。そのうえ、未解決な美佐江にそっくりな人物が出てきて……。
寅子は、それでも法律の仕事が好きだから、どんなに問題山積みでも颯爽と明るく生きていけるのでしょうか。回想を見ると、女子部時代が一番生き生きと気がしてしまいます。最終回までに寅子の純粋に明るい笑顔を見たい。
(文:木俣冬)
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