「虎に翼」イマジナリー優三さん(仲野太賀)でてきてよかった<第129回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となるヒロイン・寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第129回を紐解いていく。
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子育てに失敗なんかしてない
「みんなが好きなことをしてみんなが応援していれば我が家は安泰だわ」(花江)
どんな人生も肯定する。それが「虎に翼」なのだと思う、最終回ひとつ前。
優未(川床明日香)が人生に失敗したようなことを言うのを聞いて、そんなことないと言いながら、そんなことを思わせてしまった自分は母の役割を果たしてないのではないかとクヨクヨし始めた寅子(伊藤沙莉)。
そこに優未が戻ってきて、今度は寅子を励まします。今、自分が色々なことをやっているのは好きなことがたくさんあるからで、拠り所をたくさん持ったほうがいいと寅子に言われたからであると感謝を述べます。
安定思考で生きるのもいいけれど、そうじゃなくてもいい。興味を持ったことはなんでもやってみればいい。とはいえ、優未は実家暮らしで、その実家が太過ぎるほどなので、高等遊民という贅沢が可能なのですが、その事実にはドラマは触れないのです。
この感動の母娘のシーンで流れるのは、優三(仲野太賀)のテーマ曲ともいえそうな洋楽。優未が外出した後、小上がりに優三が現れます。優三が寅子に望んだ、自由な生き方を、娘もしていることを優三は満足そうです。
イマジナリー優三の姿に寅子は涙しながら微笑みます。寅子は優三さんと一緒にいる時が一番いい顔をしている気がします。素直な顔になる。おそらく腑に落ちて演じることができるのだと思います。
そして唐突に、寅子が横浜家庭裁判所の所長に出世します。女性で初めて家庭裁判所の所長になったという栄誉です。
早退して猪爪家に報告に行き、その晩は家族で宴会。
花江(森田望智)はもういつでも死んでも悔いはないようなことを言います。彼女は社会に出て男性と肩を並べて仕事することには興味がなく、家の仕事を生涯やっていきたいと願っていて、それが叶いました。それを寅子のおかげと感謝しますが、寅子は、花江自身のおかげだと言い換えます。
確かに花江のように主婦を極めることも尊い。それもスーパー主婦でもなく、平凡なところがこのドラマの良さかもしれません。世の中には、スーパーな主婦ばかりではないですから。
そして笹竹で、女子部が集まって寅子の出世祝いが行われます。なぜかいつも女子部に轟(戸塚純貴)が混ざっています。寅子が57歳くらい設定なので、みんなアラカンでしょう。梅子(平岩紙)は70歳に近く、うとうとしてばかり。これはこの間まで再放送されていた「オードリー」(00年後期)のうどん屋の主人(佐川満男)も年老いて居眠りばかりしていたことと重なります。
梅子は老いを演じていますが、女性陣はほぼ老いて見えません。轟もこういう声の大きなおじいちゃんいるなあと思わせますし、なんといっても桂場(松山ケンイチ)の老け方は見事です。
定年を迎え、久しぶりに笹竹に来店。
寅子が法とは船のようなものと考えていると語りかけると、桂場は「私は今でもご婦人が法律を職にすることも学ぶことも反対だ」と不穏なことを言い出して……。最後まで捻くれていますね。
「人生という船旅を快適に」という寅子のセリフ、ポエムCMみたいで、ちょっと笑ってしまいました。
(文:木俣冬)
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