「おむすび」なぜ結はおむすびを「冷たい」と不満を言ってしまったのか【第22回】
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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第22回を紐解いていく。
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真紀ちゃんが
第22回のアヴァンは第21回のショックなシーン。せっかく持ってきてくれたおむすびを「冷たい」「チンして」と言ってしまう結(幼少期:磯村メアリ)。この場面、リピートはきついなあと思いましたが、そのあとにつづく、雅美(安藤千代子)の神戸愛のセリフはリピートすべき重要なセリフでした。
安藤さんのセリフまわしは、そこだけ古き良き朝ドラのようでした。
「おにぎりあたためますか」という北海道のバラエティ番組があります。大泉洋さんと戸次重幸さんがレギュラーで、03年からはじまりじわじわ人気を獲得しました。このように、おにぎりをあたためる習慣も地域によってはあるようです。が、おにぎりは本来冷めてもおいしい食べ物のはず。結はなぜ、チンしてほしいと言ったのかーー。
さすがに神戸で結が「おにぎりあたためますか」を見ていたとは思えません(当時関西で放送していたか不明)。
1月17日は真冬。体も冷えて、おにぎりもずいぶん冷えてしまっていたため、ついそんなことが口に出てしまったのではないでしょうか。
幼いがゆえの残酷な言葉に、愛子(麻生久美子)も雅美さんもやさしい対応だったことに着目したいです。「なに言うの!」と頭ごなしに叱りつけないところが大人の配慮です。
大人の配慮と涙の意味を全然わからないまま半分(三分の一?)に分け合ったおにぎりを食べたことを、波の音を聞きながら思い出す結(橋本環奈)。いま思えば、何言ってしまったのだと身が縮む思いでしょう。後悔してもしたりないに違いありません。
それを心配そうに見つめる四ツ木(佐野勇斗)。
再び、回想。
聖人(北村有起哉)が家に戻ると家は崩壊していました。あとから、歩(少女期:高松咲希)と結も来て、変わり果てた家と商店街に言葉もありません。今度は愛子が「言ったらあかんって言ったでしょ」と声を大きくしました。
ここでも結は、崩壊した家があの家だと思えません。
さらに容赦なく、悲劇が米田家を襲います。
姿の見えなかった真紀ちゃん(大島美優)がタンスの下敷きになって亡くなっていました。タンスの下敷きとは、なんという生々しさでしょうか。
歩はショックで何も食べられなくなってしまいました。
真紀ちゃんのことを、実家の部屋で思い出す歩(仲里依紗)。
1995年1月の出来事を、結と歩、それぞれの視点で回想しているように描く手法は、小説だと、結の章、歩の章と章が分かれているような感じです。同じ出来事でも、それぞれがどこを重要視しているのか、違いがわかります。結はいろんなことが理解できなかったことが、歩は真紀ちゃんのことが大きな傷となって、9年経っても残っているのです。
結の話を聞いて四ツ木がむせび泣きます。なんて純粋な少年なんでしょう。彼が視聴者の視線を担っています。
(文:木俣冬)
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