「おむすび」沙智(山本舞香)と佳純(平祐奈)の舌戦がこわい【39話】
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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第39回を紐解いていく。
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かわいい森川?
神戸での新生活のはじまり。
ヘアサロンヨネダはたちまち、旧知の人たちのたまり場になります。
朝ドラでは飲食店がたまり場になることが多いのですが、今回は珍しくヘアサロンです。
「そのために待合席、広くしてみました」(愛子)
って、しょっちゅう髪切ってもらったり顔剃ってもらったりするわけでもないのに休憩所になっていたら、ほかのお客さんが来づらい気がしますが、この商店街はもう常連しかいない世界と考えていいのでしょうか。
客ではないただ居座っている人の眼を配慮したのか、新たに開店するにあたり、カーテンで個室に仕切れるようにし、顔そりやスキンケアができるようになっています。
その説明を愛子がし、美佐江(キムラ緑子)がやけにはしゃぎます。これは台本にあるのか、台本には何もないから仕方なく緑子さんが埋めているのか、「ホンマや個室になるやん」とか「うち顔剃られるの見られとうなかったんよ〜」などと、なんとも空虚な感じです。
美佐江という人物は序盤の登場からつねに騒いでますが、明るさや元気が浮いていて、すごく気になります。もしかして、筆者の知識がないだけで、このへん、吉本新喜劇のような、独特の西の笑いをやろうとしているのかもしれません。でもなんか違和感が……。このドラマ、あとで、実はーーというのがしょっちゅうあるので、美佐江さんの空元気にも何かあるかもしれません。
ヘアサロンの場面の終わりは、「そういえば結ちゃんは…」「今日は…」というセリフがあり、そこから結(橋本環奈)の栄養士の学校の場面に転換します。
セリフで場面転換を促すってすごい力技だと感じますが、そうしないとわからない視聴者も世の中にはいるという、視聴者層を思いきり広げていることが、逆に目の肥えた視聴者を逃しているような気もしないでありません。このバランスが難しいところでしょう。
専門学校ではさっそく授業が本格化、その内容は想像していた以上に難しく、結は戸惑います。しかも、同じ班になった沙智(山本舞香)と佳純(平祐奈)がそれぞれキツイ性格でギスギスしています。沙智はストレートにキツく、佳純は言い方は柔らかいがいちいち棘があります。彼のために栄養士になるなどと自己紹介した結も攻撃対象にされていますが、結の良いところは誰のことも馬鹿にしないことです。
沙智も佳純もなぜか、他者の考えていることを軽視しています。
沙智は早々に班を変えてほしいと先生に申し出て、そのせいで逆に班で協力して調理の献立を作る課題を出されてしまいます。
どうなる、献立作成。
班には沙智、佳純、結のほかにもう一名、森川学(小手伸也)がいます。「不動産会社の元営業で、入院をきっかけに栄養士を志す」という設定で、年齢は45歳。見た目は先生のようですが生徒です。温厚そうに見え、班のムードメーカーになりそうな森川を演じる小手伸也さんのコメントを見てみましょう。
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Q1 出演が決まったときの気持ちは?
初めての朝ドラが 100 作目の「なつぞら」で、今回の「おむすび」は 111 作目。なんだかキリのいい数字にまた呼んでもらえましてとても光栄と申しますか(笑)、純粋に嬉しかったです。キャスト発表で橋本環奈さんと小手伸也が同級生とニュースが出た時は、ネットがざわつきまして(笑)。僕も最初はマジか!と思って一瞬学生服の自分を想像したんですけど、よくよく聞いてみると専門学校だから年齢が上の人もいるんですよね。橋本環奈さん、山本舞香さん、平祐奈さんの中に小手伸也がいるっていう状況は、一見オチのようなポジションに思われるかもしれませんが、社会人を経験して学び直すために専門学校に入る方は実際に大勢いらっしゃいます。そういう方々のリアリティをしっかりと表現したいと思って臨みました。
Q2 演じる役・森川学について
森川はグイグイ系ではなく、割と一歩引いたキャラクター。今まで演じてきた役柄上あまり信じてもらえないんですが、素の僕自身もわりと森川に近いメンタリティなので(笑)、役を作り込まずともこの現場にいると自然と森川になる感じです。橋本さん、山本さん、平さんの 3 人はもともと知り合いだったり共演経験があったりするそうですごく仲が良く、僕が混ざるとどうしてもおじさんがいるなっていう感じにはなるんですが(笑)、そのリアリティを活かしつつ、共演者としても信頼してもらえるよう心がけたつもりです。
今回、脚本家の根本さんからコメディリリーフ的な期待をいただいているような部分も感じてはいたんですが、そこよりもバイプレイヤーとして主演・橋本さんをどれだけお芝居で手助けができるか、橋本さんにフォーカスがちゃんと当たるお芝居をしないと!という使命感の方が強かったです。やはり主人公の成長や人生を描くのが連続テレビ小説の醍醐(だいご)味。どういうアクセントで、どういうスパイスでいれたらいいのかなと常に考えていました。そんな俳優・小手伸也としての思いが、「人のために」「仲間のために」と栄養士の学校で学ぶ森川の気持ちと、ちょうどリンクしていた気がします。
Q3 J 班と J 班メンバーについて
J 班は湯上さん(平さん)と矢吹さん(山本さん)がいがみ合ってる中で米田さん(橋本さん)が「まあまあ」と言っているのを、森川がさらに外側から全体的に「まあまあ」と言っている構図。そのユニット感がうまく出ているといいですね。
森川にとって非常に居心地がいい空間で、娘と言って違和感がないほどの年齢差のある女の子たちと親子のようでいて、仲間であり、同級生。意外と最初からそんな空気でいられたのは、やっぱり皆様のおかげで、何より座長として僕らを気遣ってくれた橋本環奈さんのおかげです。J 班で仲良くなるために 1 回食事会でもした方がいいのかなという気持ちでクランクインしたんですけど、すぐに「あ、これ必要ないや」って(笑)。現場でのそういう距離感や関係性に助けられて、すごく自然に撮影を楽しむことができました。
あと、これは自覚がなかったので難しかったんですが、3 人(橋本さん、山本さん、平さん)が森川をかわいいかわいいと言ってくれるので、ここで喜んではいけない!変に狙ってあざとくなってはいけない!と訳もわからず常に気をつけていました(笑)。
Q4 視聴者へのメッセージと見どころ
僕自身の勉強不足もあるかもしれませんが、管理栄養士という職業を描くドラマは結構珍しいですよね。専門学校での勉強ぶりとか、そこでの経験が結ちゃんの社会人としての、管理栄養士としての生き方を決めていくので、阪神・淡路大震災という物語の大きな起点に次ぐ、第 2 の起点のような気もしています。専門学校にリアリティがないと全体的なリアリティにも影響してしまう部分があるなと感じますし、シーン数はすごく限られているかもしれないですけれども、栄養学校での日常を表現する上ですごく重責を担ってると思うので、ぜひ注目してほしいですね。
小手伸也さんはいつもドラマである種の飛び道具的な存在として活躍しますが、このコメントを読むと、やりすぎないように、役割のリアリティを考えて、慎重に取り組んでいらっしゃるようです。
「おむすび」は阪神・淡路大震災から30年、復興してきた神戸を思うドラマでもあり、単なるひとりの女の子が栄養士を目指すコメディではないので、演じる側もさじ加減に気を使っているのでしょう。
時々はさまれる渡辺(緒形直人)のシーンだけ、ものすごく重たいのが、このドラマの難易度を物語っています。
(文:木俣冬)
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