『20センチュリー・ウーマン』を婚活パーティーの後、男一人で見に行ってみた。

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前作「人生はビギナーズ」で注目され、日本でも多くのファンを獲得したマイク・ミルズ監督の最新作。それがこの「20センチュリー・ウーマン」だ。

今回自分が鑑賞したのは、公開二日目の日曜日夜7時の回。意外にも女性だけでなく、男性の一人鑑賞や男性グループでの来場が予想外に見受けられた劇場内は、ほぼ満員の盛況振り。

本年度アカデミー賞の脚本賞にもノミネートされた本作の評判は、やはり多くの映画ファンのアンテナに届いているようだ。

残念ながらアカデミー賞の受賞は逃した本作だが、果たしてその内容と出来はどうだったのか?

予告編

ストーリー

1979年、カリフォルニア州南部にある町サンタバーバラ。一人で息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)を育てるドロシア(アネット・ベニング)は、15歳になり思春期を迎える彼をどう教育したらいいか頭を悩ませていた。

そこで、ルームシェアするパンクな写真家アビー(グレタ・ガーウィグ)とジェイミーの幼馴染で友達以上恋人未満の関係にあるジュリー(エル・ファニング)に、彼の成長を手助けしてほしいと願い出る。時代の転換期を生きる彼女たちとジェイミーの特別な夏がはじまる。

個性的だが魅力的な3人の女性と、15歳の少年の素敵な関係に注目!

本作の舞台となる1979年は、実は女性と映画界にとっての転換期と言える重要な年。1970年代終盤から、映画界には「女性映画」のジャンルが台頭し、映画界全体が女性中心の作品製作へと、大きく転換して行くことになるからだ。

本作で描かれるのは、やがて訪れる80年代への、正に時代の境目を生きた3人の女性の姿。

15歳の少年の目を通して語られる彼女達の生き様は、正直男から見ると理解不能な部分が多いかも知れない。しかしそこには、監督自身の家族の姿を反映させただけに、確かにあの時代を生きた女性たちの、生の声や姿が焼き付けられている。そのためか、本作のラストで語られる登場人物達のその後の消息は、まるでドキュメンタリー映画のエンディングの様に、リアルに感じられたと言っておこう。

特に本作で注目すべきなのは、主演のアネット・ベニングの素晴らしい演技と、年齢を重ねた女優が見せるその存在感だ。

若くて綺麗なだけが女優の魅力や価値では無い、積み重ねた自身の人生こそが女優にとっての最大の武器なのだ!そう観客に教えてくれる彼女の姿は、是非劇場でご確認を!

最後に

本作のタイトルである「20センチュリー・ウーマン」の意味と、そこに込められた監督の想い。そこには実に深く重いものがある。

思えば、映画のラストでアネット・ベニング演じるドロシアが、誕生日プレゼントに贈られた遊覧飛行で乗るのはプロペラの複葉機だし、更にそこに流れるのは映画「カサブランカ」の有名な曲「 As Time Goes By」。どんなに時代が変わって技術や文明が進んでも、昔からある良い物は変わらない。女性の生き方やその姿・魅力も同じ。そんな普遍的なテーマが観客に伝わる、見事なカットだ。

もう一つ、映画中盤の主人公のモノローグでも明らかになる様に、実は本作のタイトルには、残念ながら21世紀をギリギリで迎えることが出来なかった女性、という意味も含まれている。

現代の観客から見れば、1979年に生きる女性像は既に時代遅れの存在として感じられるかも知れないが、きっと当時の人々から見た3人の女性達の生き方は、かなり個性的で進歩的な物だったに違いない。

時代は変わっても、自分の考えやスタイルを貫き続ける女性の苦悩や輝きは、永遠に世代を超えて受け継がれて行く。そして、男はそんな彼女たちを見守る存在であり続ける。そんな監督の想いを感じながら、今回は劇場を後にすることが出来た。

「判り易い内容」や「過度の説明」を好む最近の映画観客の嗜好には逆らって、本作では劇的な出来事や、はっきりした結論は登場しない。そのため鑑賞後に「物足りない」、「スッキリしない」、「結局何だったの?」そう思われる方がおられるのは当然のこと。

但し、その分鑑賞した人の性別や年齢、職業やその日の気分によって、様々な捉え方や理解が出来るようになっている本作。

誰が見ても一つの正しい答えしか得られない映画は、確かに見てスッキリするかも知れない。だが、たまにはこういう多面的な鑑賞が出来る映画を見るのも、自分の感性と内面を豊かにしてくれるはず!

実は今回、残念な結果に終わった婚活パーティーの後、二次会に参加せず一人新宿で本作を鑑賞したのだが、男が見ても実に共感出来て、得るところが多かったと言っておく。(多分に、この時の状況や気分による所が大きかったかも?)

但し、鑑賞後の女子力アップに繋がるかどうか?それはあなた次第!恋愛や生き方・将来について悩む全ての女性に、本作を全力でオススメします。

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(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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