七姉妹SFサバイバル『セブン・シスターズ』は必見!今年度屈指の拾い物的快作!

(C)SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016

正直なところ、昔も今も日本は映画の公開本数がハンパではなく多くて、いくら見ても見きれないものがあるわけですが、そうなると我々の商売、ついつい何かとても面白いものを見落としてしまっているのではないかという恐怖心が芽生えたりもしてしまいます。

大きく宣伝されたメジャー映画会社の大作などは割合触れる機会も多いですが、そうではないプログラム・ピクチュア的小品までどこまで目を行き届かせるか、その意味ではある程度好きなジャンルを絞って、その中から自分なりに面白いものを発見していくしか術はないのかなと悟ったりもしてしまう昨今が続いてはおります……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.263》

そんな中、これは絶対に面白い! と久々に自負しながらお勧めしたい作品を見つけてしまいました。

スウェーデン映画『ミレニアム』シリーズでヒロインを演じたノオミ・ラパスが何と双子ならぬ七つ子をひとり7役で演じる近未来SFバイオレンス・アクション映画『セブン・シスターズ』です!

一人っ子政策が施行された未来社会
隠れ住む七つ子姉妹の壮絶な運命!

映画『セブン・シスターズ』の舞台は、そう遠くない未来社会。世界規模の人口増加や自然災害による食料不足などに対処すべく、収穫量が増えるよう遺伝子操作された食物が開発されますが、その影響で多生児の出生率が増加。この事態を憂慮した欧州連邦は、一家族につき子どもはひとりまでという「児童分配法」を施行。もし二人目以降が生まれた場合、地球の資源が回復するまで特殊機械で冷凍睡眠されることとなって久しい社会です。

そんな中、ある七つ子の姉妹が祖父の許で体制から隠れて育てられていました。
彼女らは祖父から「月曜」「火曜」「水曜」などと曜日を名前として与えられ、自分の名前の曜日にだけ“カレン・セットマン”という人格を与えられ、外出することが家族のルールとして定められています。

やがて月日が過ぎて大人になり、それぞれ性格も才能も力量も大きく違いが出てきて久しい七姉妹ですが、それをうまく利用して“カレン・セットマン”は銀行務めのエリートとして出世街道を歩むところまで来ています。

そんなある月曜日、カレンに扮して出金した「月曜」が夜になっても帰宅せず、行方不明となってしまいました。

翌火曜日、「火曜」が外に出て「月曜」の足取りを追おうとします。しかし、そこに児童分配局の魔の手が、そして姉妹が隠れ住むアパートは謎の武装集団が襲来。

一体何が起きているのか? 水曜日、かろうじて生き延びた姉妹の中から「水曜」が外出し、真相をさぐるべく動きますが、またしても……!

(C)SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016

痛烈なメッセージと秀逸なエンタメ性
これぞSF映画の本領!

本作はキャラクターの全く異なる七姉妹をノオミ・ラパスがひとりで演じきりながら、危機また危機に見舞われる姉妹が、その中から真相を究明していく姿をスリリングに描いた快作です。

一見、架空の未来社会のお話ではありますが、「児童分配法」の設定は完全に中国の一人っ子政策を基にしたもので、今後もこうした法律が施行されない保証などどこにもありません。

また、かつて出産禁止法を犯して子どもを産んでしまった一組の夫婦の逃避行を描いた『赤ちゃんよ永遠に』など、1970年代初頭には反体制的ともいえる痛烈なメッセージを備えたSF映画が流行したものですが、本作はその再来といってもいいほど骨太な世界観を背景に秀逸なストーリーが組み立てられたエンタテインメントとして大いに屹立しています。
(ちなみに今年は『パッセンジャー』『メッセージ』など、仕掛けもさながらマインドを重視したクオリティの高いSF映画の秀作が多いですね)

児童分配法を促進させながら政界のトップに躍り出ようとしている政治家をグレン・クローズが演じていますが、こういった役柄をやらせたら彼女の右に出る者はいないというか、思わず現実の誰かさんを彷彿させる恐ろしさがみなぎっています。

本作はこういった反体制SFとしてのベースを敷きながら、見ている側にも痛みを伴わせるほどのバイオレンス・アクションを描出しながら、やがては意外な真相へとたどり着きますが、そのあたりまで記すのはネタバレの野暮となりますので避けるとして、マックス・ホトマンが記した本作の脚本は、映画化が実現していない優れた脚本をハリウッド映画人が選ぶ“ブラックリスト”2010年度版に入っていたもので、逆にこれほどの面白さを持つ脚本がなぜ今まで映画化されなかったのか首を傾げたくなるほどです。

監督はノルウェー出身で『処刑山』や『ヘンデル&グレーテル』など日本では劇場未公開ながらもマニアの熱い支持を得続けているトミー・ウィルコラ。実は本作が日本で初の劇場公開作品となったのですが、これを機にもっと注目されてしかるべき存在です。

もともとの脚本は主人公は男性だったそうですが、これを女性に変えてリライトさせたのもウィルコラ監督です。

主なロケ地はルーマニアの首都ブダペスト郊外で、その寒々とした風景が作品のすごみを増幅させています。

何はともあれ、映画ファンを自認する人ならば、ひとりではなく友人知人恋人でも家族でも連れて、この快作を見に行くべきでしょう。特に女性はセブン・ヒロインの魅力に圧倒されることかと思われます。

仕掛けが大きな映画も結構ですが(もちろん本作も七つ子姉妹ゆえにVFXは欠かせませんが)、やはり映画はアイデアが命。これを基軸にみんなが動けば必ず面白いものが出来上がるという好例です。

本当にこれは今年度屈指の拾い物的な快作として、必見!

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(文:増當竜也)

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