『アクアマン』が非の打ちどころのない傑作の理由

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2019年もひと月過ぎましたが、これからしばらくの間アメリカ映画ファンタジック超大作のラッシュが始まります。

2月『アクアマン』『ファーストマン』『アリータ/バトル・エンジェル』、3月『移動都市モータル・エンジン』『バンブルビー』、そして4月は『アヴェンジャーズ/エンド・ゲーム』!

映画ファンとしてはお小遣いのやりくりに困るほどのこのラッシュ、しかもこれらすべてが(『エンド・ゲーム』はまだ見られませんけど)快作に仕上がっている!

そこでまずは快作超大作ラッシュ第1弾(?)として……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街360》

『アクアマン』をご紹介! これがもう非の打ちどころのないほどの快作なのです!

DCが生んだスーパー海底人ヒーロー
初の単独映画化!

アクアマンはDCコミックが生んだスーパー・ヒーローのひとりで、水陸両棲の海底人です。

もっとも、スーパーマンやワンダーウーマンなど他のDCヒーローに比べて意外に映像化されてなくて、1990年代以降のTVアニメ『スーパーマン』(96~00)などにゲスト出演はしていますが、一枚看板の番組はまだありません。
(さらにアクアマンは二代目も存在していますが、こちらも映像ではまだアニメのみの登場です)

初めて銀幕にお目見えしたのもDCヒーロー総出演の『ジャスティス・リーグ』(17)および日本のパロディ・アニメ映画『DCスーパーヒーローVS鷹の爪団』(17)と、つい最近のことなのです。

なぜ、これまで映像化されてこなかったのか、それはアクアマンが活躍する驚異の海底世界を特撮で描出することが非常に困難であったからに他なりませんが、現在のデジタル映像技術の躍進により、かの世界をようやく具現化することが可能になったと捉えられます。

また、DCコミックスのファンには昔からよく知られるアクアマンですが、一般には、特に日本の映画ファンにはまだなじみの薄い存在で、それこそ『ジャスティス・リーグ』が公開されたときに、こんなヒゲモジャのマッチョ風ヒーローがいたのか! と驚いた方も多かったのではないでしょうか。

そこで本作『アクアマン』は、まずアクアマンがいかにして誕生したのかを、時を遡ってきちんと描いてくれています。

ここで目を見張らされるのは名優ニコール・キッドマンがアクアマンの母親として登場することで、これまで数々の名作に出演し続けてきた彼女がそこにいるという事実だけで、本作のクオリティの高さは想像できるのではないでしょうか。

そう、本作は脚本から演出、スタッフワーク、そしてキャストの演技と、エンタテインメントとしてどこをとっても非の打ちどころがないほどの最高水準作として大いに屹立しているのでした!

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今まで見たことのない
驚異の海底世界!

やはり何よりも深海世界の圧倒的描出でしょう。それは海の青を基調にさまざまな生物が泳ぎたゆたい、2Dで見ても深い奥行きを感じさせてくれる、まるで絵画を見るかのように美しくも壮大な世界であり、見る者にエクスタシーを覚えさせるほどのものがあります。

(私は2Dの試写会で観ましたが、これは本来3Dのアイマックスで見るべき映画であると確信しました。その鑑賞環境で見られる方は、ふところに余裕がなくても、ここは思い切って数百円上乗せしてチケットを買うべきでしょう)

『ジャスティス・リーグ』で初見参したアクアマン役のジェイソン・モモアも、ここでようやく逞しくも優しさあふれる海底ヒーローの魅力をフルに醸し出すことができています。

また本作のヒロインとなる海底国ゼベルの王女メラに扮するアンバー・ハードの魅力にも大注目で、今回はアクアマン&メラのコンビネーションの妙が本作を強固に支えているといっても過言ではないでしょう。

あと幼いアクアマンを厳しくも優しく指導するアトランティス帝国の参謀バルコを演じるウィレム・デフォーのさりげない存在感も素晴らしく、DCの良きライバルでもあるマーベルのサム・ライミ監督版『スパイダーマン』(02)では悪役グリーン・ゴブリンを怪演していた彼も、ここではいぶし銀の魅力を漂わせています。

ドラマそのものは、地上の征服を目論む海底アトランティス帝国にアクアマンが対峙していくというシンプルな構造の中に、一族の複雑な絆がもたらす確執などがシェークスピア劇さながらに描かれていきますが、その意味ではパトリック・ウィルソン演じる帝国の若き王オームとアクアマンの関係性や、またアクアマンに怨みを抱く海賊ブラック・マンタ(ヤーヤ・アブドル=マティーン2世)の存在は、後々のシリーズ化までも大いに示唆してくれています。

これらを見事に束ねながら、未知の海底世界カタルシスと感動をもたらすジェームズ・ワン監督の力量も讃えたいところで、ふと思うに『ソウ』シリーズ(04~10)や『死霊館』シリーズ(13~)で名を挙げた彼、サム・ライミにしてもピーター・ジャクソンにしてもホラー映画で名を挙げた監督がファンタジーを撮ると実に力強いものに仕上がることが常ですが、本作もまたその例に倣い、いや、そういったジンクスの代表格として祀り上げてもよいほどの貫禄がありました。

とにもかくにも信じられないほどのセンス・オブ・ワンダーな、今まで見たことのない驚異の海底世界を堪能させてくれる『アクアマン』、まずは論より証拠でご覧いただければと、強く願います。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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