『シンクロナイズド・モンスター』女性映画の秀作を正当に評価してみる!

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予告編が動画サイトにアップされるや、すぐに日本の映画ファンの間でも話題となった映画『シンクロナイズド・モンスター』。

夜の大都市に突然出現した大怪獣!その映像から受ける印象は、ラブコメとモンスター映画の奇跡の合体?とでも言った物。

個人的にも非常に期待が高かった本作を、今回は公開初日の初回で鑑賞して来た。初回にも関わらず、場内は満員状態!果たしてその内容と出来はどうだったのか?

ストーリー

憧れの大都市ニューヨークで働くグロリア(アン・ハサウェイ)は、自身のミスにより失業。ショックで毎晩酒に酔って暴走していた彼女は、ついに同棲中の彼氏ティム(ダン・スティーヴンス)に家を追い出されてしまう。生まれ故郷の小さな田舎町に帰った彼女は、 そこで偶然再会した幼馴染のオスカー(ジェイソン・サダイキス)に誘われるまま、オスカーが経営するバーで働くことに。そんな中、突然世界を駆け巡った衝撃的ニュース! 韓国のソウルに突如巨大な怪獣が出現! 世界中が騒然とする中、ただひとりグロリアはある異変に気付く。 「この怪獣、私と全く同じ動きをする…?!」舞い上がったグロリアは、怪獣を操り世界をさらなる混乱へと陥れるが・・・。

予告編

実は「怪獣映画」じゃ無い!女性の自立を描いた秀作だった!

予告編やポスター、そして日本版タイトルの印象から、「モンスターが暴れ回る映画」や「明るいポップなラブコメ」を期待して駆けつけた観客の方も多いはず。確かにこの邦題と、モンスターを前面に押し出した宣伝デザインでは、そう思われるのも無理はない話だ。(そもそもタイトルが『シンクロナイズド・モンスター』だし)

ところが、実際の内容は・・・。
実は多くの観客の方が、この時点で失望や期待ハズレとの感想を持たれた様だが、ちょっと待った!

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そもそも、本作の原題は『Colossal』。この単語が持つ本来の意味は、「途方も無く大きな」とか「巨像」といった、とにかくデカい物を表す形容詞。だが、実は話し言葉として「素晴らしい」や「注目に値する」という意味も持っている。

なるほど、本編中のある理由により、突然世界中の注目を浴びることになったオスカーが、今までと態度を急変させて横暴になる展開にも通じるし、ラストでグロリアが選択する行動こそ、正に文字通り『Colossal』!映画のある一部分だけを誇張して、タイトルの意味を一つに限定する様な邦題とは違い、観客によって様々な受け取り方が出来る名タイトルだと言える。

社会的に小さく弱い存在であり、今まで「男性」という巨大な存在からコントロールされて来たグロリアが、ある日突然そのパワーバランスを逆転させる存在となったら?
そう、本作はあくまでも等身大の女性の自立を描いた作品であり、決してパシリムやゴジラの様な「怪獣映画」では無いのだ!その部分を理解した上で鑑賞して頂ければ、きっと本作に対する正当な評価が見えて来るはず。

これからご覧になる方は、邦題や予告編から受ける印象を一度忘れて頂いて、主人公グロリアの置かれた状況と、彼女の選択に注目して鑑賞されてみては?

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最後に

前述した様に、「怪獣映画」や「明るいラブコメ」を期待して見に行った観客にとっては、かなり予想外の内容となっている本作。それだけにネットでのレビューや感想には、どうしても低評価や酷評が目立つのも無理は無いところだ。

「何故怪獣が韓国に出現するのか?」や「何故グロリアにそんな能力が備わったのか?」など、観客が一番知りたかった秘密は、映画の終盤で一気に明かされるのだが、確かにこの部分は余りに唐突で、取りあえず提示されたという印象が強い。

そう、実は本作はこうした「謎解き」部分を、重要視していないのだ。むしろこのシーンで重要なのは、グロリアが既にこの頃から男の理不尽な「パワハラ」に、文字通り踏みにじられていたという点!

それから20年が経過しても、依然として男の勝手な都合に振り回されっぱなしのグロリアが、突然手に入れた巨大な力。そしてちっぽけな存在だった自分に訪れた、世界中から注目される絶好の機会!

しかし、それすらも再び身勝手で横暴な男の存在に踏みにじられようとした時、ついに彼女はその支配の鎖を引きちぎる行動に出る!

ここは最終的に少々残酷なシーンで終わるのだが、今まであれ程威圧的で横暴だった男の外見を剥ぎ取り、情けなく惨めな真の姿を明らかにするという見せ場になっていて、実に見事。この逆襲シーンの一発大逆転のアイディアは、観客の盲点を突いていて思わず心の中で喝采を叫びたくなる程なので、ここは是非とも劇場でご確認を!

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(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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