『デイアンドナイト』、善悪をテーマに山田孝之ら表現者の想いが炸裂!

(C)「デイアンドナイト」製作委員会

俳優としての才覚のみならず、さまざまなパフォーマンスを繰り広げては表現者としての己を貫き続ける山田孝之の活躍には毎回目を見張らされるものがありますが、そんな彼が初めてプロデューサーとして作りあげた映画『デイアンドナイト』が1月26日より公開となりました。

結論から先に申しますと、ずばり

「善と悪は、どこからやってくるのか?」

この言葉をモチーフに繰り広げられていくこの作品……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街358》

それぞれがそれぞれの正義を振りかざしながら、国の内外で諍いを起こし続ける現代社会を生きる、すべての人に見てもらいたい快作であり、問題作なのです!

愛する者を奪われた者が
善悪の狭間に揺れながら

『デイアンドナイト』の主人公は明石幸次(阿部進之介)。

父親(渡辺裕之)が自殺して実家へ帰った彼は、三宅(田中哲司)ら大手企業に属する者たちの不正を内部告発したことから、父が死へ追いやられた事を知ります。

忸怩たる想いを抑えきれない明石は、生前の父に世話になったという北村(安藤政信)から声をかけられ、彼が経営する児童養護施設で働くことに。

そしてある日、明石は北村に誘われて“夜の仕事”へ。

それは北村が施設の経営を維持し、子どもたちを守るための犯罪行為でもありました……。

「善と悪は法律では決められない。自分の正義を信じないと、大切な人を守ることはできない」

そうつぶやく北村に魅入られていくうちに、いつしか明石の胸の内に、父を死に追いやった悪しき者たちへの復讐心が徐々に膨れ上がっていき……。

「善と悪は、どこからやってくるのか?」

本作はこの言葉を基軸に作られている節が大いにあります。

それぞれの人にとって善悪の基準は異なり、それゆえに諍いも絶えない。

それぞれが善悪の狭間で揺れながら、折り合いがつかない感情にけじめをつけながら、自分の中で何を正義とするかを形作っていく。

本作の主人公・明石もまた善悪のはざまに揺れながら、自分なりの正義を見出し、行動に移していきますが、果たしてそれもまた正しいことなのか?

『デイアンドナイト』、即ち昼と夜の二面性は善と悪の二面性を照らし合わせたタイトルでもあり、では自分なりの善悪とは一体何なのか、そこに明確な答えを提示するのではなく、観客一人一人に考えてもらいたい。

それが本作の示唆するところでもあります。

3人の表現者の執念が
画面から熱くほとばしる!

本作は『罪とバス』(16)『栞』(18)などで知られる俳優・阿部進之介が企画・原案・主演、彼とは『オー!ファーザー』(14)でも組んでいる藤井道人が監督、そして彼らと旧知の中でもあった山田孝之がプロデューサーとして裏方に徹して作られた作品でもあります。

オリジナル・ストーリーを基に4年の月日を重ねて28稿まで推敲を重ねていった3人の執念は、ロケ地となった冬の秋田の寒々しい風景と対比されるかのように熱い想いとして画面からほとばしり、映画ならではの醍醐味とエモーションが炸裂していきます。

劇中、海沿いの風車の群れが象徴的に映し出されますが、その無言の回転が善悪の念を繰り出し続けながら生きる人生のサガまで表現しているかのようです。

ドラマ自体も二転三転していき、単なる主人公の復讐劇の域に留まらず、それぞれが持ち合わせる“正義”こそが諍いの悲劇をもたらしていくことが、現代社会のさまざまな対立要因と照らし合わされていくのに慄然とさせられていきます。

特に国の内外の諍いが激化し始めている昨今、実にタイムリーな映画にも成り得ていると思います。

また、そんな中で施設で暮らすクールな少女・奈々を演じる清原果耶の存在感が、本作の哀しみの象徴たりえているのも見逃せないところでしょう。

2019年になってまだ1カ月も経ってないのに、もう今年の新人賞が決定してしまった! といった想いに包まれてしまうほどのインパクトがあります。

総じて今回のキャストは企画者でもある主演の阿部と、同じ役者として彼らの気持ちのケアにも努めたプロデューサー山田の真摯な姿勢に感化されながら好演しており、中でも安藤政信もまた本作の一つの象徴として大いに映え渡っています。

個人的に目を見張らされたのは、藤井道人監督の腹をくくったキャメラアイでした。

自主映画を経て『オー!ファーザー』(14)でメジャー進出し、つい先ごろも『青の帰り道』(18)を発表したばかりの藤井監督は、その作品群から人の心の闇に着目したものを多く感じとれてはいましたが、本作はその集大成と言い切るのはまだ早いにしても、何か大きく従来の自分の壁を突き抜けたかのような演出のカタルシスを感じました。

プロデューサーとして彼らを支えた山田の姿勢も讃えられるべきで、彼が成し得た既成の枠を逸脱した自由な映画制作は、今後の指標にもなっていくかと思われます。

いずれにしましても、2019年早々にしてすごいものを見せられた。今はその衝撃と感動で、なかなか他の作品への食指が動かない自分に困り果てている次第です⁉

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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