『犬ヶ島』いよいよ公開! 新星コーユー・ランキン&ジェフ・ゴールドブラム インタビュー

 (C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

『ファンタスティック Mr.FOX』『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン監督が、“日本への愛”を詰め込んだ待望の最新作『犬ヶ島』が、ついに公開。黒澤明ら日本の巨匠から強いインスピレーションを受けたという本作はストップモーション・アニメとして製作されており、見事「第68回ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)」を受賞している。

愛犬を探しに「犬ヶ島」へとやって来る主人公・小林アタリの声を演じたのは、本作が長編映画デビュー作となったコーユー・ランキン。彼はカナダ人の父親と日本人の母親を持ち、劇中でも全編を通して日本語でのセリフを披露している。また、「犬ヶ島」に棲む犬たちの声にブライアン・クランストンやエドワード・ノートン、ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソンら豪華キャストが集結。ほかにもフランシス・マクドーマンドやティルダ・スウィントンが参加、日本から夏木マリや渡辺謙、村上虹郎、RADWIMPSのボーカル・野田洋次郎らの起用が大きな話題となった。

映画公開を前に、ウェス・アンダーソン監督とアタリ役のコーユー・ランキン、犬のデューク役ジェフ・ゴールドブラムが来日。今回コーユー・ランキンとジェフ・ゴールドブラムから話を聞くことができたので紹介しよう。

コーユー・ランキン、ジェフ・ゴールドブラム インタビュー

──今回は「声」の演技となりましたが、実写での演技と声だけの演技とで意識的に違う部分はあるのでしょうか。

ジェフ・ゴールドブラム(以下ジェフ):声だけでの演技は以前にも関わったことがありますが、ウェス・アンダーソン監督との仕事は特別でしたね。とにかく今回の作品は脚本がすごく綿密に書かれていて、実を言うと私は2時間しか仕事をしていないんです。私のセリフはきっちりと決まっていて、私はロサンゼルスに、監督はニューヨークにいながらにして「このセリフを言ってほしい」「じゃあ次はこれを」といったふうにレコーディングを進めていきました。彼はすごく頭の良い人で、要求がはっきりしている上に俳優をどう扱っていいか分かっているし、笑わせてもくれる。本当に“俳優側”に立てる監督なんですよ。

とにかく、声で演じることはある意味“純粋な演技”だと思いますね。時間のことを気にしたり、太陽を気にしたりということがないのでとても集中できるんです。それから、監督と微妙なニュアンスや非常に細かいところまで一緒に作り上げていくことができるのもポイントだと思います。

 (C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

──ウェス監督のファンは日本にもたくさんいます。今回日本が舞台に選ばれて日本人キャストも多く起用されているとニュースで発表されたとき、日本中のファンが大喜びでした。日本を舞台にした物語の作品に、お二人はどのように捉えて挑まれたのですか?

ジェフ:私はウェス監督の『ライフ・アクアティック』や『グランド・ブダペスト・ホテル』に出演していますが、彼の映画はたくさんの作品からインスピレーションを受けていますし、監督自身も人生や生活について常に興味を持っているので、彼から学ぶべきことがたくさんあります。

コーユー君はお母さんが日本人ということもありますが、私も日本のことが大好きで何回も来ています。一番好きな食事が日本食ですし、日本の人々も好きなんです。今回の作品が日本を舞台にしていることに私はあまり驚かなくて、なぜなら監督の美しいものを作り上げる才能や世界中に良いものを提供するという心の広さが、日本の精神そのものと繋がっているのではないかと感じたからです。

コーユー・ランキン(以下コーユー):僕は3年前、8歳のときにニューヨークへオーディションに呼ばれて、物語も全然分らないまま練習なしでアタリのセリフを読み始めました。アタリのセリフだけだったこともあって、犬たちが出ている話とは全然分からなくて。5時間くらいレコーディングをして、1年後にアタリ役が僕に決まったというメールが来たんです。

ジェフ:本当? オーディションから1年待ったの? ワオ、それはすごいね。

コーユー:アタリ役に決まったときには驚きましたが、本当に嬉しくて。ダメだろうなと思っていたところにメールが来たので、「えぇ!?」と(笑)。

ジェフ:ウェス監督からメールが来たの?

コーユー:プロダクションからでしたけど、「アタリは君のものだ」と書かれていました。

ジェフ:役が決まって泣いた? それとも踊った?(笑)

コーユー:ただただビックリしてました(笑)。

──ジェフは遠隔で演出を受けたということでしたが、アタリに関して監督はどのように演出されていたのですか?

コーユー:ウェス監督に初めて会ったのが3年前のニューヨークでした。僕は最初とても緊張していましたが、監督が本当に優しくて落ち着いた方だったので、僕も気持ちを落ち着けていくことができました。レコーディング中はウェス監督が「ここは嬉しそうに言って」「ここは悲しく」「ここは怒って」と、日本語を話すことはできないのにしっかりそうやって指示を出せるのは本当に凄いと思いました。

──今回のような規模の大きな映画で、センターに立つプレッシャーはありませんでしたか?

コーユー:アタリが主人公とは全然知らなかったので、メールを受け取ったときに「え? アタリが主人公だったの?」と驚いたくらいだったんです。それから全部脚本を読ませてもらいました。

──本編ではアタリと犬たちの絆が印象的でした。それぞれ演じられている、アタリと犬のデュークでご自身と重なる部分はありましたか?

ジェフ:映画の内容は多くがアタリと犬たちのシーンですが、レコーディングは1人だったのでコーユー君とは会ったことがなかったんです。一緒に演技をしたかったと思っていますが、今こうして座っていて、例えば映画のようにコーユー君が何か探したいものがある、愛犬とまた関係を持ちたいと言うのなら私は絶対に助けたいと思います。彼と一緒にいてそういった気持ちがさらに強くなっていて、彼のためなら命を懸けてでも助けるのではないかな、と。愛する者のために戦うということは非常に共感できるし、たとえ勇敢ではなくても懸命に戦うと思いますね。

私は「演技」というものを愛してきて、そのためにずっと命を捧げてきたようなところがあります。もちろん一所懸命努力したし、今は結婚して妻と2人の息子がいるので、彼らを守るためには何だってするという、“愛のために戦う”ところが重なっていると思いますね。

コーユー:映画の中でアタリとデュークはそんなに会話をしませんでしたが、でもアタリは優しくて勇気がある男の子。僕も優しくて勇気があるので同じですね(笑)。

ジェフ:その通りだよ! 君はまるで『ドン・キホーテ』の「ラ・マンチャの男」みたいだからね。(ここで「ラ・マンチャの男」を歌い始め、美声を披露したジェフに一同拍手)
ちょうどアタリというキャラクターと「ドン・キホーテ」は被る部分もありますね。「ドン・キホーテ」はサンチョ・パンサを従えて、何かを探し求めて世界を冒険する話ですから。

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──セットについてですが、すごく大きなものから小さなスケールのものまであったそうですね。お二人は実際にセットをご覧になりましたか?

ジェフ:ノー。3年もかけてワークショップで作られたものなので、すごく見たかったですね。全然見れなくてガッカリしているところです。

コーユー:僕は去年ロンドンのスタジオに呼ばれて、アタリや犬たちがどうやって作られていくかを見せてもらえて本当に驚きました! 2月にベルリンで初めて映画を観たときにロンドンのことを思い出していて、あのときに見たものが映画になっていて本当に素晴らしかったです。

ジェフ:私も2月にベルリンで初めて映画を観たけど、君はそれよりも前にあのセットを見ていたんだね。

──お寿司を作るシーンも面白かったのですが、お二人の中で驚いた場面やお気に入りのシーンはありますか?

ジェフ:日本の方にそう言っていただけて良かったです。もう全部のシーンですね。ずっと口が空きっぱなしの状態で観ていましたよ。3回観ましたが、素晴らしいシーンが本当にたくさんあるんです。

コーユー:僕もほとんど全部のシーンを挙げたいぐらいなんですけど、アタリがブライアン・クランストン演じるチーフに「グッドボーイ」と語りかけるシーンが本当に感動しました。

ジェフ:これだけたくさんのキャストが出ているので、観ていて「ちょっと待ってくれ、あれがフランシス・マクドーマンドか!」と驚きますよ(笑)。でもそれも映画を観る楽しみで、作品を観ながらどのキャラクターを演じているのか当てていくのも楽しみ方の1つだと思います。私はオースティンで3回目の鑑賞をしましたが、そのときが一番楽しめたんですよ。観客が映画を観ながらすごく反応を見せてくれて、どのシーンが上手くいったのか知る上でもその観客たちと一緒に観たのが楽しかったですね。

──ジェフはずっと長く第一線で活躍されていますが、そんなあなたからコーユー君にこの先映画俳優として長く活躍できるアドバイスや秘訣があれば、ぜひお聞きしたいです。

ジェフ:私の方こそコーユー君から学んでいるんですよ。私も彼のようなスタートを切りたかった(笑)。若いころの私はめちゃくちゃだったので、いろんなことを学びながら日々を送っていました。それは、学ぶチャンスがたくさんあったということでもありますが。素晴らしいスタートを切ったコーユー君に私からアドバイスはありませんが、今はなんでも可能な時代。だからこそ私は今も学んでいるのです。

最近『The Mountain』という作品でタイ・シェリダンと共演したのですが、実は彼は演技の勉強はしていないんですよ。それでもテレンス・マリックやスティーヴン・スピルバーグといった巨匠監督の作品に次々と出演している素晴らしい俳優で、コーユー君も彼と同じように自信があって落ち着いているし、シンプルでいてパワフルなところがある。コーユー君から学ぶところは多いですね。

──ジェフを見ていても思うのですが、演技力はもちろんユーモアセンスやコミュニケーション力も俳優としての1つのポイントになってくるのかなと感じます。

ジェフ:ありがとうございます。“人”が好きなんですよ。日本の皆さんも大好きですし。私はジャズバンドを組んでいますが、そうやって人を楽しませるのが好きなんです。もうすぐ3歳と1歳になる2人の息子がいるのですが、子どもができたことで「私はジョークを言うのがとても好きなんだ」ということに最近気がつきました。もちろん真面目にやっているときもありますが、妻にも「あなたはいつも笑わせてばかりで、ちょっとふざけすぎよ」と言われるんです。けれど、男の子が2人できて、彼らを笑わせて笑顔になるのが見たい。笑顔になるのがすごく好きなんです。それで彼らも私を笑わせてくれるんですよ。

──コーユー君の方から逆にジェフに聞きたいことはありますか?

ジェフ:ハッ!(驚きの表情に一同笑)ちなみにコーユー君は今回が初めての映画?

コーユー:初めてです。もともと俳優になりたいとは思っていて、父親に「演技をやってみたい」と話したらエージェントを探してきてくれて。僕の父も役者なんです。

ジェフ:そうだったの? カナダで?

コーユー:バンクーバーでテレビに出演しています。父の姿を見て自分もやってみたいと思って、それで今もオーディションをいくつか受けています。

ジェフ:じゃあいつかお父さんとの共演もできるね。芝居は観たことある? アドバイスとしては、ぜひ演劇を観てほしい。ニューヨークは最高の演劇が観られるからね。ウェス・アンダーソン監督の映画に出たというだけで最高のレッスンを受けたことになるけど、あとはやっぱり、とにかく作品に出演することかな。

──コーユー君はオフの日によく日本に遊びに来るそうですが、お気に入りの場所はありますか?

コーユー:祖父母が川越に住んでいるのでいつも川越を訪ねますし、そのまま東京に行ったりもします。それと北海道にも行ったことがあります。

ジェフ:日本には何回来たことがあるの?

コーユー:17回です。

ジェフ:17回!? オーマイガー! すごいね。家では日本語で話してるの?

コーユー:母とは日本語です。父は日本語が話せなくて。なので日本語と英語両方をずっと聞いたり話したりですね。

ジェフ:アクセントも日本人らしいしね。脳の学習に良さそうだ。兄弟はいる?

コーユー:僕ひとりです。

ジェフ:ひとりっこなんだね。犬は飼ってる?『犬ヶ島』に出たんだから犬を飼わないと。(一同笑)

コーユー:犬を飼うのも責任が伴いますから、5年ぐらいずっと両親と検討しているんです。

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──もしお二人が実写映画で共演されるとしたら、どんなジャンルがいいですか?

ジェフ:ぜひ共演したいね! どんなジャンルがいい?

コーユー:ウェス・アンダーソン監督の映画がいいですね。

ジェフ:私たちが脚本を書いたら普通の作品になってしまうけど、ウェスが書いたら何か違うものが出来上がるだろうしね。私が子どものころに観た映画で、ジェリー・ルイスが“ミスター・ウーリー”というマジシャンの役で日本にやって来て少年と絆で結ばれるという作品があるけど、それをリメイクするのもいいかも。

──最後に、『犬ヶ島』の見所や日本のファンにメッセージがあればお願いします。

コーユー:『犬ヶ島』は本当に素晴らしい映画です。人間と犬の愛情がとても強く描かれているので、ぜひ観てください。

ジェフ:さっきも「今日のわんこ」という日本の番組コーナーを観たところだったんです(笑)。『犬ヶ島』は「保護犬を助けよう」という運動も兼ねていて、現状では殺処分されてしまう犬や猫がたくさんいますが数年後にはそれを0にしようという運動をしているんです。本当にもっと動物を大切にしなければならないし、人間が動物を殺処分することをなくさなければいけない。人間同士も争い合っている世の中ですが、「動物を大切にする」ということも大事にしなければならないと思います。

まとめ

『ジュラシック・パーク』や『マイティ・ソー バトルロイヤル』など多くの作品で魅力を発揮し、人気俳優でありながらとにかくサービス精神旺盛なジェフ・ゴールドブラム。

一方、しっかりとした日本語の受け答えでこちらを驚かせてくれたコーユー・ランキン(ちなみにコーユー君、インタビュー前にわざわざ「日本語と英語、どちらで話した方が良いですか?」と尋ねてきてくれたしっかり者)。

ジェフとコーユー君のやり取りは、『犬ヶ島』が象徴する“絆”を強く感じさせ、コーユー君を見守るジェフの眼差しもまた印象的だった。2人の会話や作品への言葉を踏まえながら鑑賞すれば、ウェス・アンダーソン監督が示す『犬ヶ島』の魅力により一層迫れるかもしれない。

監督やスタッフ・キャストからの「日本へのラブレター」を、劇場でじっくりと堪能してほしい。

(文:葦見川和哉)

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