“殺カレ死カノ” “地獄少女”など脱キラキラ化し始めた日本の青春映画たち

青春映画としての
『地獄少女』

(C)地獄少女プロジェクト/2019 映画「地獄少女」製作委員会 

TVアニメシリーズから漫画、小説、ゲームなど幅広く発展しながらメディアミックスを成功させていったダーク・ファンタジー『地獄少女』の実写映画版(現在公開中)も、見方によっては青春映画として捉えることは大いに可能でしょう。

午前0時にアクセスすると和服姿の地獄少女・閻魔あい(玉城ティナ)が現れ、依頼者の望み通りに標的を地獄送りしてくれる代わりに、依頼者自身も死んだら地獄行きとなってしまう禁断のサイト「地獄通信」。

総じてイジメや憎悪、嫉妬、誹謗中傷といった負の連鎖がもたらす究極の殺人契約は現代版『必殺!』などといった生易しいものではなく、依頼した側にも非情な代償がもたらされることに「人を呪わば穴ふたつ」とでもいった人生の不条理などが垣間見えますが、それでも依頼してしまう人間の悲しき業を否定していないことに、本作が支持されてきた一因があるのでしょう。

そして今回の実写版では、親友(仁村紗和)がカリスマ・アーティスト(藤田富)に洗脳され、ついには儀式の生贄にされることを知った高校生少女(森七菜)が地獄通信にアクセスするまでの過程が、痛々しいまでの友情と確執の物語として屹立していきます。

これまで『ノロイ』(05)『貞子VS加耶子』(16)といった怖すぎホラーや『不能犯』(18)といった超常的サスペンス作品に才を発揮してきた白石晃士監督ですが、ここでのダーク・ファンタジーの中での思春期の想いを汲み上げていく手腕も大いに讃えたいところです。

ちなみにアニメ版などでは幼女体形の閻魔あいを長身美女の玉城ティナに演じさせるのはかなりの冒険であったと思われますが、仕上がりとしては驚くほどに映画版ならではの閻魔あいとしての魅力を放ち得ており、このまま彼女主演でシリーズ化してほしいと思わせるほどのものがありました。

さて、今回採り上げた作品のうち多くがSNSやアプリなどから発展したり、またモチーフにしているのも偶然ではなく今の時代ならではの事象であり、また逆に失われていくものへの哀惜を謳う『わたしは光をにぎっている』みたいな作品も際立つのかもしれません。

こういった今の時代を見据えつつ、ひとひねりした青春映画が続々作られていくのは間違いないことでしょう。

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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