快作!『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』を堪能する前に押さえておきたいこと

(C)カバネリ製作委員会

映画でもテレビドラマでもアニメーションでも、制作会社や監督などに注目しながら見始めると楽しさは倍増するものですが、大いに注目しているアニメーション制作会社の中にWIT STUDIO(ウィットスタジオ)があります。

あの『進撃の巨人』(13~)テレビ・アニメーション・シリーズを世に放ち、世界中にブームを巻き起こしたスタジオです。

他にも『鬼灯の冷徹』(14)『終わりのセラフ』(15)『魔法使いの嫁』(17)『恋は雨上がりのように』(18)『ヴィンランド・サガ』(19)など、信頼のブランドに足る秀作を連打し続けるWIT STUDIO制作作品の中で、個人的にもっとも愛してやまない作品が『甲鉄城のカバネリ』(16)です。

2016年にテレビシリーズ全12話がオンエアされ、その後『甲鉄城のカバネリ 総集編 前編 集う光』(16)『甲鉄城のカバネリ 総集編 後編 燃える命』(17)と2本の劇場用映画が公開されたこの作品……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街381》

待望の新作『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』が劇場用アニメーション中編映画として5月10日より2週間限定公開されることになりました!

時代劇+産業革命+ゾンビ
+列車ロード・ムービー

まず『甲鉄城のカバネリ』について記しますと、これはWIT STUDIOのオリジナル作品です。

舞台となるのは架空の極東の島国・日ノ本。

江戸時代に産業革命がもたらされたような風情のこの国は、今、カバネと呼ばれる怪物の脅威にさらされていました。

噛まれた人間はウィルス感染で同族と化し、また人を襲うカバネ(まあゾンビのようなものです)から身を護るため、人々は“駅”と呼ばれる砦で生活し、“駿城”と呼ばれる装甲蒸気機関車が駅と駅の間を繋ぐ交通手段として、もしくは避難手段として用いられています。

そんなある日、顕金駅がカバネの襲来で多くの犠牲者を出しますが、そのとき対カバネ武器を独自に研究していた少年・生駒(声/畠中祐)もカバネに噛まれつつ、自作の器具を用いてウィルスの浸食を喰い止め、身体はカバネながらも人間としての心を保った“カバネリ”と化しました。
(カバネリは人間の血を定期的に摂取し続けることで、カバネ化することを抑えられます)

生駒をはじめ辛くも生き延びた顕金駅の住民たちは、同じくカバネリの少女・無名(声/千本木彩花)らを乗せた駿城“甲鉄城”で脱出し、日ノ本中の駅から駅へと縦断していくことに……。

本作は、東洋のサムライ文化に西洋のスチームパンク感覚が融合された世界観の中、列車を用いたロード・ムービーにゾンビものの要素を組み合わせた、ハードかつダイナミック、そしてユニークなもの。

極限状況の中を疾走する甲鉄城は『スノーピアサー』を彷彿させるものがあり、一方でサバイバルのための逃走と闘いといった図式は『宇宙空母ギャラクティカ』『伝説巨神イデオン』などの列車版的な情緒も醸し出されています。

キャラクター原案に『超時空要塞マクロス』の美樹本晴彦を迎えたことで、美麗かつ躍動感あふれるキャラクター陣とカバネのグロテスクさが見事に対比。

シリーズ構成&脚本『交響詩篇エウレカセブン』『コードギアス 反逆のルルーシュ』などで知られる大河内一楼。そのストーリー自体が実に秀逸なものです。

そして監督は『進撃の巨人』シリーズの荒木哲郎。

現在もっとも面白いアニメーション作品を作っている才人のひとりとして、この名前は絶対に覚えておいたほうがいいでしょう。

銀幕の大画面でこそ映える
最新作『海門決戦』!

さて、待望の新作『甲鉄城のカバネリ 海門決戦』はテレビ・シリーズから半年後の甲鉄城の人々の運命と闘いを描いた続編ではありますが、上記した基本設定さえ押さえておけば、イチゲンさんでもさほどストレスなく鑑賞することは可能な内容に仕上がっています。
(もちろんシリーズをおさらいしておけば、さらに楽しめる! 5時間くらいで全話見終えることができますし)

今回の舞台となるのは、日本海に面する廃坑駅“海門(うなと)”。

カバネとの熾烈な戦いを強いられつつ、海門にたどり着いた甲鉄城の面々は、他の駿城の同胞らとともに連合軍を結成し、海門のカバネ撃退作戦を企てることになります。

しかし、この海門の地には、ある秘密が隠されていました……。

今回は中編仕立ての尺ではありますが、いざ接すると90分くらいの長編を見たようなボリューム感があり、その意味でも入場料金のモトは十分に取れる優れもの。

テレビ・シリーズとスタッフ&キャストは同じなので、世界観が変貌している危惧なども一切なし。

またテレビ版以上のハイテンションかつハードな設定で迫りくる中、各キャラクターの可愛らしさを含めた人間味がさりげなく強調されており、群像劇として制作する側の自信とゆとりが感じられます。

上映時間の短さもあってか、見終えてもそのまま劇場に居残ってリピートしたくなるような衝動に刈られるほどの面白さ。

そもそも列車というアイテムは、映画創世時代からずっと銀幕と相性が良いものであり、『鋼鉄城のカバネリ』も映画館の大画面でこそ大いに映えわたる資質の作品です(総集編映画が作られた由縁もそこにあります)。

その意味でも今回の『海門決戦』、2週間限定上映というのはあまりにももったいないくらいですが、できればファンのみならず多くの観客に映画館へと足を向けていただいて、上映期間の延長が成し得るほどの動員となり、さらなる新作を待望したいものです。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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