『キング・アーサー』が予想以上に無双映画で満足した話

■「映画音楽の世界」

キング・アーサー

(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ガイ・リッチー監督といえば、近年『シャーロック・ホームズ』シリーズや『コードネーム U.N.C.L.E.』など、自身の独特の映像センスを活かしながらよりエンターテイメント性を詰め込んだ作品を連発しています。その流れに新たに加わるのが『キング・アーサー』です。

キング・アーサーは過去に『マグニフィセント・セブン』のアントワン・フークア監督も映画化していますが、どちらも主人公・アーサーはのちのアーサー王… などと堅苦しい講釈など本作には必要はないのです! ぶっちゃけてしまえば聖剣エクスカリバー、円卓の騎士程度の名称を知っているだけでも楽しめてしまうのです。いや、別にそれすら知らなくても楽しめる! それくらい、ガイ・リッチー印のエンタメ作品になっているのです! 今回の「映画音楽の世界」では、そんな『キング・アーサー』をご紹介します。

ガイ・リッチー無双

とにかくオープニングから超巨大な象が暴れまわるのです。パオンと。この時点でガイ・リッチーのビジュアルセンスが炸裂しているわけですが、ここではアーサーはまだ登場せず、エリック・バナとジュード・ロウ兄弟の確執が描かれるので実はストーリー的には丁寧な滑り出しを見せています。

本作、アクションも素晴らしいのですがちゃんとアーサーがアーサー王へと至る道のりを思いのほか時間を割いて描いているので2時間まるっとアクション、というわけではないのが意外なところ。おかげで巨象の進軍や魔術師メイジの存在など、アーサー王伝説をモチーフにした物語にファンタジー要素を取り込んでも「あ、もしかしたらこういう史実が本当にあったんじゃないかな」と説得力を持たせることに成功している気がします。

おそらくこの部分のバランスを欠いてしまうと「何でもアリ」になって途端に凡作のようになっていしまいますが本作にはそれがない。映画的に成立しているのです。さすがだ、ガイ・リッチー!

キング・アーサー Knights of the Round Table: King Arthur

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ガイ・リッチー監督は映像センスもさることながら、実はキャラクター造形も巧み。ホームズ&ワトソンやアメリカ&ロシアのスパイコンビなど、常に作品の中で誰がしかが観客のハートをしっかり射止めていくのですが、今回はジュード・ロウの暴君ぶり(もはやジュード・ロウのナルシズムにも見える)がキャラクターとして一つの魅力になっているのではないでしょうか。

堅実なワトソンとは打って変わって暴虐を尽くすヴォーティガンのキャラクター造形は、スマートであり、ストレートな悪意そのもの。観客に同情の余地すら与えない真性の悪をアーサーらにぶつけることで、しっかりと存在感を示しています。ここまで澱みのない純粋な対立を見せると何が起きるかと言えば、主人公であ るアーサーVSヴォーティガンのラストバトルでの化学反応ですよね。

アーサーの生い立ちから成長、聖剣エクスカリバーとの関係性をしっかりと描いているので、アーサーとヴォーティガンが完全に対になった構造で映画が成立しています。そんな二人の対決は映画のテーマ性をラストバトルに濃縮して観客に提示されるので、怒涛のソードバトルはもはや映画の枠を超えた、(まるでゲーム画面を一人称視点で体験しているような)今だかつてなかったような臨場感と胸の高まりを与えてくれます。もちろんそこには、ガイ・リッチー監督のビジュアルコントロールが最大限に発揮されているわけで、まさにクライマックスに相応しいバトルシーンに仕上がっています。すごいぞ、ガイ・リッチー!

キング・アーサー サブ5

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音楽までも無双

King Arthur: Legend Of The Sword

本作の音楽を担当したのは、『コードネーム U.N.C.L.E.』に引き続きガイ・リッチー監督とコンビを組むことになったダニエル・ペンバートン。ペンバートンはリドリー・スコット監督作品の『悪の法則』の音楽を手掛けたことで注目されたイギリス人作曲家。

それまではテレビ音楽や短編の音楽を手掛けていましたが、以降はコードネーム~やダニー・ボイル監督の『スティーブ・ジョブズ』、マシュー・マコノヒー主演の『GOLD』など話題作へと立て続けに登板しています。ペンバートンの持ち味は多彩な音色ながら手堅くその音をまとめ上げ、時には挑戦的なスタイルの音楽を提示するところ。良く言えばオリジナリティあふれる音楽、悪く言えば音楽が誇張気味になる危うさもありますが、ペンバートンの音楽は不思議と映像にマッチしてくるのです。

実験的なアプローチは本作でも見られ、たとえば歴史大作でありながらサンプリングや電子ドラムを重ねたパーカッシブなサウンドの「Growing Up Londinium」はテーマ的に使用され異彩を放っています。しかしこのロックサウンドは決して一人歩きすることはなく、むしろガイ・リッチー作品らしい“味”を感じさせてくれるのです。

コードネーム~ではマルチアングルで展開していく潜入作戦の様子を細かいカット割りとドラムリズムを見事に一体化させていましたが、本作では乱暴なリズムがアーサーら騎士団の焦燥感、荒々しさを表現しているようでした。全体的にパーカッションを多用した音楽になっていますが、壮大なラストバトル・スコア「The Power Of Excalibur」や、サム・リーとペンバートンの共同パフォーマンス曲「The Devil & The Huntsman」といった聴き応えたっぷりの楽曲が提供されています。やるな! ペンバートン!

キング・アーサー サブ1

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まとめ

ガイ・リッチーの映像センス、アーサー王伝説を元にしたストーリー、魅力的なキャラクター、ペンバートンの迫力ある音楽など、それらがピタリと一列に並び揃って出来上がった一級のエンターテイメント作品。まさにビッグスクリーンで観るための映画なので、ぜひとも劇場で堪能してほしい一本です。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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