『哭声 コクソン』はフンドシ爺が生肉を喰う映画!その隠された裏テーマとは?

哭声/コクソン メイン

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

公開前から各メディアでも話題騒然!情報に敏感な映画ファンなら既にチェック済みなのが、現在公開中の韓国映画『哭声 コクソン』。
東京都内ではシネマート新宿での単館公開となる本作を、今回は公開2日目夜の回で鑑賞して来た。上映は一番大きいスクリーン1、156分という上映時間の長さもあってか、場内は6〜7割程度の入りだった。

実際自分も鑑賞前は、「うーん、156分はちょっとキツいかも?」との思いで鑑賞に臨んだのだが、果たしてその出来はどうだったのか?

予告編

ストーリー

平和なある山村にやって来た、得体の知れないよそ者の男(國村隼)。男が何の目的でこの村に来たのかは誰も知らない。村中に男に関する噂が広がる中、村人が自身の家族を虐殺する事件が多発する。殺人を犯した村人に共通していたのが、湿疹でただれた肌に、濁った眼をして、言葉を発することもできない状態で現場にいることだった。この事件を担当する村の警官ジョング(クァク・ドウォン)は、自分の娘に殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。娘を救うためにジョングは、ついによそ者を追い詰めるが、ジョングの行動により村には混乱の渦が巻き起こってしまう。

すいません!今回は一切ネタバレ禁止で……

結論から言おう、本作は紛れも無い傑作!
心配だった156分という長尺も全く気にならないどころか、体感的には1時間程度に感じたほど!何なら後2時間位は見ていてもいい、そんな気になるくらい本作は観客の心を掴んで離さないので、是非安心して劇場へ駆けつけて頂ければと思う。

ストーリー紹介からも判るように、本作は山奥のある平和な村に突然起こった謎の連続猟奇殺人事件と、犯人らしき謎の日本人とそれを追う警察官との対決を描いている。

ホラー映画として非常に良く出来ているのはもちろんだが、特に前半部の平和な村での日常や、笑いを交えて描かれる主人公たち家族の様子と、殺人現場の残虐な様子や後半の衝撃的展開との対比が、ラストの救いの無さと悲しみを更に倍増させる。

しかし、何だろう。この鑑賞後に胸に残る、何かモヤモヤした物は?
そう、確かに表面上はホラー映画として楽しめるのだが、同時に何か宗教的な要素が色濃く漂う本作には、何か重要な裏テーマがあるように思えてならない。そこで、今回は本作の「裏テーマ」について考えてみようと思う。

哭声/コクソン 國村隼

(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

一見ホラー映画に見える本作、真のテーマとは何だったのか?

本作の重要な舞台となるのは、地方都市の山村。時代は現代なのだが、何故か本作にはネットやメールという物が登場しない。メールでのやりとりや、犠牲者に現れる「ある症状」や類似の事件をネットやインターベースで調べる、という描写も無い。日本以上にネット先進国の韓国で、これはどうしたことなのか?

実はこの部分が、個人的に非常に引っかかってしょうがなかったのだ。

もしや、このネット環境から隔離された状況こそが、本作で描きたかったテーマであり、舞台を山奥の村に設定した理由は、実はそこにあるのではないか?

いつしかそんな考えが、自分の頭から離れなくなってしまった。
確かに現代を舞台にした作品では、ネットが使えない状況の設定にはかなりの苦労が伴うのだが、なるほど本作の設定なら、観客にも無理なく納得させられる。実際本作の登場人物もスマホは持っているが、通話するだけでネット検索はおろかメールさえ使わない。祈祷師からの不在着信表示が何回も残されている描写にも、世代によっては「何でメールしないの?」と疑問に思う観客の方も出て来るのでは?

この様にネットから遮断された環境において、本作の主人公は自分が得られる限られた情報のみで、全ての状況を判断しなければならなくなる。実際、国村準扮する謎の日本人への疑いも、実は村人からの伝聞や状況証拠による物であり、そのことで日本人を挑発したために、自身が恐ろしい目に遭うわけだ。

本作に登場する、不確かな他人からの情報で他人を疑い事態が悪化したり、子供が恐ろしく汚い言葉や態度を取ったりする描写。一見ホラー映画のように見えても、実はこれらはネット環境が及ぼす悪影響と見ることが出来ないだろうか?

自身の判断基準や情報をネットに頼っている現代人にとって、本作の主人公の様に限られた情報の中で自身の判断によって行動し、しかも重大な決断を下さなければならない状況こそが、真の恐怖だと言えるのでは?

そう考えると、被害者の写真を撮って貼るという行為が、SNSへの投稿のために食事の写真を撮る行動に重なって見えてくる。ネット上に潜む悪意の象徴こそが國村隼だと考えれば、確かに単なるホラー映画としてではなく、更に本作を深く楽しむことが出来ると思うのだが、いかがだろうか。

哭声/コクソン サブ

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最後に

一度では理解出来ない部分が多いだけに、二度三度のリピート鑑賞や、一緒に見に行った友達と鑑賞後に自分の意見を交換し合う楽しみ方が出来る本作。

見た人々の口コミにより、今後集客が増えロングランすることは確実なので、内容に関するネタバレ情報が自分の耳に入って来るのを極力避け、とにかく早めに劇場に行かれることを強くオススメする。

その余りに衝撃的な展開と結末に、果たしてあなたはどんな考えを持つだろうか?

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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