『カンフー・ヨガ』こそジャッキー版「最後のジェダイ」!これこそ正月映画だ!

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2017年に公開されたジャッキー主演作としては、実に3本目となるこの『カンフー・ヨガ』。ジャッキー久々の正月映画として公開された本作を、今回は公開初日の最終回で鑑賞して来た。

ジャッキーとライオンが同じ車に乗っているシーンが印象的な予告編だが、残念ながら予告編からは全体像が掴み切れない本作。果たしてその内容と出来はどんな物だったのか?

ストーリー

古代、天竺(インド)と唐(中国)の間に起きた争乱の末、伝説の秘宝が消えた。

時は流れて、現代。考古学者のジャック(ジャッキー・チェン)は、失われたその秘法を探すため、同じく考古学者にしてヨガの達人であるインド人美女のアミスタらと共に旅に出ることに。まずは秘宝の在処へと導く「シヴァの目」を探し出さねばならない。

手がかりはたった1枚の古い地図。しかし、謎の一味が秘宝を奪おうと迫る。そして、長い歴史のヴェールに包まれた伝説が、人類の前に再びその姿を現そうとしていた。(公式サイトより)

予告編

明るいジャッキー映画が復活!これこそ正月映画にピッタリの作品!

2017年は、正にジャッキー・チェン主演映画の当たり年!

ジャッキーの実年齢を反映して、歴史ドラマの中でリアルな重い役柄を演じた『レイルロード・タイガー』。それとは一転して『ラッシュ・アワー』的路線を狙ったものの、結局壮大な「観光映画」に終わってしまった『スキップ・トレース』。

そして迎えた本作『カンフー・ヨガ』では、何とインドを舞台にヨガとカンフーが奇跡の合体!正直全く内容が分からないあの予告編に、当初は完全に劇場での鑑賞をスルーしてDVD化を待つつもりだった本作。だが、やはりネットでの好評価が気になって、劇場に駆けつけて観たその結果は・・・。

いやいや、実はこれが予想外に楽しめる作品だったのには驚いた!

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実はネットの評価でも、2017年に公開されたジャッキー作品の中で一番面白い!との意見が多かった本作。確かに、もはや全盛期のジャッキーの動きと明るいキャラクターを望むのはムリ、ということは良く分かっている。

ところがこの『カンフー・ヨガ』では、昔の明るいジャッキーが見事に復活!正に1990年代〜2000年代初頭のジャッキー映画のテイストが、再び味わえるようになっているのだ。

確かに映画の序盤こそ、「あ、さすがに今回はアクションを若手に任せて、自分は脇に回るのか」と思わせるのだが、舞台がドバイに移ったあたりから、徐々にジャッキー本人のアクションがスクリーンに繰り広げられることになる。

特に映画中盤の見せ場である、ドバイの超豪華な都会で繰り広げられるカーチェイスシーンは必見!ここはCG部分と実写の区別がつかない位見事に出来ていて、『ポリス・ストーリー3』でのカーチェイスを思わせるほど!

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それもそのはず、実は今回の監督が『ポリス・ストーリー3』や『レッド・ブロンクス』のスタンリー・トン監督と聞けば、それも納得出来るというもの。とにかくジャッキー作品のツボを知り尽くしたスタンリー・トン監督だけに、ジャッキーの実年齢を感じさせること無く話が進むので、観客も安心して見ていられるのが素晴らしい。

本作が多くの観客の好評を得ている理由、それは決してムリせず、今ジャッキーが出来る最良のアクションを見せてくれる、ということ。そして、男性観客限定では無く、性別や世代を超えて観客を楽しませる明るいジャッキーの復活!これに尽きると思う。

何より本作では、人が死なないし傷つけられない上に、心底凶悪な敵も出て来ない。

これこそ正に、「争いよりも、価値観の共有と対話、そしてお互いの国の文化への理解とリスペクト。これが国の垣根を越えた平和をもたらす」という、近年のジャッキー映画が描いて来たテーマを貫いている証拠だと言えるだろう。

思えば近年公開された傑作『ドラゴン・ブレイド』でもこのテーマは描かれていたのだが、本作は完全にファミリー向けの安心して観られる作品としても成立しており、ここ数年の内で一番成功したジャッキー映画なのは間違いないところだ。

思い返せば、シリアスな役柄だったり重い現実的なテーマを扱う作品が多く、どうしても鑑賞後に大満足!とはいかない物が多かった、ここ最近のジャッキー映画。

ところが本作では、インドの広大な土地と遺跡を舞台にすることで、今回ジャッキーが活躍する舞台を、一種現実から切り離されたファンタジーの世界の様に見せて、観客の間で賛否両論となっている、ラストのあの展開を「許せる!」と思わせる効果を生んでいる。

インド映画の自由さとジャッキーの個性の出逢いこそ、正にベストマッチ!この新たな発見だけでも、今回の『カンフー・ヨガ』は充分劇場で観る価値があると言えるだろう。

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最後に

確かに、昔からのジャッキーファンにとっては、彼の実年齢に合わせたリアルな設定の役柄も非常に興味があるし魅力的だと思う。

ただその反面、やっぱりジャッキーには昔の様にイキイキと飛び跳ねて明るく振る舞っていて欲しいのも事実!その点本作は、往年のジャッキー作品のテイストを生かしつつ、あくまでも現在のジャッキーが出来る最高レベルのアクションを演じてくれているのが嬉しい。確かに激しいアクションシーンでは、流石に後輩のアーリフに見せ場を譲るものの、要所ではちゃんとジャッキーも見事なアクションを見せてくれるので、その点は心配無用!

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ただ全盛期の作品の様に、ラストに派手で危険なスタントシーンが用意されて、最後には悪役を倒して制裁を下す!という展開にはならない本作。その点では、古くからのファンの方々には「こんなの納得いかない!」との意見が多いのも、仕方が無いことかも知れない。

確かに、最近の作品に顕著だった、もはや世界平和は拳による戦いでは実現しない!とするジャッキーのテーマ自体は少しもブレていないのだが、余りに大きな転換に「ジャッキー映画はこうじゃない」、そう思われる方の気持ちも大いに理解出来る。

果たして、今後も第一線で作品を発表し続けるための、今回のジャッキーの変化を受け入れるか?それとも昔のジャッキーの姿にこだわってこの変化を拒絶するか?この部分こそが、本作の賛否の分かれ目であるのは間違いないところだ。

例えるなら、今までのジャッキー作品のフォーマットを残しつつ、今後のジャッキーの更なる活躍に繋げるための転換を試みた作品として、本作はジャッキーにとっての『最後のジェダイ』に相当する作品だと言える。

今までは主に古くからの男性ファンに支えられてきた彼の人気だが、今回の大きな転換により家族層や小さなお子さんにもファンが増えるであろうことは確実!そう、やはりこの『カンフー・ヨガ』こそ、ジャッキー復活&リブートへのスタートとして、「最後のジェダイ」並みに大いに議論されるべき作品なのだ。

ここ最近のジャッキー映画にご不満だった方々にこそ、是非劇場に足を運ばれることをオススメします!

(文:滝口アキラ)


    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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