X-MEN版『マッドマックス』か?残酷さの果てに感動をもたらす『ローガン』

■「キネマニア共和国」

LOGAN/ローガン ポスタービジュアル

(C) 2017Twentieth Century Fox Film Corporation

『X-MEN』シリーズの人気キャラ、ローガンことウルヴァリンに焦点を当てたスピンオフ『ウルヴァリン』シリーズも、今回の『LOGAN/ローガン』でいよいよ完結。

しかし、まさかまさかのこういう結末とは……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.236》

というか、それよりも何よりも、今回の作品、従来のアメコミ原作映画ではおよそお目にかかれないほど残酷なテイストを隠さず、またそれゆえに感動をもたらす意欲作に仕上がっていたのでした!

絶滅寸前のミュータントたちの
最後の攻防!

『LOGAN/ローガン』は、『X-MEN』シリーズの外伝ともいえるウルヴァリン・シリーズとして『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09)『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)に続く3作目となります。

舞台となるのは2029年、ミュータントはもはや絶滅寸前といった状況に追い込まれています。

かつて“ウルヴァリン”の名で知られていたミュータントのローガンも長年の激闘がたたって不死身の治癒能力が衰え、荒野の片隅でひっそりと、仲間のキャリバンとともに老いさらばえたプロフェッサーXことチャールズの世話をしながら生きていました。

LOGAN/ローガン

(C) 2017Twentieth Century Fox Film Corporation

そんなあるとき、彼は謎の武装集団に追われる少女ローラを助けるはめになります。

彼女は、ローガンと同じアダマンチウムの爪を持つミュータントでした。

そして、ノースダコタ州の「エデン」という場所までローラを送り届けることになったローガンたちに、次から次へと危機が……。

本作の予告編や簡単なストーリーなどから、今回はX=MEN版『レオン』(94)のようなテイストのものを予想する映画ファンは多いかと思われますが、いざ観賞し始めてビックリ、このローラちゃん、もうおっかないくらいの凶暴さで、とにかく残酷に人を殺しまくる!

とかくレイティングにうるさく、特に子どもに対する残酷描写に慎重なハリウッドで、しかもアメコミ原作ものという幅広い客層をターゲットにできるものであるにも関わらず、これは一体どういうことなのか?

正直、私などは跳んだり跳ねたりすばやい身のこなしで人を殺しまくる彼女に、ジョージ秋山による残酷問題作漫画『アシュラ』(70~71)の主人公少年を重ね合わせてしまいました。また演じるダフネ・キーンの風貌からは、どこかしらスペイン・ホラー映画の怪作『ザ・チャイルド』(76)の中で大人たちを斬殺していく子どもたちを彷彿させるものすらあります。

残酷なのはローラだけではありません。今回はローガンたちのアクションもどこか殺伐としていてヴァイオレンス色がかなり強まっているように思えますが、実はそれゆえに彼らミュータントの呪われた運命の哀しさなどが色濃く浮き上がっていくとともに、その未来から目が離せなくなっていくのでした。

ローラの生い立ちなども実に残酷なものがありますが、そのあたりは実際に映画をご覧になっていただければ、より深く理解できるかと思います。

(C) 2017Twentieth Century Fox Film Corporation

『X-MEN』シリーズゆえに成し得た
優れた“人間”ドラマ

一方で本作はローガンとローラ、チャールズの旅を描いたロード・ムービーとしての面白さも大きなポイントとして見逃せないところです。

特にローガンとチャールズ、『X-MEN』第1作(00)から登場し続けた彼らの老いさらばえながらの絆の深さには、このシリーズをずっと見続けてきてよかったと涙すること必至。

ヒュー・ジャックマンとパトリック・スチュワート、ふたりの名優によるいぶし銀的な魅力にもほれぼれしてしまうものがあります。

監督のジェームズ・マンゴールドは『ウルヴァリン:SAMURAI』に続くシリーズ登板となりましたが、ここでは残酷描写をおそれず真正面から見据えていくことで、ミュータントたちの哀しみを見事に描出することに成功しています。

また、ローラがテレビで西部劇『シェーン』(53)を見ているシーンがありますが、一見勧善懲悪ものではあれ、その中から正義と悪の狭間をさまようアウトローの姿を冷徹に捉え得た名作は、今回のひとつの象徴としても屹立しているあたり、さすが『3時10分、決断のとき』(07)の監督ともいえるでしょう。

LOGAN/ローガン サブ1

(C) 2017Twentieth Century Fox Film Corporation

クライマックスでは、ローラ以外の子どもたちも多数登場し、さながら『マッドマックス/サンダードーム』(85)ミュータント版とでもいった様相を呈していきますが(そういえば本作のヴァイオレンス・テイスト自体も、どこかしらマッドマックス・シリーズと通底する者があります)、そういった純粋無垢な“子どもたちの王国”と、そこを襲う醜い大人たちの対比もまた、本作の衝撃のラストを越えての感動と未来への希望を見る者に与えてくれています。

正直、個人的に最近のアメコミ原作ヒーローものには食傷気味ではありましたが、まさかここで『X-MEN』シリーズだからこそ成し得た、優れた“人間”ドラマを見せられようとは夢にも思いませんでした。

そう、これは単なるアミューズメントもしくはデート・ムービーの域に留まらない、映画ならではの醍醐味をとくと味わわせてくれる快作であり、広く一見をお勧めします。

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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